宵の血に依る契約城:一日目夜

──そして時は移り。
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コロル @Conces_color

「わからないなら、知っていけばいい。  オレだって知らないことなんざ山ほどある。――一緒に知っていけばいい。わかった時の喜びだって、ひとしおだろ」 「応えるだとか、報いるだとか、んな難しいこたァいいんだよ。  ――依存? そんなの嬉しい以外に言葉があるか?」

2014-12-30 01:07:21
コロル @Conces_color

「――ずっとオレを、オレだけを見ててくれる、って。そういうことじゃねーのか?」 引き寄せた手を握り込む。腰に回した腕に力を込める。 「充分とは言わねぇよ、これからを望むんだから」 「でもさ、何も出来ないなんて言うなよ」 「オレは、フェヌスの言葉が、死ぬほど嬉しかったんだ」

2014-12-30 01:10:20
コロル @Conces_color

「――こっちを見て、フェヌス」 「オレに、アンタ(夕暮れ)を見せてくれ」

2014-12-30 01:10:59
コロル @Conces_color

――ともすれば、星屑色に口付けを落とすように。 月明かりの中、双眸が瞬く。 ――晴れ空が、覗く。 それは柔らかく弧を描いて、微笑んだ。

2014-12-30 01:13:09
フェヌス @conces_rs

手を引かれて——抵抗する気が無かったせいなのか、——体は、簡単に傾いだ。 耳元に声が。背に腕が。 「コロル、近——」 眼を見開く——間際に、掠めるように、鮮やかな朝焼けが。 ——名を、呼ばれて、息が詰まる。どうして声が出なくなってしまうのかわからない。

2014-12-30 18:35:47
フェヌス @conces_rs

晴れ空の声はすべて聴こえていた。——彼のその一言も漏らさず、聴こえていた。 ——握られたままの手、温かいだけではない。 「……——」 声の出ないまま——促す声に、彼の背を握った。眼を伏せて、息を吐く。 「……後悔、するぞ」 それだけを言って。夕暮れはそろそろと上向いて。

2014-12-30 18:36:10
フェヌス @conces_rs

——見上げた先。至近距離に吸血鬼(彼)の瞳。彼の目線。見上げて不意に——ひとつ、疑問が浮かんだ。 「……それ、」 手を伸ばす。彼の顔に、背を握っていた左手を伸ばす。 「度、入ってるのか」 指をつるに掛ける。掌が頬に触れる。夕暮れが晴れ空と重なる。 「無い方が良い」

2014-12-30 18:36:38
フェヌス @conces_rs

体の近さも——視線と吐息の近さも、意外ではあっても。 夕暮れはただそれも彼の、『攫う』という宣言のうちのひとつだと、受け取っていた。 「窓から見るだけじゃ、遠い。——私も、コロル(私の好きな空)を見たい」

2014-12-30 18:37:13
コロル @Conces_color

「後悔? ――するもんかよ」 にっと浮かぶ笑みは挑発的な、とても穏やかな面持ちからは考えられない強い笑みだ。窓枠から少女を攫っていくような、そんな体勢のまま。 「度は入ってな――っちょ、フェヌス!?」 コロルはそこでようやく、余裕を失くした。 直に見る夕暮れに、晴れ空を瞬かせて。

2014-12-30 19:14:05
コロル @Conces_color

「――っ、あー……」 片手は彼女の手を離さぬ為に、もう片手は彼女を逃がさぬ為に腰に。 だからコロルには外される眼鏡を押さえる術も、真っ赤になった顔を隠す術もなく。まるで噛み付くように顔を近付ければ、額を合わせて。 「ねえ、フェヌス。それ、相っ当の口説き文句だって、わかってる?」

2014-12-30 19:17:52
コロル @Conces_color

知らず漏れる吐息が熱い。鼓動が早鐘を打っている。 「梟も起きてるし!? 決まり事だから、ここでは絶っっっ対しないけど!」 弱々しく漏れる声。極低音の囁きは落ちるように。 「僕たちの、――僕の吸血衝動は、他と違う」 「うまく言えないんだけど、……そうだな、」

2014-12-30 19:20:31
コロル @Conces_color

「――食べてしまいたいくらい、かわいい」 落ちる囁きは、耳元を掠めるだろうか。 「そういう言葉が、近い。食欲とか、そういうのってあんまりないんだ、僕」 だから流血沙汰が起こったとて、他よりは割り合い、冷静でいられる。常のそれでは無いから。

2014-12-30 19:22:46
コロル @Conces_color

「――あー、もー……」 がしがしと頭を掻くかわりか、頭を軽く振って。 「だからね、首輪。付けて、僕に」 顔を上げ、逸らして。首元を晒す。 「オレを無暗に出さないように」 瞬く。朝焼けが見える。 「僕が君とずっといられるように」 瞬く。晴れ空が覗く。

2014-12-30 19:26:33
コロル @Conces_color

「――君の言葉で、僕を縛って。フェヌス」 夕暮れを見詰め直し、首を傾ける。距離などほぼほぼ無いに等しい。 「……オレに攫われたこと、」 額を合わせる。微笑む。朝焼けと、――瞬いて、晴れ空。 「後悔すんなよ、お嬢さん?」

2014-12-30 19:30:39
匿名企画『宵の血に依る契約城』 @Conces_Castle

——双つの月は、落ち行く月を静かに見送る。 ——時の移り変わりは、素早くも、緩やかに。 ——次に羽撃くまでは、後少し。

2014-12-30 20:15:13
フェヌス @conces_rs

「……くど……?」 夕暮れはただ、瞬いた。『口説き文句』という語彙は、夕暮れの中には無い。だからただ「後悔」という言葉に否定を重ねた彼には、安堵したように笑みを浮かべて。 指先で眼鏡を滑らせて、外してしまう。落ちないように、畳んで、勝手に胸元に仕舞ってしまって。

2014-12-30 21:35:49
フェヌス @conces_rs

「うん、——こっちの方が、絶対良い」 満足したように言う。額を合わせるその動きにも抵抗はせず、上向いた夕暮れの顔に、隔ての無くなった顔が覆い被さってくる。——さすがに、顔が熱くなって来たのが己でも分かった。 「……食べ、たい、くらい」 ——さすがに。熱くて。

2014-12-30 21:36:22
フェヌス @conces_rs

眼を逸らすにもこの距離では——少し上向くだけで唇が触れてしまいそうなこの距離では、出来ない。だから見上げたまま、握り合わせた手に更に力を込めて。 ——瞬いた鮮やかな色彩に目を取られた。見惚れて——もう一度、手を伸ばして、頬に触れて。 「朝焼けも、綺麗だから」 晴れ空。蒼も、緋も。

2014-12-30 21:36:36
フェヌス @conces_rs

「隠して——私が、抑えてしまえるように、我慢が出来るか、不安だけど」 ああ、でも、と思考のどこかが呟く。近い距離、『空』を見上げる。 「独り占めさせてくれる、って、事だろ。——だから絶対、後悔なんてしない」 赤い顔のまま、言い切る。

2014-12-30 21:36:54
コロル @Conces_color

「……抑えなくていい。全部を、見せてくれ」 オレはアンタの全部が知りたい。 「オレも、オレの全部を、アンタに知って欲しいよ」 頬を撫ぜる手に擽ったそうに笑って。 「いけね、夜明けが近いな。  フェヌス、眠らなくて平気か?」

2014-12-30 22:31:47
コロル @Conces_color

首を傾ける。腰の支えにしていた腕の力を緩める。 「あんまり寝れないかもしれねーけど、」 辺りを見回す。白いベンチを見つければ、顎でしゃくり。 「寝ないよかマシだろ?」 朝焼けのまま、それは笑う。 「オレにアンタの安息も、独り占めさせてくれ」

2014-12-30 22:34:34
コロル @Conces_color

こつりと額を合わせれば、微笑って。 「フェヌスに独り占めされるのが、無性に嬉しいよ」 瞬く。晴れ空は弧を描いて。 「朝焼け(オレ)も、晴れ空(僕)も、今、この時から、君だけの空(いろ)だ」 内心、思う。今、大梟が起きていて良かった、と心の、底から。

2014-12-30 22:37:21
コロル @Conces_color

でなければ、僕にも、オレにも、 この衝動(あい)を止められた自信は、無かった。 ミニハットの宝石が、強く煌めいた。 朝は、もうすぐそこまで、来ている。

2014-12-30 22:39:00
匿名企画『宵の血に依る契約城』 @Conces_Castle

——梟が飛び立つ。 ——両翼を広げ朝を迎える。 ——城の扉が開いてから、二回目の朝を迎える。 ——八人はまた、広間へと。

2014-12-30 23:59:51

 


 

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