【ザ・ヴァーティゴ・グレイト・エクスペリエンス】前編

◇気づいていなかったか?あなたはすでに年末年始ニンジャまつり空間の中にいるということに◇
2
前へ 1 ・・ 3 4 次へ
010100111 @the_v_njslyr

公爵の船は超自然の羽根を伸ばし、霧の海の世界からエーテルの中に飛翔した。公爵曰く、霧の海は次元と次元を繋ぐハブのような場所なのだという。半神が造った公爵の船は、それを自在に行き来できる。ギョームの軍勢にそれが出来るのは不穏だった。「寄ってほしい場所がある」「何?」「友人だよ」

2014-12-28 22:19:26
010100111 @the_v_njslyr

……「で?何処に居ンのさ」「なかなか……ふむ……新鮮で刺激的ではある。社会学的検知からはね」テーブル越し、イビルヤモトとウィルキンソンがザ・ヴァーティゴに懸念の視線を送る。ドンツクドンツクブブンブーン……ブンズズーブンズズーン、ペウン!悪趣味なボディミュージックとブラックライト。

2014-12-28 22:28:10
010100111 @the_v_njslyr

公爵の船が降り立ったのは、捻れたネオンサインが競い合って光る退廃的な小世界だった。この世界にはバーとカジノしか存在せず、凶悪な胴元が暴力と圧政をもって賭博経済を支配している。「いや。ここで間違いない筈だ」ザ・ヴァーティゴはスルメを噛んだ。「奴は用心棒をしている。ここの胴元の」

2014-12-28 22:31:34
010100111 @the_v_njslyr

船を降りたのは彼ら三人。ザ・ヴァーティゴは自信たっぷりで、黒服に取り次ぎを依頼した。二時間待たされた頃には、残る二人の視線は冷たく、ザ・ヴァーティゴの口数も減っていった。「……いや……間違いないはずだ。奴が俺を忘れるわけはない……」「心強い仲間だと聞いていたが」

2014-12-28 22:34:35
010100111 @the_v_njslyr

ブンブンムムンブンブブーン……「さあお待ちかね!」緑の巨大なサングラスをかけた司会者がステージを指差した。「今夜のハッピーアワーですよ!」まばらな拍手。ドンツクドンツクドンツク……DJが低音を強める。「ワタイら何しに来たんだよ」「ウーン……」

2014-12-28 22:39:42
010100111 @the_v_njslyr

ステージのカーテンが開き、現れたのは、カウボーイハットを被ってビキニの水着を着た金髪美女だ。ブンブンムムンブンブブーン、ビートに合わせてスカムなダンスを踊る。「いやあ……なんだろうな」ザ・ヴァーティゴは二人の同席者から目を逸らす。金髪美女はマイクを持って歌い出した。「健康〜」

2014-12-28 22:42:44
010100111 @the_v_njslyr

「無駄足だ」まずウィルキンソンが席を立った。そしてイビルヤモト。ザ・ヴァーティゴも観念して立とうとした。だが彼らは後ろから両肩を押さえられ、無理に座り直させられた。タフなバウンサーが彼らのテーブルを取り囲んでいた!「理性を保って〜」ステージ上では金髪美女が歌い続ける!

2014-12-28 22:48:19
010100111 @the_v_njslyr

「何?」ザ・ヴァーティゴは狼狽えた。「ウエスギは?」「テメェー」バウンサーの中から小太りの胴元が進み出る。「奴の仲間か!あの狐野郎の!」「エッ!話がわからな、」ザ・ヴァーティゴは立ち上がろうとした。バウンサーが無理に座らせた。「とにかく奴に関する事、何でも吐いてもらう」「エッ!」

2014-12-28 22:50:41
010100111 @the_v_njslyr

「なにさアンタ達……」イビルヤモトが立ち上がろうとした。バウンサーが無理に座らせた。「こういった場にも最低限の秩序というべきものが……」ウィルキンソンが立ち上がろうとした。バウンサーが無理に座らせた。「狐野郎はな!ウチの女どもを檻から逃がしてトンズラこきやがったんだ!大損だぜ!」

2014-12-28 22:53:39
010100111 @the_v_njslyr

「エッ!じゃあ、もう居ないのか?」ザ・ヴァーティゴは立ち上がろうとした。バウンサーが無理に座らせ「イヤーッ!」「グワーッ!」ザ・ヴァーティゴはバウンサーを投げ飛ばし、テーブに叩きつける!「ああもう!うるせえ奴らだな!ウエスギがいないならいないって、最初に言えよ!無駄足だろうが!」

2014-12-28 22:56:34
010100111 @the_v_njslyr

「なっ……こいつ!」胴元が鼻白んだ。精鋭バウンサーが進み出る。「生きて帰れると思うなよ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」イビルヤモトのキックがバウンサーを吹き飛ばす!「イヤーッ!」「グワーッ!」ザ・ヴァーティゴのパンチがバウンサーを吹き飛ばす!ウィルキンソンは閉口!

2014-12-28 22:58:55
010100111 @the_v_njslyr

「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」たちまちストリップバーは乱闘の場に!「睡眠をとって〜」ステージ上では金髪美女が歌唱を続け……「……誰も聴いてないじゃん!」マイクをステージに叩きつける!「グワーッ!」その足元に、イビルヤモトに殴られたバウンサーが倒れ込む!

2014-12-28 23:02:22
010100111 @the_v_njslyr

「イヤーッ!」「グワーッ!」金髪美女はバウンサーをマウントパンチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」マウントパンチ!「やめたほうがいいぜ!」制止しようとするDJをパンチ!「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」マウントパンチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」マウントパンチ!

2014-12-28 23:04:07
010100111 @the_v_njslyr

十分後!ストリップバーのあちこちに、打ち倒されたバウンサーが無惨に倒れ伏し、今まさに胴元を守る精鋭バウンサーがザ・ヴァーティゴの裏拳を喰らってジュークボックスを破壊しながら気絶だ!「アバーッ!」「わかった!畜生わかった!」胴元が後退った。

2014-12-28 23:08:25
010100111 @the_v_njslyr

胴元は震えながら言った。「もう許してやるからどこなりと行っ……」「イヤーッ!」「グワーッ!」金髪美女がパンチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」マウントパンチ!「イヤーッ!」「グワーッ!」マウントパンチ!「君、誰?」ザ・ヴァーティゴが問う。「ブロンディだよ!」胴元を更にマウントパンチ!

2014-12-28 23:11:33
010100111 @the_v_njslyr

「わたし、バンドやってるんだよね!でも、はぐれちゃって、仕事を探してたんだけどさ!」「グワーッ!」「わかった。それぐらいにしといたほうがいいぜ」「そうだね」ブロンディは気絶した胴元を解放した。「でも、初日だから給料も出てないよ」「でも?」……「話はだいたい、聞かせてもらったぜ」

2014-12-28 23:16:43
010100111 @the_v_njslyr

ザ・ヴァーティゴ達はバーカウンターを振り返った。この争いの中でも、一人タフにテキーラを呷っていた逞しい海の男だった。「要するに、仲間が要るんだな。退屈していた所よ」「お前はアンクル・ストマック!」ザ・ヴァーティゴは驚愕した。「なぜここに!」「銀河だろうが、海は海よ。酒場は港よ」

2014-12-28 23:20:13
010100111 @the_v_njslyr

「タフのおやじだ」イビルヤモトが顔をしかめた。アンクル・ストマックはテキーラを飲み干し、立ち上がった。「だが、俺をスカウトするには条件がある。そこのお嬢ちゃんも連れていくぜ」と、ブロンディを指差す。「行くあてを無くして困っているレディは四の五の言わず助けるのが、海の男よ」

2014-12-28 23:26:10
010100111 @the_v_njslyr

「スカウト……?」ザ・ヴァーティゴは気圧された。「スカウト……してないッていうか。いや、思いがけず会えたのは嬉しいといえば嬉しいのかもしれないが……」「決まりだな」アンクル・ストマックは率先して店外に出た。「さあ、行くとしようぜ。ザ・ヴァーティゴよ。迷うな。もっとタフな男になれ」

2014-12-28 23:35:37
010100111 @the_v_njslyr

こうして、ブロンディとアンクル・ストマックが旅の仲間に加わった。アンクル・ストマックの航海術は超自然の船においてもおそらく役に立つ。ブロンディはかわいい。しかし当初の目的であったキツネ・ウエスギの行方はわからなかった。ザ・ヴァーティゴは懸念したが、否応なしに運命の歯車は進む……。

2014-12-28 23:44:37
010100111 @the_v_njslyr

ガン・ドーの情報を解析した公爵の船が、反キウイフルーツがあると思しきポイントを目指して邁進していたまさにその時。暗黒魔城戦艦の艦橋に座するギョーム将軍は、一人の恐るべき戦士を迎え入れていたのである。「長旅ご苦労であったな」将軍は氷のように冷酷な眼差しを、眼前の戦士に向けた。

2014-12-28 23:49:57
010100111 @the_v_njslyr

「貴公の力を得た事で、我が軍はもはや盤石の力を手にしたと言ってよい」「力を得ただと?」戦士の目がギラリと輝いた。「貴様の玩具の兵隊どもに興味など無し。勘違いするな」「まあよい。それでもよいのだ」ギョーム将軍は玉座にしなだれかかった軍服女官の腰を抱き、鉱石ワインを揺らした。

2014-12-28 23:53:46
010100111 @the_v_njslyr

「戦えば勝てる相手ではある。だが、やはり手を焼く」ギョーム将軍は言った。「ザ・ヴァーティゴが調停者の側についたは実際厄介だ。しかし貴公が奴を仕留めるならば……ムクククク……」「仰る通りですわ」ギョーム将軍の傍らで妖しく微笑むのは、腹心参謀であるデジー・シュタッデルマイヤー。

2014-12-28 23:58:35
010100111 @the_v_njslyr

おお、なんということだろう!読者の皆さんのうち、何名かの方はご存知かもしれない。かの軍服女官の所属組織を!ではまさか、公爵が懸念していたギョーム将軍の版図拡大を支える正体不明の力の源とは、ナチス・ドイツのオカルト・テクノロジーに在るのだろうか?何たる悪夢じみた邪悪結社合併!

2014-12-29 00:01:48
010100111 @the_v_njslyr

そして、なんということか……私は衝撃に耐えながら、それでも皆さんにむけて記述せねばならない。ギョーム将軍を前にして少しも怯むことなき圧倒的アトモスフィアの持ち主……この地獄めいた戦士の名を!彼の名はザザ!両目を超自然の義眼に置き換えた恐怖の戦士!嗚呼!まさかこんな事が!

2014-12-29 00:03:50
前へ 1 ・・ 3 4 次へ