【ヒエキヤマ】9話 扶桑の悩み

夕立の悩みを聞いているうちに自分にもかえって来るもの感じる扶桑...。 こちらのまとめを修正した最終決定版がpixivに上がっています こちらからどうぞ→http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=4731690 続きを読む
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桔山 海 @as_keito

目の前に広がる一面の海、足元にはやわらかな砂。私と夕立は鎮守府の近くの砂浜に来ています。11月なので人はそんなに居ません。時間帯も朝なので居ても散歩をする年老いた人、走りこむ若い男の人、ただ海を眺めている人が稀にいるくらいです。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:05:49
桔山 海 @as_keito

そして私の後ろには付いてくる夕立、お話したいと言っていた割にあまり話して来ません。どうも緊張した雰囲気です。確かに私と夕立は頻繁に会話をするような間柄ではないけど、全くないというわけではないから話しづらいということは無さそうだけど...。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:10:59
桔山 海 @as_keito

もしかして話題が話しづらいことなのかしら?どちらにしても私から聞いてあげた方が良さそうね。 「そろそろ座りましょうか」 私が言うと夕立は頷き、砂浜に座り込みます。私は手ぬぐいを取り出し砂浜に広げその上に座ります。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:15:08
桔山 海 @as_keito

「夕立はここ来たことある?」 「あんまり無いっぽい。扶桑さんはここ好きなの?」 「ええ、そうね。...夕立はさっきから走っている彼を見てどう思う?」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:20:16
桔山 海 @as_keito

私はさっきから走りながら行ったり来たりしている若い男の人を指さします。 「うーん...がんばってるなって思う」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:25:26
桔山 海 @as_keito

「そうね、私もそう思うわ。でもね、こうも思うの、私たちが頑張っているから彼が安心して海辺を走れているんだって、そう思うと緊張感も感じるけどやる気も湧くと思わない?」 はっきり言って私らしくない言葉。まあ教えてもらった言葉だからそうなるわね。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:30:39
桔山 海 @as_keito

「すごく素敵な考えだと思う。時雨にも教えてあげてもいい?」 「ええ、そうしてあげて。本当はね、この場所も、さっきの考えも長門に教えてもらったの、だから長門にもお話してあげて、喜ぶと思うから」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:35:47
桔山 海 @as_keito

彼女らしい考え。長門は私と違って昔、国民に愛された艦だったからそういった考えを自然に持つようになったのだと私は思います。 特定の誰かより「目に映るたくさんの人を守りたい」それが彼女の矜持。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:40:57
桔山 海 @as_keito

それを有言実行できる実力も意思も持ち合わせている。私はそんな彼女を純粋に尊敬しています。 長門は「たくさん」を、私は「山城」を、夕立はたぶん時雨のことを守りたいのかしら?さっきこの場所を時雨に話したいと真っ先に名前が出てきたし...。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:45:11
桔山 海 @as_keito

「ねえ、夕立は誰か守りたい人、いる?」 夕立は俯きながら言おうか、言うまいか少しの葛藤の末、私の目をじっと見て口を開きました。 「夕立は時雨を守りたい」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:50:19
桔山 海 @as_keito

静かに、そして強い意志を感じる言い方。ずっと一緒の部屋だったものね。でも時雨は...。 「扶桑さん...そんな顔しないで...夕立もわかるっぽい。時雨は山城さんのことが好きなんだと思う」 夕立は少し悲しげ...。私の反応で予想を決定づけてしまったかしら。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 20:55:34
桔山 海 @as_keito

私と山城は時雨の思い自体には気付いていました。山城は、妹のように大事に思っている時雨に優しく接してしまい、逆に辛い思いをさせているんじゃないかという不安を私に漏らすことが時々ありました。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:00:52
桔山 海 @as_keito

でも、避けられることのほうが辛いはず、という結論に落ち着いてずるずると今まで来てしまっています。 「山城は時雨を恋人としては受け入れないと私は思うわ。時雨が山城に思いを伝えた時、もしかしたら気を落としてしまうかもしれない。その時はあなたが時雨を支えてあげて」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:05:20
桔山 海 @as_keito

「はあ...、時雨はどうして結ばれる見込みのない相手に恋をしてしまったのかしら?あたしも人のこと言えないけど...」 夕立は自分が結ばれる見込みのない相手に恋をしていると思っているのかしら? #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:10:32
桔山 海 @as_keito

でも明確に否定できない...。私は山城のことはよくわかっても時雨のことまでは確信を持って言うことはできない。 「私にはキッパリ諦める時雨と、片思いでも山城を思い続ける時雨の二人が想像できるわ。どちらになるかあなた次第だと私は思うのだけど、どうかしら?」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:15:46
桔山 海 @as_keito

夕立は首を傾げながら口を開きます。 「夕立もそう思ってるんだけど少し、思い続ける時雨の方が想像しやすいっぽい。だって山城さんがこの鎮守府に来たときなんてすごいそわそわしちゃって待ってたんだなっていうのがわかったの。来てからもずっと山城さんにくっついているし」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:20:54
桔山 海 @as_keito

時雨がそんなに落ち着かない様子でいたなんて気が付かなかった。やっぱり私も傍目から見るとそんな様子だったのかしら。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:25:03
桔山 海 @as_keito

山城は建造での着任でその時の私はどんな言葉で迎えようかいろいろと考えていたのを覚えています。しかし、山城は私を見た途端、飛ばされそうな勢いで私に抱き付いて来て少し驚きました。 でも、嬉しかった。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:30:14
桔山 海 @as_keito

私はごめんなさいと言おうと思っていました。昔、私が至らなかったせいで山城にまで欠陥の汚名を着せてしまったことは何よりも悔いていました。あなたのせいで私まで...などと辛辣なことを言われることすら覚悟していました。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:35:39
桔山 海 @as_keito

でも、山城に抱きしめられたその瞬間に私は救われました。 山城のことはずっと待っていました。でも同時にとてつもなく会うのが怖かった。だから、無条件に私を受け入れてくれたその時にあなたを愛し、支え、守ることを心に決めたのです。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:40:46
桔山 海 @as_keito

私が言おうと考えていた謝罪の言葉は奥に身を潜め、代わりに感謝の気持ちが体を満たすのを感じました。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:45:56
桔山 海 @as_keito

私は抱擁しながら山城の名前をずっと呼び、それに山城は姉さまと答えてくれました。 あなたには昔、迷惑をかけてしまった。それでも私を姉として認めてくれる。そんなあなたに私は未だに姉らしいことができていないような気がします。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:50:07
桔山 海 @as_keito

むしろ、山城の方が私に尽くしてくれる...。感謝はしています。でも私も山城に何かをしてあげたい。はっきり言って私の悩みなんて贅沢な悩み...。夕立はもっと難しいことで悩んでいるはず...。そして時雨も。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 21:55:18
桔山 海 @as_keito

私の経験上、悩みを大きくするは自分の憶測。山城が来るまでの私も、今時雨のことで悩んでいる夕立も自分で自分を悩ませているのだと思います。 「勇気がいることだけど、いつか時雨に直接話さないと結論はでない。このことを忘れないでね夕立」 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 22:00:35
桔山 海 @as_keito

「...時雨と話したらまた扶桑さんともお話したいかも」 私は夕立の頭を撫でながら頷きます。あとは夕立次第...。私ができるのはここまで。今日夕立と話して私も少し思うことがありました。 私の悩みも誰かに話すと何か見えてくるのではないか、と。 #9話_扶桑の悩み

2014-12-30 22:06:00