#リプきた単語で三題噺　「赤ワイン」「カレンダー」「羽毛布団」

ネッシー @0ZaALZilA

「赤ワイン」「カレンダー」「羽毛布団」投下しまっす #リプきた単語で三題噺

ネッシー @0ZaALZilA

ワインの寿命――開封後は保存方法次第。 羽毛布団の寿命――10年から15年。 日めくりカレンダーの寿命――1年。 ☆ 俺はカレンダー。今じゃ珍しくなった、日めくり式のカレンダーだ。 365枚分あって、一日ごとにちぎっていく、環境に悪いカレンダー。

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でも、俺の主人がちぎった紙をメモとして使ってるし、環境に悪いかどうかは使う人次第なのだが。 早速だが、俺の寿命はもうすぐだ。 今日の日付は12月21日。そう、あと10日の命。 「そろそろだな」 長年同じ部屋で顔を見合わせていた羽毛布団だ。 彼とも、お別れの時が近づいてきた。

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「早いもんだな。人間は10月31日…ハロウィンだったか？それが終わればクリスマスクリスマス…。クリスマスって12月の25日だろ！？一ヶ月以上も先じゃないか！と思ってたが」 「直ぐだったろ？」 「直ぐだったな」 本当に、早い。時の流れは、余韻すら感じさせないまま過ぎる。

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「実はそろそろ俺も、ここを去るんだ」 「ホントか、羽毛布団！？」 「貰い手がいるってのは、嬉しいもんだな。お前もそうだったんだろう？」 「…まあな」 確かに嬉しかった。数あるカレンダーの中から、俺を選んで買ってくれたのだから。でも、そんな気持ちも、今や遠い過去。

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10日もすれば消えてなくなってしまうのに。羽毛布団も、いつかは捨てられてしまうのに。 ☆ 羽毛布団が去って、はや3日。クリスマスイブのはずなのだが、どうやらクリスマスと同じくらい盛り上がる日らしい。その証拠に、主人が珍しい物を買ってきた。 「赤ワイン…直に目にするのは初めてだ」

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ボジョレー何とかというワインは、50年に一度の出来らしい。一度飲んでみたいもんだ。俺カレンダーだけど。 「…はぁ～あ」 その赤ワインが、さっきから落ち込み気味だ。 「どうした赤ワイン」 「どうしたもこうしたもないっすよカレンダーさん。俺、ボジョレー・ヌヴォーよ？

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今年は50年に一度の出来と言わしめた、あのボジョレー・ヌヴォーよ？」 「き、君があの…ボジョレー、何とかなのか！？」 「ボジョレー・ヌヴォーね」 覚えづらい名前だなあ。 「買ってくれたのはありがたいんですけどね。栓開けてちょっと飲んで放置って、どういうことですか！」

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「そんなに嫌なことなのか？」 「開けたらすぐ飲むのは常識でしょうが！それをあの人は味見とかぬかして…。いいのか！？50年に一度の風味が！どんどん失われてるんだぞ今！」 「そ、そうなのか」 ボジョ…なんだっけ。もう赤ワインでいいや。赤ワインの必死さはよく分からない。

ネッシー @0ZaALZilA

俺は、開けようが開けまいが価値が失われていくのだから。 捲らなくても、年が過ぎ去れば価値がなくなる。そんな奴なのだ。 結局、赤ワインは主人に抱えられて、それきり目にすることはなくなった。 夜が更け、日が昇り。 ミシン目に沿って、俺の一部が切り離される時が来た――のだが。

ネッシー @0ZaALZilA

朝も昼も夜も。 次の日も、また次の日も。 俺が捲られることはなかった。 何だかわからないが、俺が捨てられるのはまだまだ先なのか？ いや、数日またいで日付を捲ることは何度かあったし、今回もそうだろう。 ☆

ネッシー @0ZaALZilA

『――次のニュースです。昨日発生した○○県○○市でのひき逃げ事件。県警は、布団職人の○○容疑者56歳を、道交法違反の容疑で逮捕しました。容疑者は12月24日午後10時30分頃、自宅近くの交差点で横断歩道を歩いていた男女を乗用車ではね、男性に右足骨折の重傷を負わせて逃げた疑いです。

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調べに対し容疑者は「ワインを飲んでいながら、急用のため運転してしまった」と供述、容疑を認めています。県警は忘年会などで飲酒の機会が増える年末に向け、飲酒検問などを強化する方針です』 ☆

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ワインの寿命――開封後は保存方法次第。 羽毛布団の寿命――10年から15年。 日めくりカレンダーの寿命――1年。 人間の寿命――日本では83.1歳（2012年）。

ネッシー @0ZaALZilA

ただし、全ての人がその寿命を全うできるとは限らない。そして、味の落ちたワインや、埃をかぶった羽毛布団、日付の進まないカレンダーも、どこかに。

ネッシー @0ZaALZilA

おわりぃ。