#SFっぽい怪談　まとめ　第四夜

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

スケールというのは共通認識。長さを量子化し、広さをを重さを時までも量子化し、決めた区切りを自ら祝う。人の尺度で。　#SFっぽい怪談　「だからきっと僕らはＢＩＴの中にいる」光線が袴の少年を描き出す。少年はにこりと笑む。「此度もよろしく」『神主』が見守るディスプレイルームの一番奥で。

ﾄｵﾉｷｮｳｼﾞ @kyozy_tohno

好都合に風が吹き、投じた百円玉が、少々光速を越えた。詣でた人々の念が集い、四次元宇宙へ繋がる扉と化した賽銭箱の、ろくに光も届かぬ奥底で、しれっと百円玉は宇宙ひもをぶち斬った。奇しくもそれが別の宇宙で桶屋を儲けさせる事になるのだが、念とはいやはや恐ろしい物である。 #SFっぽい怪談

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

年の瀬の声が聞こえ始める頃になると景気が途端に悪くなる。円は下がり、旅行会社は悲鳴を上げる。年が明ければ回復する。ＧＷの頃は円高景気でうはうはだ。ここ数年ずっとそう。　#SFっぽい怪談　「今年も多いね」「去年も多かったよ」「一昨年も」「なんで」「円安だからね」神様はきっと勉強家。

いぐあな・創作アカ @sou_igu

男の身体の下の雪が赤く染まっていく「やった…」コレで母が暴行されることも、それをネタに強請られ続けることも無い。俺はタイムワープの帰還スイッチを踏み潰した #SFっぽい怪談 「意外に時間掛かるんだな」父違いの望まれない兄を慕ってくれた妹「幸せになれよ」薄れていく手を見て俺は笑った

いぐあな・創作アカ @sou_igu

クローンで密かに妻を蘇らせた博士の行動は深き愛故として賞賛された #SFっぽい怪談 「残念だったわね。クローンの私に全財産を自分の物にする手続きをさせようとしたのに」アレは姪の物。貴方は遺留分で我慢しなさい。蘇った妻が笑う「新しい身体（うつわ）のお礼に少しだけ増やしてあげるから」

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

神社で誓うのは決意。人柱を捧げるのは覚悟。言霊は発したぶんだけ持つエネルギー。叶えるのにもコストが掛かる。言い換えれば、対価。代替品はコストが安い。誰でも願えるプロトコル。架空世界であなたは本当のあなたになれる。　#SFっぽい怪談　現実のあなた？　さて。どれだけコストを払ったの？

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

花は日照時間と温度で咲く。蕾を確認した後適切な温度管理で、開花日を調節できる。店頭の鉢植えの花が咲く寸前なのはそういうわけだ。　#SFっぽい怪談　ただ一種、ナツツバキだけは調節できない。決まって四月八日に花開く。地球上も宇宙も須弥山の頂でも。宇宙歴を花暦というのはそういうわけさ。

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

炎はプラズマ。電離した原子が酸化し熱と光を解放すること。解放された熱の一部は次なる燃焼の一部となり、原子の分離と再構成は永続的に続いていく。燃焼物がなくなるまで。　#SFっぽい怪談　炎は還元。炎は浄化。心に誓った想いだって、気化して解けて大気に消える。残るは抜けて崩れた灰ばかり。

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

遠く鐘の音が届く。数時間で巡る『一日』を数回束ねて、『夕方』と決めた地球時間。無指向のオープンチャネルで響いてくる。　#SFっぽい怪談　小惑星の突端にかつて寺があったという。僧が居て檀家があった。入植当時の昔話。「鐘だけ生きてる」うんでもさ。あそこ、空気もアンテナもなかったよね？

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

生体脳を参考にした機能配置。有機回路はヒトに近い十進演算を実現し。悪夢だと助手が呟くのは恨み言。　#SFっぽい怪談　「神がお許しになったのよ」表情の乏しい女が滑らかとは言い難い動作で口の端を上げる。生まれ変わりか、延命か。脳内回路のモデルとなったドＳ才女の本体は今は冷たい土の下。

いぐあな・創作アカ @sou_igu

隕石の断面にびっしり書かれた文字が見つかった！宇宙人のメッセージか？科学者はチームを組み、解読に勤しんだ #SFっぽい怪談 『ミナイデ…ヨマナイデヨ…』隕石の置かれたラボでは、夜な夜な顔を真っ赤にした半透明のリトルグレイが、消そうとするかのように刻まれた文を撫で回しているという

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

気分は成分。血中の各種ホルモンバランスは気分で変わるか、気分が変えるか。だからね。この気分を分けてあげる。その分私は軽くなる。あの人を食べてしまいたいこの気持ちは。信じるかどうか…輸血される人には関係ないわね。　#SFっぽい怪談　病院で食人鬼が発生した？　都市伝説よ、そんなもの。

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

白い靄のファントム。多鉱物結晶のフェザー。宝石の価値を下げるそれらだけれど、唯一無二の美しさとは思いませんか？　#SFっぽい怪談　材料は有機物。適量を高温高圧環境下、数千年ほど封じましょう。記憶の濃度が高いほど、絶望の度合いが深いほど、見事なインクルージョンダイヤとなるでしょう。

いぐあな・創作アカ @sou_igu

コロニーの空に彩雲がなびく「気象センターも粋なことするじゃないか」空を見上げて歓声を上げる人々を見ていた俺の背に「あの…」声が掛かった #SFっぽい怪談 振り返ると黒い髪を高く結い上げ、桃色の羽衣を纏った少女がふわふわと宙に浮いている「彩雲に呼ばれたのですけど…ここどこですか？」

ﾄｵﾉｷｮｳｼﾞ @kyozy_tohno

今日未明、林業を営む六十代男性が竹を鉈で裁断した際、中に潜んでいた女の子と宇宙ひもを切断してしまうという事件が発生しました。調べに対し男性は「妻がヒッグス鼠の皮衣を欲しがり、仕事を増やして疲労困憊だった」と供述。少女殺害や時空断裂は故意では無いと主張しています。 #SFっぽい怪談

ﾄｵﾉｷｮｳｼﾞ @kyozy_tohno

「旧校舎のトイレに現れる女の子にな」 「女の子」 「『赤いちゃんちゃんこ着せましょか』と聞かれて、はいと答えると」 「答えると」 「可視光が波長を乱して赤方偏移を起こす程の超重力場が発生して」 「赤方偏移」 「死ぬらしいぜ」 「死ぬ」 #SFっぽい怪談

ヤマケン @yamaken_image

子供の影を追って、廃墟となった無人工場に迷い込んでしまった。 「工場長、お待ちしておりました」 声に振り返ると、子供の影が立っていた。肉と金属の、まだらの姿が。 「量産、第一号でございます。品質はいかがでしょう」 生身そのままの口が声を発し、泡と血が滴り落ちる。 #SFっぽい怪談

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

人外遺伝子を持つ植物学者は、疫病に冒され生き延びた小麦数株を、丁寧に育て増やして行った。小麦はやがて食糧不足に喘ぐ地域へ輸出される。同時に食肉需要は減少し、酪農家の廃業が相次いだ。　#SFっぽい怪談　遺伝子改変はヒトの特権ではないし、食事矯正はもっと簡単。植物学者はブヒヒと笑う。

稲野巧実 @opentweetbox

世界はどんどん小さくなる。ほら、貴方の手に乗った変哲の無い数珠玉、中身は空洞だけれど中に世界が１つ入っているのです。生命を殺すも、実を埋めて芽吹かせるも貴方次第。でも、埋めたら最初の生命は死んでしまうのですかね？声は無邪気に笑い、首に掛かる数珠が音を立てて揺れた #SFっぽい怪談

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

「飴を下さい」出された古銭を骨董屋へ。店主が細い目を見開いて、今度は近所の大学に。発光分光、蛍光Ｘ線、成分、質量、解析手法エトセトラ。貴重な品とお墨をもらって、飴と引き替え残り五銭。捌き儲けてふと気付く。｢線香下さい。粉ミルクも｣さてはて独身で養子はとれたっけ？　#SFっぽい怪談

ﾄｵﾉｷｮｳｼﾞ @kyozy_tohno

「ディラックの海にも海坊主がいるらしいぜ」 「へえ」 「ちゃんとした式を渡すと負のエネルギーで一杯にされるそうだ」 「で、どうすれば消えてくれるんだ」 「穴の空いた式を渡すんだ」 「穴の空いた式」 「途端に見えなくなる」 「それが空孔理論」 「そうじゃねえよ」 #SFっぽい怪談

いぐあな・創作アカ @sou_igu

寝袋と毛布を手に山に登る。空はすっかり紺色に変わり星がチカチカと瞬いていた #SFっぽい怪談 父はエンジントラブルで彗星と衝突して死んだ。船の残骸は彗星のチリに混じったときく。そのチリの軌道が今夜地球と交錯する。計算が正しいならもうすぐ。夜空に流星が流れる。父がやっと帰ってきた

いぐあな・創作アカ @sou_igu

時間旅行にはチリ一つ、水一滴、過去に残さないのが鉄則。それが人類が現れる前の時代なら尚更だ。だが、ある愛猫家が家族だからと猫を持ち込み古第三紀の森で行方不明にしてしまった #SFっぽい怪談 「それで、どうなりました？」「どうなりましたって、こうなったニャー」「そういうことニャ」

森村直也＜出歩けない隠居＞ @hpjhal

気付くとお化けビルと呼ばれていた。真相究明を命じられて泊まり込むこと僅か三日。夜毎に動き始めるのはサーバと簡易な投射機で。明かしてみれば種は非常にシンプルだった。　#SFっぽい怪談　「空き巣対策」「画像やってた会社だったな」「電源ぐらい確認しろ」「電源パネル切れてるよ？」…あれ？

いぐあな・創作アカ @sou_igu

スマホ付喪神の画面に、衛星付喪神から、俺を死に追いやった奴の位置情報が映る。俺は画面をタップしてアプリ付喪神で『タタリマニュアル』をダウンロードした #SFっぽい怪談 『先ずは周囲の人々からか…』ニンマリと笑う。生前よく通ったスタバの席から立ち上がると俺は夜の街に繰り出した