ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム #3
「前へ」「ああ」降りながら、シルバーキーは続ける。「いや……いちいち驚いておっては、ギルドのイクサはつとまらぬ!当然だ。だが、わかっておっても、私はなお、驚嘆の気持ちを禁じ得ぬよ。そもそも、こういう魔の領域には心底から慣れてはならぬ。たとえ、どれだけ長く留め置かれたとしても」20
2015-01-12 23:54:39ディミヌエンドが答えるまで長くかかった。無視を決め込まれたかとシルバーキーが考え始めた頃、彼女は言った。「確かなもの。それはギルド、ダークニンジャ=サン、そして、イクサでしょう」「それが危うい」シルバーキーは言った。「あ、いや、私は全く本調子でない。故に戯言も口にしてしまう」21
2015-01-13 00:04:19「そのようですね」ディミヌエンドは呟いた。「貴方は御自身の疑いを晴らすためにすすんで参加されたという事、覚えておいでですね?」「左様」「あまりそういう話はなさらぬほうがよいですよ」「親切にどうも」シルバーキーは囁いた。「ア……つまり、私が間者ではないと、信じてくれるのだな?」22
2015-01-13 00:10:53「間者ならば、もう少ししっかりしていると思いますね」「正直だな」シルバーキーは苦笑した。「いや、実際感謝する……」「何故あなたがそのようになったのか、考えています。エンブレイス=サン」「負傷だよ」シルバーキーは言った。「じきに調子を取り戻し、ギルドに貢献する」全てが、嘘だ。23
2015-01-13 00:17:29階段を降り切り、朽ちたカンノン扉をくぐると、そこは荒廃したタタミ広間だった。天井は高く、黒い墨で、牙を生やしたダルマのショドーが描かれている。広間中央には水の枯れたセントー。「フゥーム」シルバーキーは顎を擦った。先行のスパルトイとミラーシェードの姿は無い。「置いて行かれたか」24
2015-01-13 00:25:37ディミヌエンドは答えず、腰と背に帯びた短剣に手をかけ、カラテ警戒した。シルバーキーも同様にカラテを構えた。スターン!呼応するかのように、四方のフスマが一斉に開け放たれた。四方から現れ、二人を取り囲んだのは、ナムサン……紛れも無し!メイルシュトロムのニンジャ軍団である!25
2015-01-13 00:30:22「ドーモ。ディストーショナーです」進み出てオジギをしたのは、ひときわ尊大なアトモスフィアを放つニンジャだった。「のこのこ物見遊山に参ったか?ムーホン者どもめ。好奇心の代償に皮を剥いでくれような」他のニンジャ達も一斉にオジギをした。名乗りはない。シルバーキーは眉根を寄せる。 26
2015-01-13 00:36:38多人数のイクサにおいては、必ずしも全員がアイサツをせねばならないという作法は無い。代表の者ないし数名がアイサツを行うことで、余の者に関しては免責される。古事記にも確かに書かれたルールだ。(だが、それとこれは、どうも事情が違うよな)シルバーキーは見渡した。27
2015-01-13 00:41:41「ドーモ。エンブレイスです」「ディミヌエンドです」「既にこの区域は我らがメイルシュトロム=サンの領地よ!何故ならオロバスとかいう弱体者を筆頭に、貴様らの先遣隊はカラテの餌食……ンンー?そこの女!」ディストーショナーがディミヌエンドを見た。「逃げてまた戻ったか?恥知らずめ」28
2015-01-13 00:46:46ぎり、と奥歯を噛む音を、シルバーキーは聴いた。ディミヌエンドは短剣と円月刀を同時に抜き放つ。二刀流だ。「そうだ。恥を雪ぎに戻った!」「ムフフ……ならば今度こそ念入りにいたぶり尽くし、寸刻みにして本陣へ送り返してやる。重箱に詰めてな!」「出来ない相談だ!」シルバーキーが言った。29
2015-01-13 00:51:55手勢がジリジリと包囲を狭める。シルバーキーは拳を握り、開いた。啖呵を切っては見たものの、実際、この身体を得て初めてのイクサとなる。エンブレイスのカラテはどこまで助けになるだろう?そしてこのニンジャ達……メンポと頭巾の隙間から除く不気味な瞳。彼は過去のイクサを想起する。 30
2015-01-13 00:54:50そのもの同じではないにせよ、キョート城天守閣で相手をしたあの顔無きニンジャ達に酷似したアトモスフィアを彼らは持っていた。あの場で経験した出来事と、この者達の間には、何らかの一致がある。恐らくそれは、シルバーキーのこの旅にとって僥倖なのだ。彼のニンジャ第六感はそう告げていた。31
2015-01-13 00:58:44「かかれ!」ディストーショナーの命令一下、ニンジャ達は一斉に襲いかかった!「「「イヤーッ!」」」ディミヌエンドが斜めに飛び、刃が翻った。「イヤーッ!」「グワーッ!」「アバーッ!」二刀それぞれ敵ニンジャの首を裂く!ナムアミダブツ!「イヤーッ!」別の一人がシルバーキーをめがける!32
2015-01-13 01:03:05「イヤーッ!」「イヤーッ!」繰り出されたヤリめいたサイドキックを、シルバーキーはクロス腕で受けた。「イヤーッ!」後ずさった彼のもとへ他のニンジャ達が殺到する!「イヤーッ!」シルバーキーは殴りつける。「グワーッ!」必死だ!「イヤーッ!」「グワーッ!」殴られるシルバーキー!33
2015-01-13 01:04:54「イヤーッ!」「グワーッ!」シルバーキーを殴ったニンジャの首が飛んだ!ディミヌエンドだ。「イヤーッ!」さらに後ろ回し蹴りでニンジャ達を吹き飛ばし、二刀をクルクルと回して威嚇する!「すまねえ……すまん」シルバーキーは呻いた。「じきにもう少し働く事ができようが……」34
2015-01-13 01:08:58ザリザリザリ……奇怪なノイズを放ちながら、ディミヌエンドの眼前にディストーショナーが出現した。ハヤイ!一瞬前には包囲網の後尾で傍観していた筈。いかなるジツか?「イヤーッ!」「ンアーッ!」ディストーショナーは強烈なチョップをディミヌエンドに叩きこむ。防御が間に合わぬ! 35
2015-01-13 01:12:05膝をついてこらえるディミヌエンドの顔面を、ディストーショナーの蹴りが襲う。蹴りの軌跡にはささくれだったような独特の残像が残る!ディミヌエンドは咄嗟に円月刀でこれを受けようとした。蹴りが円月刀を捉えると、フシギ!刀身にささくれが移り、一瞬後にはボロボロに劣化崩壊させてしまった!36
2015-01-13 01:14:50「ンアーッ!」蹴りを受けたディミヌエンドが吹き飛ぶ!それを受け止めるニンジャの一人!羽交い締めだ!「皮を剥ぐというのは比喩ではない。実際やるのだ」ディストーショナーが片手を上げる。その手の指紋部分がザリザリとささくれ、奇怪に渦巻いている。「ヒズミ・ジツ!化粧をしてやる」37
2015-01-13 01:18:08「ヤメローッ!」シルバーキーは複数のニンジャによってうつ伏せに押さえつけられ、目を血走らせて、惨劇を阻止しようと思考を巡らせる。(こいつら……こいつらのニューロンを、クソッ)ユメミル・ジツだ。(いけるか?)ジツを用いれば、彼の立場は後々悪化するやもしれぬ。だが他に手は無し!38
2015-01-13 01:22:53「イヤーッ!」彼の意識は白く吹き飛んだ。01001001……残滓……ニューロンに残るエンブレイスの……010100100001……水晶のショウジ戸0100101エンブレイスは手を当て、驚嘆に01000010111手の平ほどのサイズの立方体は台座の上010001「グワーッ!?」39
2015-01-13 01:26:19シルバーキーは息を呑んだ。ディストーショナーの身体がのけぞった。違う。それはシルバーキーのジツよりも早かった。ディストーショナーの背中にぴったりと身を添わせた存在。バチバチと電気ノイズが閃き、暗殺ニンジャのステルスが解けた。刃はディストーショナーの心臓を後ろから貫いていた。40
2015-01-13 01:28:45「アバッ!?アバーッ!?」ディストーショナーは痙攣し身悶えする。KRAAAASH!その瞬間、天井の牙ダルマショドーが張り裂け、辮髪のニンジャが敵らしきニンジャと共に落下してきた。「イイイヤアーッ!」彼は手にしたヘビ・ナギナタでそのニンジャをタタミに垂直に突き刺し、着地した。41
2015-01-13 01:32:45「サヨナラ!」ディストーショナーが爆発四散!「サヨナラ!」タタミに突き刺さったニンジャが爆発四散!「イヤーッ!」ディミヌエンドは羽交い絞めニンジャを一瞬の隙を着いて投げ飛ばし、頭部を踏み抜く!「アバーッ!サヨナラ!」「イヤーッ!」襲いかかる包囲ニンジャに応戦! 42
2015-01-13 01:35:16「イヤーッ!」「アバーッ!?」辮髪のニンジャ、即ちスパルトイが邪悪なアフリカ投げナイフめいたスリケンを二枚投擲すると、それらは狙い過たずシルバーキーを押さえつけたニンジャ達の頭部をメロンめいて断ち割った。「「サヨナラ!」」シルバーキーは頭を振って立ち上がる。「どうなって……」43
2015-01-13 01:37:36「イヤーッ!」「グワーッ!」スパルトイはクリスナイフで手近のニンジャを切り裂く!「ディム!どうだァ?こうやってテメェらを餌に、一網打尽ッてなァー!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」おお、そしてステルスのニンジャ、ミラーシェードの鬼神めいたカラテよ!44
2015-01-13 01:39:45