イスラーム研究家 @masanorinaitoさんが見たフランステロ事件

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masanorinaito @masanorinaito

どういう仕事をしていようと、こういう時に論ずべきは、これ以上、人の命が奪われないために何ができるかを考えることではないでしょうか。

2015-01-12 04:20:51
masanorinaito @masanorinaito

2005年に、移民が集中するパリなど大都市の郊外で若者達による暴動が連鎖的に起きた。クリシー・スー・ボアという町で、警察が移民の少年達を追い、変電所に逃げ込んだ少年2人が感電して死んだ。それがきっかけ。当時内相だったサルコジは郊外の移民少年達をゴロツキ呼ばわりし、火に油を注いだ

2015-01-12 12:16:05
masanorinaito @masanorinaito

その時、パリ市民が「私もbanlieu=郊外の人間」などと連帯を示すことはなかった。その頃、パリに行って、いろいろな人に話を聞いたが「あれはバンリューの問題でパリは安全。あなた達外国人は騒ぎすぎ」と言う人がほとんどだった。

2015-01-12 12:21:18
masanorinaito @masanorinaito

識者たちも、バンリュー(郊外)の暴動は、貧困の問題と主張した。移民の問題だと指摘する人は居たが、彼らがアラブであるがゆえに、アルジェリア系であるがゆえに、或はイスラム教徒であるがゆえに差別されることなどあり得ないと胸を張っていた。

2015-01-12 12:25:34
masanorinaito @masanorinaito

彼らを理解しようという姿勢がなかったと言ってもいい。彼らの中から、やりきれない思いを家の宗教だったイスラムに求める人達が出てくるのは確実だった。イスラムには癒しがあった。そんなはずはない、バンリューの問題は宗教問題などではない、切り捨てたことが今回のテロの背景にある。

2015-01-12 12:30:39
masanorinaito @masanorinaito

バンリューには、それこそ多様な系統のイスラム組織があり、生活に戦い疲れた、或は警察との衝突に疲れた若い男女が集まるようになった。パリの人々が、あそこは暴力の巣窟、嫌な地区、移民だらけでしょ、と話しているあいだに…

2015-01-12 12:34:33
masanorinaito @masanorinaito

テロを予測したなどと言うつもり全くはない。だが、郊外での暴動が起きた当時、いつか若者達がイスラムに回帰し、その中から欧米諸国と暴力で戦うことがジハードだと思い込む人達が出てしまうことは何度も何度も指摘したが無視されてしまった。

2015-01-12 12:54:42
masanorinaito @masanorinaito

以下、ごく大雑把な説明なので、目くじら立てずに見てください。ヨーロッパ各国のイスラム教徒移民の処遇

2015-01-12 13:10:59
masanorinaito @masanorinaito

ドイツ→居てもいいけど、居場所はない。ドイツはキリスト教国だからイスラムを表に出すと居場所がなくなる。それに、ようやくドイツ生まれの移民に市民権を与えるようになったけど、元々、誰がドイツ人かは血統主義による。

2015-01-12 13:15:19
masanorinaito @masanorinaito

イギリス→移民は出自の文化を維持しながらイギリス社会に統合されればいい。移民地区にはベンガル語やウルドゥー語の表記もあり。だが結果として移民コミュニティは孤立。宗教を表に出してもかまわないし、宗教による差別は原則禁止。

2015-01-12 13:17:43
masanorinaito @masanorinaito

フランス→共和国の憲法原則に従い、公的領域で宗教を出すのは禁止。長い教会との闘争の末に獲得した個人の自由により、涜神の権利は民主主義の基盤。移民がイスラムに回帰すると居場所がないどころか、出て行けと言われても仕方ない。

2015-01-12 13:20:43
masanorinaito @masanorinaito

オランダ→各宗教コミュニティは各々それを維持しつつオランダ社会を構成してよい。無神論者にも同じ権利がある。後から参入したイスラム教徒にも同じ権利を保障する。だが、9.11以後、このリベラリズムが、イスラム=他人の自由を侵害する押し付けがましい宗教とされ、一挙に排斥の対象になった

2015-01-12 13:24:01
masanorinaito @masanorinaito

というように、多くの国がひしめくヨーロッパでは、移民政策も、対イスラム教徒政策も、全く一様ではないのです。それにもかかわらず、イスラム圏からの移民は、世代が代わるにつれてイスラムに回帰していく傾向は共通でした。

2015-01-12 13:28:31
masanorinaito @masanorinaito

フランス的文脈においては何者も風刺や嘲弄の対象となるだろうし、それで何の問題もない。だがその嘲弄をレイシズムと受け取る人達の存在を抹殺するこは、あなた方にはできないのである。

2015-01-13 02:55:56
masanorinaito @masanorinaito

フランスのデモではペンをシンボルとして言論の自由を守ろうという訴えがあった。正論でありかけがえのない価値を守ろうとする訴えであった。それこそフランスが世界に誇るべき普遍主義の宝である。しかし、フランスは国内においてペンにはペンで応じるべきだと言いながら、中東・アフリカで何をした?

2015-01-13 03:40:46
masanorinaito @masanorinaito

イスラム教徒が、抑圧も差別も受けなかったのなら、暴力的になることはありません。

2015-01-14 02:39:20
masanorinaito @masanorinaito

ヨーロッパのイスラム教徒たちは、差別を受けても、滅多に暴力で反応しません。移民たちは、ホスト社会の人々と平等な権利を持っていないことがあり、警察とトラブルを起こしたくないという心理が働くからです。

2015-01-14 02:52:06
masanorinaito @masanorinaito

しかし、日々、ヘイトスピーチを耳にし、中東での同胞の子どもたちの死をネットで目の当たりにすることで、胸に秘めた怒りは次第に激しいものになります。それを誰が責められるのでしょう

2015-01-14 02:54:28
masanorinaito @masanorinaito

シリアやパレスチナやリビアやイラクから日々送られてくる画像は、不謹慎を承知で言えば、まるで子どもの遺体コレクションです。それを、ドイツやフランスのムスリム移民達は見ています。

2015-01-14 02:57:19
masanorinaito @masanorinaito

自分の居住国からも愛されず、平等に処遇もされず、信仰に回帰してムスリムとして正しい道を歩もうとすればするほど、揶揄と蔑視と非難にさらされるのです。

2015-01-14 02:59:33
masanorinaito @masanorinaito

そして目の前のパソコンには、日々送られてくる中東諸国の惨状。彼らの怒りは、ムスリムが多数を占めながら真っ当な統治をせず市民を抑圧する中東諸国の政治家たちに向かいます。そして、彼らを背後から支援する欧米諸国に向かうのです。

2015-01-14 03:02:00
masanorinaito @masanorinaito

そんな状況の中、信仰の根幹にある預言者ムハンマドを軽侮されることにも、耐えろ、風刺を、受け入れろと言うなら、それは無理です。

2015-01-14 03:03:28
masanorinaito @masanorinaito

ほとんど全てのムスリムは、過激主義者のテロを断じて許せないと確信しています。シャルリ・エブド襲撃犯は復讐を果たすつもりだったのでしょう。ユダヤ食品店への襲撃共々卑劣な犯行です。しかし共犯者が10人としても、500万人に及ぶ在仏ムスリムの何分の一でしょう?

2015-01-14 03:08:18
masanorinaito @masanorinaito

しかし、フランス世論も隣国ドイツの世論も人権の国オランダの世論も、もはや反イスラムに傾斜しているのです。イスラムとその信徒の信仰を理解した上での反感ならまだしも、ほとんど知らないままの嫌悪です。

2015-01-14 03:10:23
masanorinaito @masanorinaito

この状況でテロを根絶することなどできません。

2015-01-14 03:10:58