HYODO the AVENGER

竹村京 @kyou_takemura

「ざまあねえな。俺はもうあの頃の俺じゃねえんだ」 艤装の口の中に刺さった刀をさらに押し込む。 「長門、ここを狙え！」 「承知！全砲門、斉射！」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

待ち構えていた長門がすかさず砲撃する。この鎮守府随一の練度を誇る長門の砲撃は正確無比。一発残らず敵旗艦の口の中に吸い込まれて炸裂した。 「ギイイイイイッ！」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

しかし敵の耐久力はそれを耐え切った。そして無事な砲を長門に指向し、撃つ。 そのたった一撃で長門の艤装は半壊してしまった。 「くっ……だが、長門型の装甲は伊達ではないぞ！」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

HYODOは敵旗艦から離れ、長門に寄り添う。敵の艤装に突き刺さったままの二刀を指して言った。 「最後の一撃だ。やれるな、長門」 「もちろんだとも、一也」 全壊した砲を切り離し、残った砲塔を前にかざす。もとより弾切れ、ならば盾にして使い潰そうというのだ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

二人肩を並べて敵旗艦に突き進む。回避行動は取らない。撃ち込まれる砲弾は全て長門の残った砲塔で受け止める。 そうだ、それでいい。撃ち続けろ。俺たちにその傷口を向けてろ！ 「楽しいなあ！なあ一也！」 「ああ、最高だ！」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

これで、仲間たちの仇を取れる！ 最後の砲塔が崩壊する。 目の前には刀が突き刺さった大口。 俺の最後の一発だ、ありがたく味わえ！ 機械の体が唸る。全身のピストンがフル稼働する。人工筋肉が限界を超えて悲鳴を上げる。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「「おらあああああああっ！！！」」 二人の拳が同時に刀の柄尻を殴る。 長門の拳はエンチャントフィールドの強化によって。 HYODOの拳は残った炸薬カートリッジの一斉撃発によって。 刀が粉々に折れ砕け、一瞬の後に敵旗艦の艤装も粉微塵に吹き飛んだ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

艤装の誘爆はジョイントを介して本体にも至り、不敵な笑みを浮かべていた敵旗艦は大きな爆発を残して海の藻屑と消えた。 それを見届けた時、HYODOの意識は闇に飲まれていった。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

決戦からどれほど経っただろうか。おそらく数分と経っていないはずだ。 「一也、一也！」 「お、おう、長門」 兵頭が目を開くと、目の前に涙を流す長門の顔があった。 「おう、じゃない！無理をしすぎなんだお前は！自分の体を見てみろ！」#落ちぬい二次

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見ろと言われて見れるものではない。 兵頭の体は、半分なかった。 最後の拳を撃った右腕は肩から先が無く。限界を超えて疾駆した両脚は膝から下が無い。 機能不全を起こして外見上は人の姿に戻っているだけに、その凄惨な様は長門の胸をえぐった。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

当たり前だ、エンチャントフィールドを持たない体で艦娘と同等の戦闘能力を発揮したらどんなに頑丈に作っても無理がある。この計画の開発者から、全力で戦えば十中八九死ぬと宣告されているのだ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「この馬鹿！お前が死んだらみんな泣くぞ！私と肉を食う約束はどうした！」 「わりい、ちょっと無理だわ……他はフォロー頼む。今からお前が司令官ってことで……」 「できるわけがないだろう！私にできるのは秘書艦までだ！秘書艦には提督が必要なんだ！」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「……俺がやれたんだ、お前もできるさ。みんなを頼む……んじゃ、ちょい寝る……」 「おい、一也！しっかりしろ！寝るんじゃない一也！かずなりぃっ！」 閉じられた兵頭の左目は、二度と開くことはなかった。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

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竹村京 @kyou_takemura

「…………これなに？」 「ハラショー」 「しれぇのために、雪風と響ちゃんでがんばって書きました！」 うん。わかる。しわしわになった400字詰めの原稿用紙に二人分の筆跡でぎっちり書いてあるもんな。ウォッカの匂いもするし。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「おもしろかったですか！？」 「お、おう。おもしろかったぞ」 「やりました！」 「ハラショー」 でも何で俺が変身ヒーローなんだよ。何で今さら長門が名前で呼ぶんだよ。 「しれぇはとっても強くてとってもかっこいいので！」 最後死んでるんだけど。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

まあ、かっこいいと言われれば悪い気はしない。 「じゃご褒美やらねえとな」 デスクの抽斗を開けてそれぞれに駄賃をやる。 雪風にはポッキー。なんと普通のやつとストロベリーとアーモンドクラッシュの三点セットだ。 「いいんですか、しれぇ！ありがとうございます！」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

響には酒……というわけにもいかないからビール券。さすがに売店のやつらも未成年者に酒を売らないくらいの常識は持っていると信じたい。 「ハラショー。こいつはアルコールを感じる」 感じるんじゃねーよ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「これありがとな。夜更かしするなよ雪風。響は深酒すんな」 「はい！おやすみなさい、しれぇ！」 「ザ・ズダローヴィエ」 「はいおやすみー」 響がロシア語で乾杯つったのは無視しておこう。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「まさか作文なんてもらうとはなあ」 何だかんだでやっぱり嬉しいものだ。明日にでもまた読み返すとするか。 じゃ、今日は残業も終わったしもう寝よう。 照明を落として司令室を出る。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

無人の部屋に降り立つニンジャが約一名。 「なになに？ 提督ったら面白そうなもの隠したんじゃない？」 そうして、翌朝までにコピーと兵頭が漏らした非常に肯定的な感想の音声データが長門の手に渡ったのだが、それはまた別の話。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

おしまい #落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

あぬびすさんのいかにも歴戦の(変身)戦士って感じの絵姿を拝見して突貫で書いたものでした #落ちぬい