【ニンジャスレイヤー二次創作】 司祭廃棄 #2
「ドミシマをつける、使いっぱしりにでもしてやってくれ」 オヤブンのひとりがいった。首輪をつけたつもりなのかもしれない。たしかにうだつの上がらないやつではあるから、使いっぱしりにしかならないだろう。デッガーはふたり一組で捜査するのがルールだった。 R50
2014-12-13 11:27:56こわもての男がふたり、これから聞き込みやなにやらをやろうというのだから、そういうむかしなじみの習慣を思いださせられて、おれは気ぶんが少しよくなった。 「なにからはじめるんだ?」 「被害者の家族に話をききにいく」 「聞き込みってやつか」 「そうだ」 「まるでデッガーだ」 R51
2014-12-13 17:41:57そうだよとおれはいった。これからふたりして、無免許のデッガーをやるのだ。 車で移動するというと、ドミシマはヤクザリムジンをだそうとしたのでやめさせた。そんなもので走り回ったら目立って仕方ない。すぐにソウカイヤがききつけるだろう。 R52
2014-12-13 17:47:51かわりにドミシマは自分の私物だという、軽自動車をだしてきた。車の高さはぐんとひくくされ、タイヤはハの字にとりつけられていた。いかにもヤンクの車といった感じで、けしてじみとはいえなかったが、おれはよしとすることにした。 R53
2014-12-14 23:20:12おれもドミシマもひょろっこいとは、とても言えない身体つきだったから、いい年をした男ふたりがヤンクカーにぎゅうづめになってるのはおもしろいみものだったろう。 ダッシュボードのうえには色々なかざりがあった。 R54
2014-12-18 12:39:54毛あしの長い敷ものだの、メッキのやすっぽい時計だのにまじって、写真が一葉あった。写真のドミシマはあいかわらずオニガワラのしかめっつらで、3〜4才ぐらいの子どもを抱いていた。よこには30がらみの女がドミシマによりそっていた。美人ではないが、あいきょうのある顔だ。 R55
2014-12-18 17:58:40「きみに子どもがいるとはしらなかったな」 「子どもをつくらねぇなら、なんで生きているんだってんだ」 「神父は結婚できないぜ」 「いかれてるんだ、子どもをつくらないやつはみんないかれてる」 おれは肩をすくめた。 R56
2014-12-20 03:30:05しばらく車をはしらせ、ころあいとみておれは車を止めさせた。 「なにをするんだ?」 「捜査にいりようなものを買うんだ」 おれは目についたコンビニエンス・ストアに入り、ブラックニッカの小瓶をカウンターにおいた。ドミシマはけげんな顔をするばかりだった。 R57
2014-12-20 10:55:54「おい、会計はきみの役目だろう」 「おれの?」 「領収証を貰えよ、必要経費だぜ」 店をでると、さっそくおれは小瓶から、ひとくちぐいとやった。 ドミシマはあきれた顔をした。 「それが捜査に必要なのかよ」 「必要だ。血のめぐりがよくなって、あたまがさえるのさ」 R58
2014-12-20 10:59:50ドミシマはアル中め、とかなんとかぶつぶつ言っていたが、おれは気にしなかった。ほんとうは気にするべきだった。人殺しをさがしているのだから、おれが殺されるはめになるかもわからない。だが、阿呆な飲んべえのおれは、だれかと組んで捜査のまねごとができてうかれていた。 R60
2014-12-23 22:12:26オーガニック・スシが食えたことにもうかれていたのだ。一杯やって、あたまがぼうっとしてさえいなければ、もっとうまくやれたにちがいない。 うまくやれなかったとしても、やれるだけのことはやったのだと、いえたのだ。 R61
2014-12-23 22:31:10けれども、過ぎさってしまったことを悔やんでなんになる?脳みそまで、さけびたりになった男のやることときたら、いちじがばんじそうなのだ。一滴のアルコールものがすまいと、目を血ばしらせているのが常なのだ。もういちどその日の朝からやりなおせたとしても、やっぱり酒をのんだろう。 R62
2014-12-25 00:08:13おれとドミシマは被害者の家族をたずねてまわった。ルンペンがひとりも殺されていないことから、どうも今回のサイコ野郎は手当たりしだいというわけではなさそうだと、おれはふんだのだ。手当たりしだいでなければ何かルールがあるはずだし、 R63
2014-12-25 00:36:58どんなルールかわかればサイコ野郎をとっつかまえるのに、やくだつはずだ。おれはその手がかりが、被害者の家族からみつかりやしないかと考えたのだ。最初にトコシマ地区からはじめることにした。ネオサイタマ市警にまだ少しは信頼のあるたりで、あまり遅くにひとをたずねては R64
2014-12-25 01:05:45お巡りをよばれること間違いなしだ。お巡りとヤクザのくみあわせなぞ、昔のまんがの猫とねずみみたいに騒ぎになることまちがいなしのくみあわせだ。そうなってはうまくないので、聞き込みはなるべく穏便にやるようにした。ドミシマにもそういいふくめた。 R65
2014-12-26 01:53:10怒鳴るのはなし、すごむのもなし、ものを壊すのは論外だと。 それでも、最初にたずねた被害者の家族はひどくおびえて、こちらの質問に、はいかいいえでしか答えられなかった。2つめでもそうだった。 おれは3つめのチャイムをならすまえに、ドミシマにいった。 R66
2014-12-26 12:09:01「やはり、きみは外でまっていたほうが良いようだな」 「おれのなにが悪いってえんだ」 「そんなに怖い顔をしてちゃあ、押し売りか地上げ屋みたいだぜ。」 R67
2014-12-26 20:57:22「そんなにこたないはずだ。ちゃんとあいそ笑いだってしてるぜ」 たしかに、ドミシマは聞き込みのあいだ、オニガワラがしかめっつらしたような顔をしていたな、とおれは思い出した。手さきが不器用とはよくいうが、顔が不器用というのもあまりきかないはなしだ。 R68
2014-12-31 14:19:43「みんな、あんたの赤っ茶けたつらをみて、マグロ漁船に乗せられるんだと思ったんだ」 おれは自分のほおっぺたをつるりとなでた。たしかに長いあいだの日焼けと酒やけで、皮ふの色は、生まれたころよりもずいぶんと黒くなってしまっていた。 R67
2015-01-02 16:42:41ドミシマは不服そうだったが、つぎの家からはおれ1人が話をきくことになった。 インターフォンをならすと、かすれた女のこえが返ってきた。 「どなた?」 「ある人たちに頼まれて、娘さんについて調べているものです」 「警察ではないんですね?」 「警察ではありません」 R71
2015-01-03 20:16:13「警察でないのなら、話すことはなにもありません」 事情聴取というものは重労働だ。自分がうけた屈辱と、なにより恐怖と対面しなければならないのだ。それは被害者の家族にとってもおなじことだ。うしなったものがどんなだったか、ことこまかに思い出すのは辛い作業だ。 R72
2015-01-03 20:46:31それが二度とてにはいらないものならなおさらだろう。 「わたしはそういう人たちのために働いているんです。子どもたちの名誉をとりもどす仕事をしているんです」 ドアはひらいた。 「なにをお話すればいいんです?」 R73
2015-01-04 10:38:50ひらいたドアのすきまから、泣きはらして目の腫れた女と、ゆびをくわえた小さな少女が顔をのぞかせた。 「お子さんを、どこかにやれませんか?なるたけこんな話はきかせたくないんです」 とはいえ、せまいアパートでは外以外にどこにもいきようがなかった。 R74
2015-01-04 16:50:20「おれが外であそばせとくよ」 いつのまにか、おれの後ろにきていたドミシマがいった。わるくない考えだった。ドミシマみたいのがみはっていれば、このあたりなら子どもに手をだそうというものはいないだろう。 R75
2015-01-04 16:54:28