岡田斗司夫、出世作『オタク学入門』より始まる「トシボーの犯罪」

『オタク学入門』のマンガに関する章の9割が竹熊さんの喋った内容だというのは、佐村河内事件を彷彿させるほど吃驚だったのですが、その話にとどまらず竹熊さんが折に触れて指摘してきた「オタク顕教・密教」のようなことの流れ。資料付。
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対談内容を一部引用してみると…

オタク密教とオタク顕教?竹熊健太郎氏との対話(1)
「村上隆と岡田斗司夫」での竹熊さんの発言引用
大泉さん的なスタンスは、オタクとしての自覚はないけどオタクに興味があるというところですよね。ニュアンスはちょっと違うんですけど、現代美術の村上隆さんも「自分はオタクじゃないけど、オタクにあこがれてる」って言うんですよ。そこは大泉さんとそっくりなんです。オタクにあこがれてるけどオタクになれなかった人間が一生懸命やって、ああいうアートを始めたという。
ところが村上さんの場合、かなり現実のオタクに反感買ってるんですね。彼の作ってるものにはかなり修練の跡が見えて、オタク的な表現としては完成度は高いと思うんだけど、最終的には「アート」の側に作品を持っていってしまうでしょう。そこがオタクからすると裏切り者あつかいというか、略奪者なわけですよ。われわれの領域を浸食して、勝手に商売しやがって、という怒りを多くのオタクは感じている。
でもね、僕は村上さんのやってることと、これまで岡田斗司夫氏がやっていたことって本質的には変わらないと思ってるんだよね。ただ、ちょっとしたニュアンスの違いがあるだけで。岡田さんは「オタクの利益擁護者である」ということでオタクの支持を受けつつ商売してきたわけで、まあそれ自体はいいも悪いもないんだけど、「僕は君たちの仲間だ」ってスタンスを表明しつつ、やってることは実は……。
(大泉実成「オタクからの搾取。」)まあ言っちゃえばね。ただ村上さんはそれを露骨にやったけど、岡田さんは反感を買わないように、支持を失わないよう巧妙にやっていると思う。その意味では、政治家なんですよ。実際、90年代の彼は一貫して「オタクの社会的立場を擁護する」という政治的な発言をしてきたわけなんだけど、実はオタクとは関係ない本もたくさん書いてる。そこにはでも、一貫したテーマがあって、つまり彼の本って、すべて「個人の悩みをどう克服するか」というコンプレックス商品なんですよね。はじめは(被差別者としての)オタク擁護本で当てて、それから三十代で結婚できない女に向けての本『30独身女』とか、『フロン』というタイトルの、「家庭から夫をリストラしろ」っていう本とか。後は、ダイエットについての連載とか……。


5.参考資料:唐沢俊一検証blogの番外編「岡田斗司夫検証」シリーズ

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6.記述の整合性・一貫性について

もうれつ先生 @discusao

d.hatena.ne.jp/kafkaesque/201… KAFKAESQUE(日垣隆検証委員会)1月24日の記事: 竹熊氏は岡田に対して昔から批判的だったのですが、どうせ当事者(被害者)として告発するなら、個人的には唐沢が幻冬舎新書で第一の盗用事件を起こした際にやって欲しかったです。

2015-01-25 13:11:42
もうれつ先生 @discusao

引用続き:あの時点で竹熊氏が公に告発していれば、もしかすると、岡田という紛い物、ペテン師に騙される被害者が少しでも減っていたでしょう。『オタク学入門』を購入した読者に対する説明責任もあります。

2015-01-25 13:12:57
もうれつ先生 @discusao

引用続き:無論、告発にもタイミングがあり、竹熊氏が話を聞いてもらうには「岡田斗司夫、おかしいぞ?」と皆が疑心暗鬼になっている時こそ効果があるのですが。>

2015-01-25 13:13:21
もうれつ先生 @discusao

カフカエスクさんの思いはまぁそれとして。 自分としては、竹熊さんの連ツイによって、今まで岡田斗司夫さんの提出したマンガ論が一貫していないのは何故か?もっと強く言うと、かつて主張していた事柄と真逆の説明をどうして平然と行えるのか?そういう一貫性の欠如の原因が分かったように思う。

2015-01-25 13:25:04
もうれつ先生 @discusao

例えば『オタクはすでに死んでいる』では、「萌え」の起源として少年マガジンの美少女アイドル路線を挙げ、1972年52号の篠山紀信(カメラ小僧)による南沙織の表紙がエポックメイキングだったとしている。 d.hatena.ne.jp/discussao/2010…

2015-01-25 13:36:23

『オタクはすでに死んでいる』<第5章「萌え」の起源>該当部引用

このようにして『少年マガジン』の表紙の記事は、子供向けの軍記ものから、宇宙ドキュメンタリーにいって、『サンダーバード』のようなキャラクターものになり、一九七〇年代に急に大人っぽくなって、黒澤明まで取り上げだした。
しかし、すべてが変わってくるのは、一九七二年末です。
この年、南沙織が表紙になった。
これ以降、少年マガジンの表紙は一貫してアイドル路線を歩み始めます。それが現在までずっと続いています。

もうれつ先生 @discusao

これについてはブログで書いた通り、マガジンが青年向けにターゲットを絞っていたのは60年代後半から70年代初頭で、雑誌『明星』の打ち出した新路線(篠山紀信表紙)を踏襲したアイドル雑誌的なものはその期間のごく短いものだった。それを岡田さんは「萌え」まで続く潮流と説明していた。

2015-01-25 13:44:12
リンク もうれつ先生のもうれつ道場 2010-01-22 『オタクはすでに死んでいる』への助走(9) 『オタク論!』のつづき その1 P.152「マンガと評論・後編」..
もうれつ先生 @discusao

ブログの説明では、少年マガジンのそういった「青年向けアイドル」的要素が散発的で一貫していない例として、80年代前半の『かぼちゃワイン』や『胸騒ぎの放課後』にも言及した。こういったラブコメ的作品と「萌え」は違うだろうという主旨だ。 d.hatena.ne.jp/discussao/2010…

2015-01-25 13:59:34
もうれつ先生 @discusao

ところで、『オタクはすでに死んでいる』の12年前の著書『オタク学入門』には、少年マガジンの躍進期のセオリー「原作プロデュース方式」が時代に対応できなくなった事例として80年代前半のラブコメ路線を挙げ、「妙に則物的」「オッサン臭い」とその路線を表現している。

2015-01-25 14:12:50

『オタク学入門』該当部引用:

さて1970年代末、マンガ界にとうとう「ラブコメブーム」がやってきてしまった。
(中略)
しかし今までスポ根、社会派とSFしか経験のない「硬派」な少年マガジンは、このラブコメ路線のマンガ開発に失敗した。大作指向になりがちな「プロデューサー制度」からは、どうしても恋愛の機微を描くラブコメは生まれなかったのだ。
ラブコメマンガの開発・量産に成功したのが長期低迷に苦しむ少年サンデーだった。『翔んだカップル』と同じ78年、サンデーでは高橋留美子の『うる星やつら』が始まった。このヒットと同時に78~80年には『男組』『サバイバル』等の、マガジンのマネしてはじめた劇画路線作品が次々と終了、代わってアニメ絵の新連載が連続する。
1981年、ついに少年サンデーであだち充の『タッチ』が始まった。
(中略)
少年マガジンは『かぼちゃワイン』や『胸騒ぎの放課後』『俺のデカプリンちゃん』を連載開始した。が、ラブコメはマンガ家の感性がすべてである。原作プロデュース方式のマガジンでは、どうしても微妙な感じが出ない。
促成栽培されたマガジンのラブコメは妙に即物的だ。はっきり言うと「オッサン臭い」ラブコメばかりだったのだ。女の子のスカートをめくるとか、胸にタッチするとか、その感性は当時のオタクからも「マガジンのタッチボイン路線」「肉体路線」とバカにされた。
この時期、混乱したマガジン編集部はとにかく新連載を乱発する。84年~86年のマガジンの混乱ぶりは数字にも表れている。この期間に始まった新連載は36本、打ち切られた連載は34本。これらの路線はもちろんほとんどウケず、マガジンの部数はメキメキ落ちていった。

もうれつ先生 @discusao

つまり、少年マガジンの歴史について、『オタク学入門』と『オタクはすでに死んでいる』の記述は対立している。

2015-01-25 14:20:28
もうれつ先生 @discusao

12年の間に一個人の認識が正反対のものになるということはもちろんある。が、正反対になった理由はあってしかるべきだろうし、正反対になったのならばパラダイムシフトの兆候が言論活動全般から伺えてしかるべきように思う。しかし、岡田斗司夫にはそういった物書きの思考的運動が確認できないのだ。

2015-01-25 14:25:22
もうれつ先生 @discusao

竹熊健太郎さんの暴露だけ信頼するのはどうか?というコメントも散見するので、若干検証気味に連ツイしました。 まぁ『オタク学入門』には、1975~6年の少年ジャンプの躍進について <『包丁人味平』のリアリティにこだわらない大ボラ> と記されていて、「あ…あ~」と腑に落ちたりしました。

2015-01-25 14:37:10
もうれつ先生 @discusao

もちろん、岡田斗司夫が『包丁人味平』を好きであっても何もおかしくはないけどね。ま、でも、竹熊さんの去年暮の味平祭りみたいな偏愛を見ると、「一貫性」は竹熊健太郎の方に見えて、彼にはそういうところが(他の面でも)確認できないって話。

2015-01-25 14:42:00