ベイ金剛VSベイ山城

ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

迷いなどあるものか。 飛び込む。 拳が頬を、擦った。 急停止、180度反転。 拳を固め、引く。 「はあああああああああああああっ！」 山城サンの大振りの拳を、姿勢を落として躱す。 速度を殺さず、身を素早く捻ってボディブローを叩き込む。 彼女の身が大きく「く」の字型に曲がる。

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「この程度、でぇっ！」 衝撃、呼吸が止まる。 山城サンの組まれた両手がワタシの背中に振り下ろされたのだ。 スレッジハンマー、シンプルでポピュラーな見た目からは想像できない程の破壊力だ。

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「ぐゥ……セイヤァッ！」 「甘いっ！」 「がァッ!？」 顔面目掛けて放った右ストレート。 片腕で軽く掴まれ、もう片腕による掌底が肘に叩き込まれる。 逆方向に押し込まれた関節が鈍く痛む。 だらりと下がって上がらない。

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「グッ……まだまだぁッ！」 山城サンが振り上げた拳が飛んでくる前に、飛び込んで頭突きを叩き込む。 使えるのは左腕だけ。 それは読まれている。 「どオリャアッ！」 腰を捻り、右腕をムチのようにしならせ、手根で彼女のこめかみを打ち据える。

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「ぐ、ぐ、ぐぅ……ですがぁ！」 それでも彼女は崩れなかった。 その身体でワタシに覆いかぶさるようにしながら、腕を掴まれる。 「ワタシの排水量は30000トンを超えています……！ パワーでなら負けませんっ……！」 言葉通り、彼女のパワーは凄まじい。 足を止めては完全に不利だ。

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「私だって鎮守府の、提督の名を預かっていますっ！そう簡単に負ける訳にはいきません……！」 「背負うものは同じってことデスネッ……しかし、ワタシだって！」 強がりは見せるが、押されていることに変わりは無い。 いくら力を込めても押し込まれるだけだ。

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「申し訳ありませんが……このまま押し込ませて頂きます！」 上から押しつぶされそうになっているせいで、彼女の顔がよく見える。 血が上り真っ赤になった、煤だらけの顔。 その時、頭上に何かが見えた。

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ワタシ達の頭上、回転しながら降ってくるその姿。 やたら縦に長くて、何故か所々左右に出っ張るその姿。 それはまさしく彼女の…… 「や、山城サン……艦橋、どこにいったんデスカ？」 「さぁ。先ほどの爆発で飛んだのではあっ！？」 ガスっ、と鈍い音がした。

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彼女の頭部を直撃した艦橋が激しい音をたてて海へ落ちる。 「私ってやっぱり……不幸だ、わ……」 崩れ落ちてくる彼女を抱き留める。 ……えぇ？ これでいいのか。

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「金剛！終わったみだいだね」 「伊勢いたんデスカ？」 「他に言うことあるよね！？」 背後から声をかけて来たのは伊勢だった。 「救護班。さっきの爆発でケリが着いたと思って飛んで来たんデショ？」 「そうだけど……」 「決着はつきました。山城サンはこの通りデスので、救護をお願いしマス」

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「金剛は？」 「……肩に、捕まらせてくだサイ」 「了解！」 ……終わったらしい。 伊勢の右肩に手を伸ばす。 えぇ……えぇ？ 本当にこれでいいの？

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翌朝である。 全身火傷で再び包帯女に戻ったワタシは長門にこってりと絞られる羽目になった。 なんだヨ、ワタシは勝てっていう提督の命令を忠実にこなしただけだぞ。 幸い火傷を負ったのは火元が近かったワタシばかりで、山城サンにはほとんど怪我は無かったらしい。

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いやぁ、これは本当に良かった。 ワタシのせいで余所の娘様に傷をつけたとあっては大ごとだ。 ……軽傷ってだけで傷はついてるんデスケドネ。 まぁその怪我も、扶桑サンと一晩入渠したことで完治したらしい。

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山城サンに扶桑サンとの入渠を勧めたのはワタシで、一緒にどうかと誘われたがあの二人と同じ空間に一人でいることは精神を削られる。 謹んでお断りした。 傷は女の勲章、ということでもう暫くは付き合っていこうと思う。

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そして別れ際、彼女に声をかける機会を頂いたので、メッセンジャーをお願いした。 山城サンは扶桑サンに会えて嬉しい、あの娘はこっそりワタシの様子を知れて嬉しい、といったところか。 まぁ、今となってはなんでもいいのだけれど。

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山城「山城、ただいま戻りました」 提督「おう、帰ったか。どうやった？」 山城「とても素晴らしい経験でした。。。」 提督「そうか、そらよかったなぁ。しかし、あんな爆発まで起こさなくてもええのになぁ」 山城「本当ですね。。酷い目に遭いました」

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比叡「山城！お姉様、どうだった？」 山城「ふふ。『変な気を遣わなくていいからさっさと返事を寄越せ』だそうですよ」 比叡「えっ……バレたの？」 山城「ごめんなさい、バレちゃいました。。。とても勘の働くお方でしたので」

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比叡「お姉様は何でもできちゃうから！……ってうわああそんなこと言ってる場合じゃない！新婚だからって榛名達が言うから、必死になって手紙を抑えてたのに……ヒエ～ッ！」 提督「何の話や？」 山城「こちらの話です。ところで提督？」 提督「なんや？」

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山城「どうして、あの爆発の事を知っているんですか？ワタシの演習期間中、提督は大本営に行っているはずでしたよね？」 提督「」 山城「まさかとは思いますけど、実はこっそり覗いていたとか言いませんよねぇ？」

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提督「ち……違う！ワイはただ山城の晴れ舞台が見たくて……あちらさんの提督と……二人でこっそり……そもそもこの演習も、あちらさんが金剛の戦っている姿が一番カッコいいなんて言うからムキになってしもて……あっ」 山城「主砲、斉射」ｽﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾄﾞﾝ! 提督「」

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山城「ふぅ。。。まぁこの程度で済ましておきましょうか。。。」 提督「」 山城「さて、トレーニングをしなくてはいけませんね。。。アレで負けというのも納得いきませんから。次は必ず、私が勝ちマス！」 山城「なんて、ね」

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終わりです 長い期間お付き合い頂きありがとうございまシタ。 長い期間お待たせした癖にクソみたいなもので申し訳ありまセンでシタ。 明日からはまたベイスターズの二遊間について不満を言う艦娘に戻りたいと思いマス。 ＴＬ汚染して申し訳ありまセーン……

ベイスターズを愛する金剛型1番艦 @DB_Kongo

終わり！ やめやめ！ 閉廷！