不知火に落ち度はない　３２（モグリ）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ただ、普通と違うのはここねー。 ソースで綺麗に絵を描いてくれてるんだよ。 ドルチェを作る人が気分で、さらさらーっとね。 絵心あふれるパティシエの心意気である。 旨い上に、見た目で心も満たしてくれるのである。 なお、二人ともカプチーノ選んだんだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そしたら、ははは。 こいつはちょっとサービス効き過ぎだね。 ハートマークがサービスされてるわ。 さすがの長良ちゃんも意識しちゃったのかな。 思わず目をまん丸くして、俺とカプチーノを見比べてる。 いいねえ。純情な子だね。 #不知火に落ち度はない

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「お砂糖、いくつ？」 「は、はえ！？ あ。ああ、ああ。じゃあ、3つください！！」 では、ちゃぽんちゃぽんと、お砂糖を三つ入れていく。 ハートマークはすぐに消えて、コーヒーの香り漂った。 「甘党なんだね。俺もなんだよ」 「え。そうなんです？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

うん。血糖値高いって医者にたまに言われる。 いいじゃんね。酒飲み過ぎってわけでもないんだし。 さて、こっちもいれてぐるぐる回していただきましょう。 なお、片目はブラック派である。 だから、カプチーノ頼まないんだよな。 こんなサプライズがあるってのに。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「……ん、おいし」 「えっと。えっと、どっち食べればいいかな」 「うん？ 変なことを言うね」 え、と顔を上げる長良ちゃん。 こういうとき、一番いい答えはね。 「どっちから食べればいいか、でしょ？」 「えっ」 「せっかくだし二つとも、二人で食べようよ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

無理に一つを選ぶ必要なんてないのです。 美味しいものはどっちも食べちゃいましょう。 な、そこのケーキですごい悩んでるお二人さん。 「わーい！ じゃあいただきます！」 「どぞどぞ。ティラミスはそのままで。チーズケーキはソースにつけて食べると美味しいよ」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「え、でも絵もったいなくて……」 「綺麗な気球の絵だもんね。じゃ、ちょっと待ってね」 じゃーん。最新式のスマホでーす。 はい、チーズっと。 かしゃりと音がして、長良ちゃん撮影完了。 「えっ、えっ」 「メアドに送っとくよ。いつでも見えるでしょ？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

最近のスマホ画質いいよね。 ちなみに俺のはiPhone6。 防水じゃないのを買うのってどうよ、って話はあるけど。 深海で防水なんてのはまずないからなぁ。 やっぱ写りいいのはiPhoneでしょ。 Android派の片目、ギンブチとは違うのです。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「わ、わ。別に私写さなくてもいいじゃない！」 「寂しいこと言わないでよ。ほら、なんか記念日みたいに上手く撮れた」 実に可愛い長良ちゃんの姿である。 「あ、ほんと。私も撮っていいです？」 「どうぞどうぞ」 くるっとお皿を回して撮りやすくしよう。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「はい。長瀬さんもこんな感じ」 「お、何この色男。ヒュー♪」 うん。ケーキ撮ってないけどね。 でもいいでしょ、オッケオッケ。 「あはははは。自分で言ってる」 「自覚ありますから、俺」 なお、片目から二枚目半。 ギンブチからはナポリタンと言われてる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ちなみに孤独のグルメのロシア人。 あっちでもカメラ音がした。 目がちょっとキラキラしてる。 スイーツって心を和ませるよな－。 やっこさんは特に心の栄養が足りてないんじゃないかね。 どうだい？ 飯一個でわりとどうでもよくなること、あるんだぜ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「じゃ、いただきまーす」 「もうお腹いっぱいじゃなかったっけ？」 「スイーツは別腹です！」 うん。そうだね。 じゃ、俺も頂きますか。 コーヒーパウダーの苦みとマスカルポーネのうま味。 食事のシメにはこれがいいんだわ。 そしてカプチーノを一口。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

ああ。この組み合わせはやっぱいいな。 心にも染み渡るこの旨さだ。 「……はあ♥」 そして長良ちゃんは、ソースを混ぜてチーズケーキにつけて食べてる。 いいよね。シンプルなチーズケーキにしっかりしっとり、絡む甘酸っぱいソース。 いい腕してるわシェフ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「こっちもどうぞ。コーヒーにぴったりだよ」 「え、ホント？」 ホントホント。 早速言われるがままにまず、ティラミスを一口。 「うーん♥」 そして、カプチーノを一口。 「わっ……ほんとだ、すごい」 コーヒーパウダーと合わせてるのがポイント高いね。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「コーヒーとすごい合う－。今度寮でも試そうっと」 「ああ。お友達とやってみるといいさ」 さて、と。 じゃ、きっちりとどめを刺しに行きましょう。 「あ、ごめん。ちょっと手洗い行ってきます」 「はーい。行ってらっしゃい」 俺は席を立ち。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そのまま無邪気に、ケーキを楽しむロシア人の方へ向かう。 もう片方の組はと言うと、ケーキに同じく夢中で、俺が立ったことに気づいた形跡はない。 「チャオ♥ お兄さん、どうだいこの店の料理」 「！？ ……ウクライナ語が分かるのか」 ロシア人が顔を上げた。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「一応原潜乗りでね。注文聞いてて、ウクライナ訛りが日本語にでてたよ」 「なるほど……で？」 用件は、と聞いてくる。 「ここの払いは持つからさ。今日んところは気持ちよく返してくれないかアミーゴ？」 「……」 「足洗えとは言わないよ。さすがにな」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「承伏できぬ、と言ったら？」 「奢りなしになるだけさ。ただ、もう酒飲んじゃったじゃんアンタ」 腹一杯で、酒も飲んだ。 この雰囲気で緊張も解けてる。 「旨い飯喰ったし幸せ気分で帰りたいじゃん？ お互いにさ」 「……そう、だな」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「じゃ、決まりだな」 レシートをつまみ上げる。 「待った。アンタ、名前は」 「長瀬。潜水艦乗りやってる」 「ナガセ……か。俺はイワノフ」 「オーケーイワノフ。今日からアミーゴでいいよ」 ぽんと、肩をたたくと。腕を捕まれる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「ナガセ。行くなら国道ルートから高速道を使え。下は網を張ってる」 「ありがとうよ、アミーゴ。感謝する」 お、義理堅い熊さんだな。 「あと──頼みがある」 「言ったんさい？」 イワノフさんは少し照れたようにして。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「このケーキ、も一個頼んでいいか？」 あはは。なんだ。 よっぽど気に入ったんだなアンタ。 「いいさ。2個でも3個でも好きに頼みな」 諭吉さんを置いて、離れることにした。 話してみればいい奴じゃん。 飯って大事な、やっぱ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうしてお会計を済ませて店を出る。 イワノフさんは別にケーキを頼んでる。 ホモップルと化した二人が声をかけても、普通に無視キメ込んでる。 いいねいいね。 ありがたいぜアミーゴ。 時間稼ぎまでやってくれるたぁ、ホントな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「じゃ、行こっか長良ちゃん」 「ホントに良かったの？ えっと私一応お金持ってるし」 そうね。たぶん支払いどんと来いってことなんでしょう。 「いいのいいの。税金で働いてるんだし、ちょっと還元させて貰ったんだからさ」 血税をナンパに使いましたけど。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして車に乗り込みいざ発進。 目指すは港。 イワノフさんの言葉を信じて行きましょうか。 喧嘩のない空気って大事だぜ。 殺し合いなんてごめんですよ。 やるなら深海棲艦とが一番楽しいんだから。 #不知火に落ち度はない