「スシ・ナイト・アット・ザ・バリケード」

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

エクスプロシブはしかし、鉄クズに挟まれながら、虫の息で生存していた。痩身のエクスプロシブの体を肥満体に見せるほどのボムディフェンスニンジャ装束の厚みは伊達ではなかった。「そんな……こんなバカな事が…まだ何も攻撃できていないのに……」エクスプロシブは毒づきながら逃げようともがいた。

2010-09-09 20:17:56
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはエクスプロシブのもとへツカツカと歩み寄る。「ロクにチカラも見せられず退場する気分はどうだ、エクスプロシブ=サン?」「盗み聞きしていたのか。卑怯者め!」自身が発したのと同じ言葉で嬲られるというあまりの屈辱に、エクスプロシブは気絶寸前であった。

2010-09-09 20:22:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「な、何をするニンジャスレイヤー=サン」動けずにいる自身の体へ屈みこんだニンジャスレイヤーに、エクスプロシブは必死で問うた。「決まっている」ニンジャスレイヤーはエクスプロシブの身体中に隠されたバクチクに逐一点火しているのだった。「やめてくれ!もう勝負はついたハズだ。死にたくない」

2010-09-09 20:30:15
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「親指で起爆スイッチを押していたようだが、時間が経てば押さずとも起爆するのだろうな?」「やめてくれ!何でも話す!」「あいにく聞きたい事は何も無い」「死にたくない!」ニンジャスレイヤーはエクスプロシブを見つめた。「……慈悲はない。ニンジャ殺すべし」

2010-09-09 20:35:11
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーは立ち上がり、その場を離れた。「サヨナラ!」エクスプロシブが絶叫し、そして、爆発した。極大の爆発の中心にあっては、ボムディフェンスニンジャ装束もひとたまりもない。エクスプロシブは跡形もなく爆発四散した。ニンジャスレイヤーは振り返らなかった。

2010-09-09 20:38:44
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

トットリ村の反対側へニンジャスレイヤーが駆けつけた時、すでに最後のモーターヤブは引きずり倒され、生き残ったレジスタンス達は歓喜の只中にあった。動きを停めたモーターヤブの関節という関節に、無数の飾りつきの矢が突き立っていた。ニンジャスレイヤーの姿を認めると、一同に緊張が走った。

2010-09-09 20:43:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ニンジャ…」「また別のニンジャだ…」「敵なのか……」「この人は、味方だ!」レジスタンスのリーダーが人々を制して進み出た。「ドーモ、助かりました、オカゲサマでした。これで我々はまだ戦える」「スミマセン、ユカノ…いやアムニジア=サンはどこに?」ニンジャスレイヤーは礼儀正しく聞いた。

2010-09-09 20:52:46
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リーダーは火の見ヤグラを指差した。ヤグラで弓を持って警戒するアムニジアをニンジャスレイヤーが見上げると、彼女も視線を返した。しかし言葉は無い。リーダーがニンジャスレイヤーにオリガミ・メールを差し出した。「アムニジア=サンはあそこで警戒を続けるとの事です。貴方にはこれを、と」

2010-09-09 21:03:00
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはキツネの形に折られたメールを開いた。毛筆でしたためられた手紙を読み、彼は感情を押し殺す。

2010-09-09 21:06:25
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハイケイ ニンジャスレイヤー=サン。私の名前をユカノと呼んだ貴方ですが、あいにく私には記憶が無いのです。私の帰るべき場所は、私を救い、受け入れてくれた、イッキ・ウチコワシという組織です。ラプチャー=サンとは、将来を誓い合う仲でした。ヒトメボレでした」

2010-09-09 21:10:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「私はこのトットリで、イッキ・ウチコワシの増援エージェントを待ちます。そして、ラプチャー=サンの喪に服します。スミマセンが、今の私は昔の私とは別人です。貴方が私にできる事は無いのです。重ね重ね、今回は助けていただき、また、ラプチャー=さんのカタキを討っていただき……」

2010-09-09 21:13:42
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

ニンジャスレイヤーはオリガミ・メールを四角く畳み、懐にしまい込んだ。そして代わりに自分のオリガミを取り出し、素早く携帯毛筆で返事の手紙を書くと、亀の形に折り曲げた。「これをユカノ…アムニジア=サンに」リーダーにメールを手渡すニンジャスレイヤーの声は、虚ろで、痛々しかった。

2010-09-09 21:16:20
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

リーダーはヤグラで地平線を睨むアムニジアを見上げた。「アムニジア=サン、手紙を受け取った……ヤヤッ!」リーダーはおどろき、声を失った。レジスタンスの人々は皆、驚きにざわついていた。ニンジャスレイヤーの姿は一瞬のうちに消え失せていたのである。

2010-09-09 21:19:12
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「太陽だ……」カブラ=サンが東の空を指差した。オレンジ色に滴る朝日が、フジサンの麓から、ゆっくりと昇ってきつつあった。明け方に雲が途切れる事など、一年に何度も無い。これは、吉兆だろうか、凶兆だろうか。疲れ果てたレジスタンスの人々は、言葉を失い、ただ、太陽を見やるのだった。

2010-09-09 21:23:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「スシ・ナイト・アット・ザ・バリケード」完

2010-09-09 21:24:59
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