ア・クルエル・ナイト・ウィズ・レイジング・フォース・フロム・ソー・サイレント・フィアフル・レルム #7
メイルシュトロムが首をめぐらし、不快げにユカノを見た。「イヤーッ!」サイズマスターの大鎌を潜り抜け、ユカノは懐に潜り込んだ。押し合う彼らめがけ、再びゲニン達がじわじわと包囲を狭め始めた。ドモボーイは床を這い、己の無力を嘆いた。「シルバーキー=サン!」ユカノがなおも叫んだ。50
2015-02-03 02:02:36メイルシュトロムがもう一方の手でユカノを指さした。「「「「「「イヤーッ!」」」」」」ゲニン達が一斉に襲い掛かった。ドモボーイは黒い波に呑まれた。そしてユカノ。サイズマスターと競り合う中、逃れるすべもない。……ヒュルルル……ルルルル……そこに降ってきたのは、光る雨である。 51
2015-02-03 02:04:45「グワーッ!」「グワーッ!」「グワーッ!」降り注ぐ光の雨に撃たれたゲニンはその部位を散弾銃で撃たれたように爆ぜさせ、のたうち回った。花火?否……それはカラテ粒子!カラテ・ミサイルである!ヴァストバルクとスパルトイのイクサを見守っていたニーズヘグはこの異変に眉根を寄せた。52
2015-02-03 02:06:55「彼奴が?」ニーズヘグは呟いた。「あるじめ、如何にして言い含めたというのか」……「ア?」タイコ持ちのスモトリと旗持ちのニンジャ、ボロゴーヴが、松明のもとに歩き進んできた意外なニンジャを振り返り、言葉を失った。そのニンジャはカラテ・ミサイル第一波を放ち終え、尊大に胸をそらせた。53
2015-02-03 02:12:28「なんと情けなきイクサ」グランドマスター・パーガトリーは首を振った。「そも、この私が出向く時点で破綻作戦の極みぞ」オレンジの明かりは、彼の首筋の脂汗と、血の気が引き青ざめた横顔をよく隠した。「しかしながら私が来たからには、敵の命運も今尽きたりと言えよう」 54
2015-02-03 02:15:12彼がキョート城の深淵に近づく事は決して無い。自身の性質はもとより、憑依ニンジャソウルが非常に高位である為に、極めて強くオヒガンの影響を受けるからだ。にもかかわらず、彼すらも前線に現れた。このイクサはダークニンジャにとって最重要のイクサ、今後の試金石となるべき場と決まったのだ。55
2015-02-03 02:23:15ニーズヘグは唸り、ヴァストバルクを徐々に押し始めたスパルトイをもどかしげに眺めた。ヒュルルル……光る雨の第二波。ゲニン達を焼いてゆく。ディミヌエンドはドラゴン・ニンジャのもとへ駆けてゆく。では、メイルシュトロムは。そしてジュエルは? 56
2015-02-03 02:27:49ドクン……神秘の立方体が強く脈打った。その一打が、メイルシュトロムに確固たるニンジャ装束を与えた。不明瞭な相貌に喜色が滲んだ。ドクン……神秘の立方体が強く脈打った。メイルシュトロムは訝しんだ。降り注ぐカラテ・ミサイルなどおそるるに足らず。だが、撃たれ崩れたゲニンの残骸が宙に。57
2015-02-03 02:32:38立方体が震動を始めた。メイルシュトロムはこれを好まなかった。彼は手に力を込め、抑え込もうとした。ドクンドクンドクンドクン……だがそれはうまくゆかなかった。そうはさせじとする者があった。即ち、ゲニンの残骸が新たな人型を構成し、メイルシュトロムの眼前で、同様に立方体を掴んだのだ。58
2015-02-03 02:35:41「ウヌッ!」メイルシュトロムはジュエルを奪い返そうとした。だが人型は強い力でそれに抗い、離そうとしない。今や人型は明確な装束を構成していた。銀色の装束を。そしてメンポを。そして、ゴウランガ……そのニンジャ装束に包まれた、男のニンジャの肉体を。 59
2015-02-03 02:38:25「貴様……」「ダメだ。悪いがこればっかりは譲れねえ」銀色装束のニンジャは挑むように笑った。「どンだけ大変だったと思ってる。アンタも色々あるんだろうが、こっちにも色々あるンだ」彼はジュエルを掴まぬほうの手で、己の身体を探るように触れた。「オオ……何てこった。感慨しかないぜ」 60
2015-02-03 02:42:47「何が起きてやがるんだ」ドモボーイはカラテミサイルに撃たれたゲニンの残骸にまみれながら、うめき声をあげた。パーガトリーの光の雨はいまだ降り来たり、彼らギルドのニンジャをすら危険の中に置いている。「イヤーッ!」「グワーッ!?」サイズマスターが身体をくの字に折り曲げ、吹き飛んだ。61
2015-02-03 02:47:12ユカノのポン・パンチが乱戦の隙をついてサイズマスターの体幹に突き刺さったのだ。サイズマスターは空中で受け身を取ろうとした。その地点に走り込んできた小柄な影が、二刀を繰り出し、その首を刎ねた。「サヨナラ!」爆発四散したサイズマスターを振り返り、ディミヌエンドがザンシンした。62
2015-02-03 02:48:41「ウカツな奴だな。イクサの最中に気を散らしてッからだ……」銀色装束のニンジャが言った。目の前のメイルシュトロムを睨み、「俺もか?」それからユカノを見た。「ドーモ。ユカノ=サン。こんな真っ最中に済まないな。俺だ。シルバーキーだ。ちょっと待っててくれよ」 63
2015-02-03 02:52:10シルバーキーは己の血管を行き来する血液、心臓の鼓動、ニューロンの爆発、何もかもを精細に感じ取っている。ニンジャ達、戦う者達、死んだ者達を。ニンジャ第六感が開きすぎている。ブーストの源は右手に掴んだジュエルだ。だが、まだこの手を離すわけにはいかない。メイルシュトロム。 64
2015-02-03 22:24:23この神秘的立方体はオヒガンに揺蕩う力を狭間の世界に抽出し、限定的にではあるが、現実をすら定義してみせる。なんと危険な力であろう。そしてこのような呪物をすら精製するキョート城とは、いったいいかなる秘密をなお隠しているのか。ともあれ、この力と繋がり、操作する事で、彼は蘇ったのだ。65
2015-02-03 22:28:42「俺の顔を見たの、初めてだろ。ユカノ=サン」シルバーキーは言った。「ハンサムか?多分、ズルをすりゃ美化して作ることもできたと思うんだが、それはやめたよ」「そうね、十分親しみがもてる顔ですよ」ユカノは破顔した。「ドーモ。シルバーキー=サン」シルバーキーは頷き、右手に力を込める。66
2015-02-03 22:33:10右腕を透かして、ジュエルはシルバーキーに根を張り、接続している。大丈夫だ。シルバーキーはニューロン速度で思考を巡らす。コントロールできている。内なるかりそめのチャドーが、いまだ彼を助けている。横目に、エンブレイスの爆発四散痕。存在の名残りを感じ、何とも言えぬ感傷を抱く。 67
2015-02-03 22:38:37(色々ありがとうよ。エンブレイス=サン)シルバーキーは心の中で祈りめいて呟く。(キャプスタン=サンはアンタを利用して、ギルドの部隊も全滅に追いやったけどさ……多分アンタに対するユウジョウに嘘はなかったんじゃないかな)「イヤーッ!」「ヌウーッ!」力の波。メイルシュトロムが怯む。68
2015-02-03 22:43:19「調子いいぜ」シルバーキーはメイルシュトロムに挑んだ。己を鼓舞するかのように。メイルシュトロムの不明瞭な肉体にノイズの波が走る。白熱する瞳が敵意に見開かれる。ドクン……ジュエルを通し、その破壊意志がシルバーキーに逆流する。シルバーキーの両目から血が流れ出した。 69
2015-02-03 22:51:05「そレはお前に属すル物でハ無い」「グワーッ!」シルバーキーの眼前、装束を炎めいてざわめかせるメイルシュトロムは数倍にも巨大に見えた。「お前ノ役目は終わリダ!運び手よ!」「グワーッ!」ユカノが駆ける。ディミヌエンドが立ちはだかる。「ドラゴン・ニンジャ=サン!貴様を自由には……」70
2015-02-03 22:57:56「ヤメロ」ドモボーイは片腕で身体を支え、言葉を絞り出した。新たな光の雨が周囲に降り注ぐ。「わからねえが……やめるんだ」「なぜ」ディミヌエンドは困惑した視線をドモボーイに投げた。ユカノは足を止めない。彼女はディミヌエンドを睨んだ。その超然たる眼差しが、ディミヌエンドを怯ませた。71
2015-02-03 23:02:13「感謝します」ユカノはディミヌエンドの横を通過し、シルバーキーの傍らに立つと、震えるその肩に手を触れた。メイルシュトロムがユカノを見下ろした。「「「イヤーッ!」」」ゲニンの生き残りが襲いかかる。「イヤーッ!」「グワーッ!」ドモボーイがインターラプ卜する!カジバチカラ!72
2015-02-03 23:07:07