ほしおさなえさん(@hoshio_s)の140字小説40
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1000編まで書こうと思ってますが、書いたところでなにもならないし、実体のない爪楊枝で城を建てるようなことばかりしてると、きっと孤独になってしまうんだろうと思うけど、書けるうちは書こうと思います。
2014-11-29 18:42:39400編、おめでとうございます!
嘘のお話ならいくらでも書けるのに、ほんとのことはひとつも書けない。根っからの嘘つきなんだね、きっと。でもほんとはひとつくらいほんとのことを書きたいんだ。美しくも優しくもないほんとのことを。けど書けない。そんなのないのかもしれない。ほんとは、ほんとなんてどこにもないのかもしれない。
2014-11-29 18:22:28君がいなくなって、僕の時間は砂のようになってしまった。でも木の葉が色づくと、一瞬だけ世界に色が戻って来るんだ。世界が輝いていたころ、君と僕が笑い合っていたころを思い出す。燃えるように弾んでた。生きていたんだね、僕たち。遠い笑い声が聞こえる。世界が鮮やかに色づいて胸の奥が熱くなる。
2014-11-30 20:48:21人の背骨にはその人の真の名前が書いてあるんですよ。言葉ではない別の形で。僕の一族はそれを読むことができるんです。祖父母の名も両親の名も死んではじめて知りました。でも、本人が死なないと見られない。僕も自分のは見ることができない。気になるけど仕方ない。真の名とはそういうものなんです。
2014-12-01 18:45:05雨が降っている。だれひとりいなくなった世界を想像し、街を見ている。だれかとつながりたかった。それでいてだれのものにもなりたくなかった。半身に会うことに焦がれ、もうひとりのわたしなどいないと知った。どの魂も気高く、ひとりのまま消える。雨の音を聞いている。ひとり、雨の音を聞いている。
2014-12-07 19:29:20君は覚えているだろうか、むかし学校の帰りよくふたり乗りしたことを。君のうしろにわたしが立って、夕暮れの商店街を走った。いま思えば狭い道をゆっくり走っていただけなのに、なぜあんなに自由に感じたのか。豆腐屋も青果店も楽しげで、空に飛んでいけそうだった。永遠にどこまでも行けそうだった。
2014-12-10 20:44:54夢の中で、わたしたちは木だった。言葉もなくただ並んで立っていた。日を浴び、風に吹かれ、長い時が過ぎた。ある日わたしたちは倒れた。世界はまばたきもせず、どこまでも澄んでいた。目がさめ、一瞬の夢だったと気づいた。外に木が並んでいる。わたしはほんとはあの中にいるのかもしれないと思った。
2014-12-12 13:41:12小さな島がありました。卵を温める鳥がいたので形を保っていましたが、中身はすかすかでした。鳥が巣立ち、島はひとりになりました。空も海も青く、孤独などどうでもいいことに思えました。飛び立った鳥たちのことを思うと、不思議と満ち足りた気持ちになります。そうして島は静かに崩れていきました。
2014-12-12 19:42:20あまりにも空が晴れていて、ふいに、僕が僕であることがどうでもよくなった。なにもかも手放しにして、もう空に帰っていける気がした。身体ってなんだろう。生きてるってなんだろう。どうやったっていつかはあそこに落ちていく。ほんとうに残酷なものは、こんなのびやかな日差しのなかに隠されている。
2014-12-15 14:04:24長く生きてればだれでも妖怪みたいになっていく、とその人は言った。そうかもしれない。視力は落ちたのにものがやたらとよく見えるようになり、その分呼吸する回数が減った。きっといつかひとり河原を彷徨うようになる。身体を失い、失ったことに気づかず、ずいぶん人と話してないなあなどと思うのだ。
2014-12-17 21:05:38