霧島組放浪記2

日記をつけるフラタ提督@放浪中 @Adm_FS_TaClass

流れるような動きで後輩長門の肩を踏んだ長門は、そこからさらに左足で首をへし折りかねない勢いのストンピングを繰り出しました。踏まれた長門も、そこでやられるわけではなく、素早く身を前に屈め、前転することでストンピングを不発に終えさせ、長門に地面を踏ませました #霧島組放浪記

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「なるほど。12年は伊達ではないようだな」「当然だ！この程度、造作も無い！」2人の長門はそれぞれ体勢を持ち直しながら、5mほどの間合いを取ってにらみ合いました。「なら、また同じのをいくぞ。ただし、3倍だ」「は？」 今度の長門の動きは、正しく、目に留まりませんでした #霧島組放浪記

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気が付くとそこには、首を足蹴にされ地面に転がる長門と、横たわる後輩の首を無造作に足で踏みつける長門がいました。全ては数瞬の内に決していたのです。恐らく、長門が言ったようにさっきと同じ上段蹴りからのストンピングがきっちりとキマったのでしょう。 #霧島組放浪記

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ただその速さはさっきの3倍に上る程で、後輩長門には防ぐことが出来なかったのでしょう。「ふむ。初撃を何とか凌いだあたり、見どころはあるかもしれないな」足下の長門を見下す長門。頭上の長門を睨み付ける長門。二人の視線は火花を散らしていました。 #霧島組放浪記

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当然ここまでの格闘は全て艤装なしの生身の肉体で行われていました。一体どこに艦娘としての経験がモノを言うのかはよく分かりません。砲撃演習とかやれよ。そんなこと言った所でこのアホどもがどうにかなるわけでは無いでしょうが。 #霧島組放浪記

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それから長門は後輩長門に自分を「師匠」と呼ばせ（そうさせるまでに5回ほどノックアウトした）、修行に入りました。波動砲なんていつの間に習得したのかと訊くと、長門曰く、『タウイタウイで大和が撃とうとしたのを見て覚えた』とのことでした。やはり天才か。　#霧島組放浪記

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長門たち以上に難航したのは霧島たちです。組長が、榛名がいると霧島が錯乱しやすい、ということに気付くまではマネージャー状態だった榛名のせいで霧島は暴れたり塞ぎこんだりを繰り返して、組長のストレスが募るばかりでした。正直そばにいるだけで死ぬかと思いました。 #霧島組放浪記

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その後は折檻と拷問とリンチを足して割らずにスパーリングという言葉で薄めたような特訓で霧島は、提督であるヤナちゃんの命令と過去の自分自身の言うことは理解し実行するほどには正気を取り戻しました。滅茶苦茶にも程が有ります。　#霧島組放浪記

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艦娘たちの修行以外にも、未来でのヤナちゃんとやまとの関係を知って驚いたりもしました。まさか二人が鳳翔さんに育てられて女同士の関係になっていたとは……しかもヤナちゃんにあんな……　#霧島組放浪記

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さて、何はともあれ、今は帰還作戦です。この未来と別れるのも名残惜しく有りますが、ここは私達が命を落とし艦娘たちの未来が絶望に転じた、本来はあるべきではない未来の形です。私達は過去に戻り、未来を変えなければなりません……　#霧島組放浪記

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タイムスリップを経験した時点で未来は変わっているはずだから心配ない、と組長は言いました。しかし、もしも筍提督の新時代艦が沈むようなことがあれば、多少の違いはあってもこのようなことになってしまう可能性は否定できません。私達には、帰ってやるべきことがあるのです。　#霧島組放浪記

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『波動砲充填完了！時空間干渉オールグリーン！帰還作戦状況開始します！』 端末から大和の声が聞こえてきて、我に返りました。画面の端には波動エネルギーの干渉度合いを示すのであろう波形が表示されています。はっきり言うとよく分かりません。 #霧島組放浪記

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大和の報告と同時にもう一つ表示されたものが有ります。電探図です。榛名と武蔵が率いる船外部隊が少しずつしきしまに近付いている様子が光点で示されています。もちろん、図の端には巨大な円、即ち大怪球「F」が座しています。　#霧島組放浪記

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これから私達は、帰還のための撤退にフェーズを移行します。敵戦力も一時的ですがだいぶ削ったここでさっさとドロンしてしまい、余剰分のエネルギーでついでにデカブツを落としてやろう、というその前段です。霧島組最大戦力の3人の力を、見せてやりましょう。　#霧島組放浪記

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『時空間同調確認！状況開始します！』端末から大淀の声が流れてきました。どうやら向こうでも順調に作戦は進行しているようです。そこは主戦力を一新しても流石は霧島組というところでしょうか。 霧島、長門も波動砲充填！発射に備えろ！ 『了解！』『了解！』 #霧島組放浪記

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『時空間転移確認！時限装置作動！各艦はしきしまに帰艦せよ！』しばらくもせず、大淀のアナウンスに従うように出撃していた艦娘たちは次々としきしまに帰投しました。レーダー上で敵を示す光点は大怪球「F」を除いて、ほとんど全てが掃討されています。　 #霧島組放浪記

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『波動エネルギー全艦充填完了！いつでもいけます！提督。ご指示を！』大淀はほとんど叫ぶようにしてデバイスから声を発していました。いよいよ、私達は私達の時代に帰るのです。ついでに、目の前の巨大な仇をスクラップに変えながら。 #霧島組放浪記

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『こちら赤城！全艦収容確認しました！』『ヤナです！こちらも確認完了！』『やまともいつでもいけます！』『長門だ！指示を頼む！』『霧島、準備完了です。さあ司令。ご命令を』『提督！帰りましょう！大和たちの時代に！』　#霧島組放浪記

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デバイスは次々に艦娘たちからの通信を拾い、私は自分の鼓動が高鳴っていくのを感じました。今一度、眠る娘の顔を確かめ、小さな手に触れながら、ゆっくり、はっきり、一音ずつに力を込めるつもりで、号令を下します。 波動砲発射、超次元干渉開始、波動機関全開、海域より離脱せよ　#霧島組放浪記

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気が付くと私は、いつものように「しきしま」の艦橋でデスクについていた。目の前には艦娘からの要望書の束を抱えた大和。執務中にかける赤い眼鏡の向こうに見える、少し目尻が上向きで二重まぶたの可愛らしい目を丸く見開き、血色がよくプリンとした唇にはわずかな隙間があります。　#霧島組放浪記

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恐らく私も似たような表情をしていることでしょう。何があって今の状況があるのか、頭がまだ追いつきません。あの大怪球との戦いはどうなったのでしょうか。「えっと、提督……大和は……この書類を……」大和も同様のようです……ところで私は何故、彼女の手の書類が何か分かった？　#霧島組放浪記

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そういえば、さっきまで大和と会話をしていたような覚えがあります。確か、艦娘からの要望書と、あきつ丸のことと……あきつ丸？あきつ丸なんて艦隊に所属していたか？いや、いる。2ヶ月前に龍田が拾ってきたんだ……2ヶ月？2ヶ月前はまだ大怪球戦前の準備期間で……？　#霧島組放浪記

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いや、2ヶ月前といえば丁度ハワイでしばらく海賊ごっことバカンスを……あれ？どう考えても辻褄が……そもそも私達が今いるのは……マーシャル諸島？確か霧島がトラック泊地に襲撃を……んん……？　#霧島組放浪記

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もしかすると、ひょっとして、今、私達が本来の世界に帰ってきてから、3ヶ月以上が経過しているのでは……？　#霧島組放浪記

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あの後、大和たちに波動砲発射の命令を下した後のことが、混乱から復帰した脳裏に次々と浮かんできます。窓から差し込む、船全体を包み込む青白い光と浮遊感にも似た力からの開放感。そして、デバイスから飛び込んできた大淀の声。『大怪球より波動エネルギー感知！どういうこと！？』　#霧島組放浪記