男子凍結 第一部

空耳から思いついた、SFの設定とプロローグ。 ---- 本編が書かれることはない、って言ったけど、書いちゃった(^^) この後は、多分、ない。はずだけど、思いついたら続くかも(^^; ---- 続きを読む
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夢乃 @iamdreamers

扉の先は思ったよりも広いロビーになっていた。奥に受付がある。 「いらっしゃいませ」 三人の受付嬢が声を揃えた。真ん中の受付嬢の前で簡単に 「若い子をお願い」 とだけ言う。 「はい、こちらからお選びください」 カウンターに並んだ若い男性の顔をキリナは眺めた。 #twnovels

2015-08-18 19:17:58
夢乃 @iamdreamers

並んだ顔をスクロールさせながら眺めていたキリナの目が、一人の男の顔で止まった。 (あれ?この人・・・) 「この人をお願い」 「かしこまりました。それでは、右手のエレベータで七階に昇って713号室にお入りになり、十分ほどお待ちください」 「わかったわ」 #twnovels

2015-08-18 19:20:46
夢乃 @iamdreamers

713号室に入るとキリナは服を脱いで裸になり、シャワー室に入った。ホテルに戻ってすぐに出てきたから、汗を流してさっぱりしておきたかった。 (昔は冷凍保存の技術も未熟で解凍に何時間もかかったから、センターも完全予約制だって聞いたけど、今はすぐに入れるから楽ね) #twnovels

2015-08-18 19:21:58
夢乃 @iamdreamers

などと考えながらゆっくりとシャワーを浴びてから部屋に戻ると、部屋に一人の二十歳前後の男が立っていた。 (あら。やっぱり似ている・・・でも、まずは・・・) 「そんな所に立ってないで、こっちのベッドにきて」 「はい・・・」 #twnovels

2015-08-18 19:23:22
夢乃 @iamdreamers

男はキリナに導かれるままにベッドに身体を横たえた。キリナは若い逞しい身体を優しく愛撫する。そして、いきりたったものに自分の腰を沈めた・・・ #twnovels

2015-02-08 17:19:32

夢乃 @iamdreamers

情事を終えたあと、キリナはもう一度シャワーを浴びて部屋に戻ると、所在無げにベッドに座っている男の隣に腰掛けると、気になっていることを聞いた。 「ねぇ・・・あなたの名前、唐津戸シンイチって言うんじゃない?」 驚いた目で、男はキリナを見つめた。 #twnovels

2015-02-08 17:20:08
夢乃 @iamdreamers

「やっぱりそうかぁ。なんとなく面影が似てると思って。あなた、小学五、六年生のとき神威羅小にいたでしょう?」 「あぁ、確かそうだったと思う。あなたもその学校に?」 「男の子なんて珍しいからね。男児学級ができただけでも大騒ぎだったから、よく覚えてる」 #twnovels

2015-08-18 19:25:33
夢乃 @iamdreamers

「でさ、あなた、女の子の一人に頭を殴られて泣いていたでしょ。殴ったの、私よ」 「・・・あー、あのときの怖い女の子」 「怖いは余計」 「すみません」 「謝らなくてもいいけど。で、その後大変だったなぁ。先生に目一杯怒られて。『男の子は人類の宝なんですよっ』って」 #twnovels

2015-02-08 17:21:06
夢乃 @iamdreamers

「そうか・・・」 シンイチは何か考え込むふうだった。 「ん?どうしたの?」 「いや、・・・こんな時になんだけど、ちょっと聞いてもらっていいかな。知り合いにあうなんてここに入って初めてだし、今まで誰にも言えなくて」 「私にできることならいいけど」 #twnovels

2015-02-08 17:21:28
夢乃 @iamdreamers

それでもシンイチは暫く逡巡したあと、ようやく話し出した。 「俺を・・・ここから連れ出してくれないかな」 「え?無理よそれは。田舎ならともかく、ここは厳重に管理されているから。あなた、あっちの扉から入ったんでしょ?」 キリナは自分が入ったのとは別の扉を示した。 #twnovels

2015-02-08 17:22:30
夢乃 @iamdreamers

「そうだけど」 「そうよね。で、ここにあなたが、男が居る間は、あっちの外に続く扉はロックされるのよ。だから、どうしたってあなたを連れ出すことはできない」 「そうか・・・」 「それに、連れ出したら重罪よ。私、一生を刑務所で過ごすことになっちゃうわ」 #twnovels

2015-02-08 17:23:01
夢乃 @iamdreamers

「でも、なんでそんなこと考えたの?」 「だって、高校を卒業して以来、ずっとここで寝てるか女の相手しているかのどっちかだよ?人類の宝が聞いて呆れるよ。体のいい家畜じゃないか。ときどき凍眠から醒めて考えるたび、そう思えてきて」 「それで外も見たくなった、か」 #twnovels

2015-02-08 17:23:20
夢乃 @iamdreamers

「っていうより、自分で自由に生きたいんだよ。こんなところに押し込められて家畜みたいに生きるんじゃなく」 「でも、そうしたら、まず間違いなく人類は滅ぶからね。それに悪いことばかりじゃないでしょ?私を見てよ」 キリナはベッドから立つと、裸体をシンイチの前に晒した。 #twnovels

2015-02-08 17:24:21
夢乃 @iamdreamers

「あなたと同級だったのに、私はもう四十近いのよ?それなのにあなたはまだ二十歳そこそこの若さを保っている。鬱陶しい上司の愚痴も聞く必要ないし。私からしたら、あなたが羨ましいわよ」 #twnovels

2015-08-18 19:28:48
夢乃 @iamdreamers

「それはこんなところに閉じ込められていないから言えるんだよ。俺が知っているのはこの部屋と冷凍睡眠室だけだよ?それ以外は何も知らない。何も見られない。これでも人間って言えるのか? #twnovels

2015-02-08 17:25:06
夢乃 @iamdreamers

「まぁ、そう思うのも無理はないけどねぇ。でも、どっちにしろ、ここから出すのは無理。法律的にも、物理的にも」 また隣に腰を下ろしてキリナは答えた。 「そうか」 暫く沈黙が続いた。 #twnovels

2015-02-08 17:25:36
夢乃 @iamdreamers

「あなたは今、外でどんなことをやっているの?」 唐突にシンイチが聞いてきた。 「ん?私?今はクローニングの研究」 「クローニング?」 #twnovels

2015-02-08 17:26:30
夢乃 @iamdreamers

「そう。男性減少現象については、何も手を打っていないわけじゃない。今あなたが言ったように、男性をセンターに閉じ込めておいていいのか、って議論もあるし。だからいろいろな研究が進められているの。クローニングもその一つ」 #twnovels

2015-02-08 17:27:21
夢乃 @iamdreamers

キリナは続けた。 「男性のクローンを作ることで問題を解決できないか、っていうのがクローニングの研究よ」 「へぇ。それで、それはいつ頃完成しそう?」 「全然先が見えない、って感じ。ラットなんかの小動物だとほぼ完成しているんだけど。寿命が平均の八割程度に縮むけど」 #twnovels

2015-08-18 19:30:58
夢乃 @iamdreamers

「でも、豚とか猿とかにすると、寿命が四~五割くらいにまで縮んじゃうのよ」 「・・・人間なら?」 「それは秘密。・・・って、あなたに秘密にしても仕方ないか。人間だと、だいたい二割ちょっと、ってところ。これだと、全然使えないのよね。成人くらいで寿命がきちゃうから」 #twnovels

2015-08-18 19:32:11
夢乃 @iamdreamers

「まだ目処はたたないんだ」 「そう。・・・あ、もしかして、これができればここから出られるかもとか、期待した?」 「うん、ちょっと」 「まぁ、私が生きているうちは無理かなぁ」 「そうか」 再び沈黙が落ちた。 #twnovels

2015-02-08 17:30:00
夢乃 @iamdreamers

「ねぇ」 沈黙の後、キリナがちょっと甘ったるい声を出した。 「もう1ラウンド、楽しませてくれる? #twnovels

2015-08-18 19:33:45

夢乃 @iamdreamers

男性保存センターを出た後、キリナはホテルまで歩くことにした。いろいろと考えたいことがあった。最後にどうしてあんなことをしたのか、自分でもまだ判らない。それを自覚するのは、もう少し後だった。 #twnovels

2015-02-08 17:31:22
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