熱(前編＋後編)

かおり @orange_shake_

【熱・26】 アホアホ！俺のアホ！ もう彼女の嫌がることはしないって決めたけど、それでも帰ることだけはどうしてもできなくてさっきと同じようにリビングに潜伏する。 はぁ…ごめんなこんな彼氏で… ＊ 「…ぅ、りゅう、」 『…はっ！』

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【熱・27】 いつの間にかうとうとしてて、彼女が俺を呼ぶ声で目を覚ます。 また泣いてるんちゃうかって、反射的に立ち上がる。 「何してんの、風邪ひくよ。」 彼女がいたのは慌てて僕が駆け寄ろうとしたベッドの上じゃなくて、立ち上がった僕の足元。 『あれ…なんで、』

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【熱・28】 「こっちのセリフ。帰ったんじゃなかったの？」 『あ…ごめん。』 顔も見たくなかったやんな。 でも一応彼女の目線に合わせてしゃがんだ僕の両頬を、まだ熱い小さな両手が包む。 「…ごめんね。」 『え？』 何が？ていうか今それは俺のセリフで…

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【熱・29】 「私、自分のことばっかで。余裕なくて、隆ちゃんのこと考えられなくて、」 まだしんどそうに喋るから、その言葉を遮るように抱き上げた。 『俺のことなんかええから、今は自分の身体のことに集中しぃ。そのために帰った…ふりしたんやから。』

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【熱・30】 ベッドに寝かせて布団をかぶせて、ぽんぽんと頭を撫でた。 「ほんとに帰るの？」 『ん、嘘ついてごめんな。』 「…やだ」 ああ、やっぱそうやんな。 あんな最低なことしといて、帰ったと思ったらまだおったとかキモいやんな、 「帰っちゃ、やだ」

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【熱・31】 『………』 えぇー！！ そっち⁉︎ 神様、ええの？ 布団の中から伸びてきた手をそっと握る。 『なぁ。今度は絶対何もせぇへんって誓うから、一緒におってええ？』 彼女は何も言わずに少し奥に寄って、ベッドにスペースを空けた。 ああもう、神様ありがとう。

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【熱・32】 布団の中でぎゅーって抱きしめて、寒くないようにぴったりくっつく。 さっきはあれほど努めても大した仕事してくれなかった僕の理性が、これほどまでに優秀だったとは。 腕の中で眠る彼女は相変わらずけしからん表情で、せめて今夜のオカズに写メを…と思ったけど、やめた。

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【熱・33】 怒られるのが怖いからじゃないで？ どうせなら、熱のせいじゃなくて元気になってから俺の手でこの顔させたいなぁ、なんて♡ 頑張って看病するからな。 だから、元気になったら次は君が頑張ってな？ 【後編も、おしまい】