似た者同士

かおり @orange_shake_

【似た者同士・51】 消えそうな声で、俺にくっつくように距離を詰めてくる。 「このお店にいる間だけ、私と付き合ってることにして。できれば、彼と付き合う前から。」 そう言うと、俺の肩に頭を乗せた。 俺は何も言わずに、彼女の肩を抱いた。

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【似た者同士・52】 大好きな女の子がこんなに近くにいて、体に触れられるのに。 例え一瞬でも嘘でも、喜べよ、俺。 何で、こんなに心が痛いんやろう。 「…不倫だったの。奥さんにバレたからって、最近フられた。」 『えっ、じゃあさっきのが奥さん…？』

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【似た者同士・53】 「そんなわけないでしょ。若すぎるし、奥さんとこんな深夜に居酒屋になんて来ない。」 そこからはもう、聞く必要はない。 微かに震えてる彼女の髪を撫でて、肩を抱く手に力を入れた。 『そろそろ出よか。俺、トイレついでにお会計してくる。』

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【似た者同士・54】 無言で渡されたテーブルの一万円札を手に、トイレに向かう。 するとトイレの前で…さっきの男。 "あ、さっきの…" 『…どうも』 "彼氏さん？" 『ええ、まぁ。』 あんま話しかけんといてくれ。 ボロが出てもマズいし、お前の話なんか聞きたないし。

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【似た者同士・55】 "そっか、こんな彼氏さんいるなら安心だな。彼女、男まさりでなかなか男できなさそうだったから(笑)" お前、あいつの男やったんちゃうんかい。 あれか、不倫やから彼氏やとすら思うてへんかったんか。 色々言いたいことはあったけど、ぐっと拳に力を入れて耐える。

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【似た者同士・56】 『男が寄ってこーへんようにさせてるんです。俺以外、彼女の可愛いとこなんて知らなくてええでしょ♡』 無理して作ったいつもの笑顔。 やけど、この言葉は本心やから。 男まさりでええ。俺にとってだけ、可愛い女の子でおってくれたらそれだけで。

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【似た者同士・57】 "素敵な彼氏さんに想われて幸せだな。じゃ、僕はこれで" 不倫してるってことを除けば、嫌味なほどにええ男。 隠し切れてなかった俺の挑発的な態度に表情一つ変えない、大人の男。 勝ち目ないわ。

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【似た者同士・58】 トイレ行ってお会計して、彼女のとこに戻る。 『お待たせ』 「ごちそうさま、しょーた。」 俺が奢ったわけちゃうのに。 初めて呼ばれる下の名前も、こんな形で呼ばれたかったわけちゃうのに。 モヤモヤして、彼女の手を強めに掴んで店を出た。

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【似た者同士・59】 「ふー、ありがとね。もういいよ。」 彼女が手を離そうとするから、その手に力を入れた。 「ちょっと、安田？」 ちょうど着いたエレベーターに乗り込んで、彼女を壁に押し付ける。 あ、これって。 「ふふっ、壁ドンだ。(笑)」 無邪気に俺を見上げて笑う。

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【似た者同士・60】 『…ええ？』 「ん？何が？」 『わかるやろ。』 好きな子に壁ドンしたら、俺がどうなってまうかなんて。 「…んっ」 我慢できへんって、言ったやんか。

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【似た者同士・60】 頭の中には冷静な俺がおって、これで良かったんやろうか、いや良くないよな、唇離したら何て言ったらええんかな…なんて色んな感情がぐるぐるしてた。 そんなことを考えながらも唇を離すことはできなくて、彼女も動かなくて、目的の階に着いたエレベーターの音で我に返った。

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【似た者同士・61】 『…ごめん。』 なんで謝ったんやろ。 アカンことしたとは思うけど、後悔はしてない。 繋ぎっぱなしの手を引いて、エレベーターを出た。

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【似た者同士・62】 建物の外に出ると、彼女がやっと口を開いた。 「大丈夫？安田、だいぶ酔ってる…」 『大丈夫ちゃう。』 「やっぱり？ちょっとどこかで休んだ方が、」 『酔うてるよ、○○に。』 おいおいおい。何言うてんの俺。 今時こんなん言うのマルぐらいやで。

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【似た者同士・63】 「馬鹿。私にじゃなくて、酒にだよ。ほら早く、」 彼女が俺の手を引くのと逆方向に彼女を引っ張って歩く。 何でここに連れてきたんか自分でもわからんけど。 たどり着いたのは、大きなクリスマスツリーとそれを囲むイルミネーション。 「ここ…」

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【似た者同士・64】 『……』 「…さっき、横山とも来た。」 『え！！』 え？ よこちょ？ ええ？ 「さっきは私が横山連れてきたの。失恋した横山を慰めたくてねー。」 イルミネーションを見てニコニコしてる。 「で、今度は安田が失恋した私を慰めに連れてきてくれたわけだ。」

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【似た者同士・65】 このツリー、失恋ツリーだねなんて言って笑ってる。ちゃうし。 「酔いは？覚めた？」 さっきのキスなんてなかったみたいにそうやって、お姉さんの顔して。 『…覚めた。』 「そっか、良かった。」 『やからもっかい、酔わして。』

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【似た者同士・66】 今度は壁ないから、何の言い訳もせぇへん。 彼女を抱きしめて、キスした。 「…安田？やっぱりまだ、」 『好きやで。』 もう、何も考えんとこう。 どう頑張ったってあの男みたいにかっこよくなんて言われへんし。 やったら、もう俺のまんまでええ。

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【似た者同士・67】 『出会ったときから、ずーっと○○のこと好きやねん。女の子として。 サバサバしてるのにめっちゃ優しくて、男前なのに可愛い年上の女。似た者同士。』 「やすだ…」 『失恋したてなん、わかっとるよ。まだそんな気になれへんってことも、じゅーぶんわかっとる。』

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【似た者同士・68】 『でも、弱ってるところを甘えさせてやれって言ったの○○やからな？』 今日、ぺたんこ靴で来てくれて良かった。 少し低いところにある彼女の頭を胸に押し付けて、顎を乗せる。 『めっちゃ女扱いしてるで、○○のこと。悪いけど、オッサンなんて思ったこと一度もない。』

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【似た者同士・69】 『あと、よこちょのことは言われんでも大事にしてる。』 ほら、俺、完璧やん。 『俺じゃ、あかんかな？』 さっきの大人の男には色々とかなわんけど、一つだけ勝ったと思ってることあるねん。 あいつ、君の可愛さ知らんかった。 ええねん、俺以外知らんでええもん。

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【似た者同士・70】 「…やすだ、ずるい。」 『うん、わかっとる。ずるくてもええから、○○のことが欲しいねんもん。』 君を手に入れるためやったら、何だって。 彼女の腕が俺の背中に回る。 「…横山の言ってた通りになっちゃったなぁ。」 『え？』

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【似た者同士・71】 「今年のイルミネーションが終わるまでに、私が誰かとここに来るって。」 よこちょ…。 「安田、お願いがある。」 『なに？』 「ちょっと、時間欲しい。 安田の気持ちが嬉しいから、私もちゃんとあの人のこと忘れてから安田の気持ちに応えたい。」

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【似た者同士・72】 『ええよ、いくらでも待つ。その代わり、俺からもお願い。』 「何？」 『クリスマスの日、俺にちょうだい。まだ忘れられてなくてもええから、側におらせてほしい。』 「…わかった。」 『あと、そのまんまでおってな。』 「へ？」

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【似た者同士・73】 『他の男に可愛いって思われたない。大酒飲みで、思ったこと何でも言う○○でおって。 俺はそんな○○が可愛いと思ってるし、好き。』 「…安田、やっぱりゲイと大して変わんないね。」 『なんで？こんな可愛い女の子のこと好きやのに。』 「うるさい。やめて。」

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【似た者同士・74】 もう全部、全部大好きやねん。 早く、俺のになってな。 照れて赤くなった彼女の頬をつついて、携帯を取り出す。 "よこちょ、ありがとう。" 【おしまい】