【第四部-序】夢 #見つめる時雨

時雨 龍鳳 山城
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誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…時雨」 「…何?」 声をかけられ、顔を上げると…手に小包みを持った龍鳳の姿があった。とても綺麗にラッピングされたそれは―。 「…受け取ってください」 「…龍鳳…」

2015-02-15 00:40:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…私もね、ひとのこと言えないんだ。…でも、時雨はこの前、言ってくれたよね。もう逃げたりしないって。あの言葉ね、私ずっと考えてたんだ。どういう意味だろうって。…私の解釈が間違ってないなら、私…もう一度…」 龍鳳の瞳に、僕が映る。

2015-02-15 00:45:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…ねぇ、龍鳳はどうして、そんなに僕のことを…」 「…私ね、きっとあの時、マリアナで時雨に助けてもらって、叱られて…その時から、ずっとね…」 龍鳳が、僕の前にその小包みを差し出す。…きっと龍鳳の想いが詰まっている、それを。

2015-02-15 00:50:13
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…一番なんて、そんなことは望まない。時雨の山城さんへの想いは、きっととても大切なものだと思うから。…私ね、時雨の止まり木になりたいの。時雨が寂しくなった時、その寂しさを癒してあげられるような…」

2015-02-15 00:55:13
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…僕は受け取れなかった。だって、あの時はああ言ったけれど、結局山城への想いを引き摺ったままの情けない僕に、これを受け取る資格なんてない。…龍鳳は、いつだって真っ直ぐだった。真っ直ぐ僕を見てくれていた。それに引きかえ、僕は…。

2015-02-15 01:00:20
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…時雨は、私のこと大切な存在だって言ってくれたよね。あれは…嘘だったの?」 「…え? いや、あれは本当だよ。龍鳳は僕にとって…」 「もうっ!」 龍鳳が言葉を遮る。その顔は少し怒っているように見えた。

2015-02-15 01:05:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…理由なんて、それだけで十分だよ。…時雨。龍鳳を、貴女の止まり木にしてください」 龍鳳が僕の手を取って…掌に、その小包を置いた。 「あ…」

2015-02-15 01:10:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…私ね、わかったんだ。時雨にはこれくらい強引じゃないとダメだって。…いいんだよ。山城さんにできないことでも、私にしてくれて。だから、夜中に一人で泣いたりしないで。私が…いつだって隣にいるから…」

2015-02-15 01:15:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…夜中に…。ああ、そうか。あの夢を見ていた時、僕…泣いてたんだ。底知れない孤独の中で、寂しさに飲み込まれそうになって…。 「時雨。貴女の寂しさも、孤独も…全部、龍鳳が受け止めてあげる。だから…」 言葉を途切れさせた龍鳳が顔を伏せる。…その身体は、震えていた。

2015-02-15 01:20:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…ごめんなさい、時雨…。私、そろそろ限界みたい…」 …耳まで真っ赤になった龍鳳が、掌で僕の手を包みながら声を湿らせる。 「時雨…しぐれ…」 小包みを握る僕の指に、彼女の涙が落ちた。

2015-02-15 01:25:13
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…僕は、龍鳳を抱き締めていた。晴れやかな気持ちでなく、雲は濃く、雨が降るような心で。僕にとって、僕たちにとって、前に進むことってこういうことだったのか、それはわからない。きっと、こんな湿ったものは想像してなかったと思う。…けれど、僕は求めてしまった。龍鳳の…温もりを。

2015-02-15 01:30:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…その日の夜はそれ以上の言葉はなかった。ただ僕達が呼吸する音と、身体が擦れ合う音だけが、部屋を満たした。…誰かに身体を預けることがこんなにも心安らぐことだったなんて、ずっと忘れていたような気がする。…とっても、温かい…――

2015-02-15 01:40:13

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とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

山城「…時雨はどう?」 龍鳳「…私を抱き締めてくれました」 山城「そう…」 龍鳳「でも…心の中ではずっと貴女のことを考えていたと思います。…正直、妬けちゃいます。貴女が羨ましい」 山城「そんな…」 龍鳳「すみません、イジワルしちゃいました。…時雨は、任せて下さい」 山城「…ええ」

2015-02-15 14:22:17

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とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督「…艦娘達の活躍によって今まで深海棲艦に奪われていた制海権を順調に取り戻してきています。しかし…戦いを続ければ続けるほど深海棲艦は強力になっていっています。より、艦娘達に近い姿で。…彼女達の核心にぶつかる日が近づいているのかもしれません。その先に…何が待っているのか」

2015-02-15 16:31:49
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督「…強力になっていく深海棲艦の影響なのでしょう、戦闘海域で交戦した艦娘達の身体変調が以前より大きくなっています。…その影響は深刻で、他の鎮守府では深海棲艦と接触した艦娘が精神疾患をきたしたり、交戦の際に目や口から発光する青い液体が流れ出たという報告が増しました」

2015-02-15 16:41:53
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督「…その艦娘達は突発的にそうなったのではなく、少しずつ様子がおかしくなっていったと聞きます。毎晩ある”夢”を見た、との報告もあります。これらは以前から報告があったことではありますが、最近になって報告数が増加していっています」

2015-02-15 16:50:49
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督「…その艦娘は精神が崩壊する寸前にこう言っていたと報告にありました。『私が私でなくなる』。そして『私はひとり…』と。…貴女達がこうなってしまわないように、お互いがお互いを繋ぎ止めてあげられるように、貴女達にお願いしたいことがあります――」

2015-02-15 17:11:53

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とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

扶桑「艦娘の異動があるんですか?」 提督「ええ。少し急な話だけれど」 扶桑「その…誰が」 提督「…安心して、貴女達二人は死守したわ。異動になるのは…このコ達」 扶桑「…そうですか。寂しくなりますね」 提督「そうね…。でも大規模作戦の時にはまた会えるわよ」

2015-02-15 21:55:32
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

扶桑「寮にだいぶ空きができてしまいますね」 提督「そう、それなんだけど」 扶桑「はい?」 提督「寮を改装するわ。今までは艦種ごとに寮をある程度分けていたけれど、ここまで空きができてしまうと意味が薄い。一か所にまとめようと思うの」

2015-02-15 21:59:12
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督「部屋割りはまたいずれ。…この部屋割りは慎重に考えないとね。その時は貴女にも力を貸して欲しいの」 扶桑「…はい、わかっています。私から見える範囲…ということになりますけど」 提督「…十分よ。少なくとも、私よりは見えてるから」

2015-02-15 22:02:46
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

【舞鶴鎮守府所属艦娘】 戦艦:扶桑 山城 金剛 比叡 榛名 霧島 重巡:最上 三隈 鈴谷 熊野 高雄 愛宕 軽巡:由良 夕張 阿賀野 能代 大淀 正規空母:赤城 加賀 翔鶴 瑞鶴 大鳳 雲龍 天城 軽空母:祥鳳 瑞鳳 龍鳳

2015-02-15 22:16:52
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

駆逐艦:白露 時雨 村雨 夕立 春雨 五月雨 涼風     朝潮 荒潮 満潮 朝雲 山雲     磯風 浜風 工作艦:明石 給糧艦:間宮 伊良湖

2015-02-15 22:17:50
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