春雨「由良さんの名前を呟いて…ごめんなさい…ごめんなさいって…」 村雨「…そう」 春雨「でも、私…何もできなくて…このまま夕立姉さんがどうにかなってしまったら…」 村雨「…大丈夫よ、私が何とかするから。夕立のことは、お姉ちゃんに任せて。ね?」 春雨「…はい」
2015-02-16 22:33:33***
提督「トラック諸島で展開された大規模作戦、その際に敵攻略部隊主力と交戦した艦娘で、今現在舞鶴にいるのは…時雨、夕立、磯風、浜風、扶桑、山城、加賀、龍鳳、瑞鳳、祥鳳。支援艦隊も含めればもっと多いけれど、戦闘海域での活動時間が特に長かったのがこのコ達。…さて」
2015-02-16 22:57:57***
「…どうかした?山城」 食堂で温かいお茶を飲みながら溜息をついていると、山城が僕の隣の席に座った。山城は僕の問いかけに答えることなく、手に持っていたお茶碗を自分の口元へと運んだ。漂う覆い香。山城には玉露がよく似合う。
2015-02-20 19:41:25山城の視線が僕の方に流れる。深紅の宝石のような瞳。僕はこれを見るたびに吸い込まれそうになる。今もまた、文字通り目が離せないでいた。…しばらくして、山城が口を開いた。桃色の唇が、言葉を綴る。 「何か言いたそうなのは、あんたの方に見えるけれど」
2015-02-20 19:46:48「え?」 僕は今そんな顔をしているらしい。いや、目…かな。目は口程に物を言う。ああ、僕の目は随分とおしゃべりみたいだ。…イケナイ目。 「…山城にお願いがあるんだ」 「…ん」
2015-02-20 19:51:57「…僕の背中を、押して欲しい」 …山城が大きく息を吐いた。そして、僕は山城の細い人差し指で額を小突かれた。いつものように。
2015-02-20 19:56:45山城が小気味の良い音を立てながらお茶を啜る。そして一息つくと、視線を落とした。 「…あんたをずっと前から一番に想ってくれるあのコを、大切にしてあげなさい。あのコなら、きっと」 …山城の言葉が、ひどく重く感じられた。
2015-02-20 20:02:39「…山城、僕ね、不幸だなんて思ったことは、ないよ。勿論、苦しい思いは沢山した。沢山泣いた。でも…不幸だなんて思ったことは、なかったんだ」 「…強がり言っちゃって」 「…強がりなんかじゃないよ」
2015-02-20 20:06:55「…ごめんね」 ぽつりと、山城が零す。きっと僕に聞かせるつもりはなかったのだろう、とても小さな声だった。僕はその言葉に返事をするべきか悩んだけれど、僕は聞こえなかった振りをすることにした。きっと山城はそれを望んでない。そう思ったから。
2015-02-20 20:10:53「…僕ね、幸せだよ。山城に恋ができて」 「……」 僕は視線を向けたけれど、山城は返してはくれなかった。でも…頭を撫でてくれた。とても優しい手つきで。
2015-02-20 20:14:23…最後に、ぽん、と後頭部を押された。その手に込められた意味を、僕はしっかりと受け取った。 「…背中って言ったのに」 「…大して変わらないでしょ。細かいわね」 「…ふふ」 自然と笑みがこみ上げてきた。…幸せって、こういうことだと、僕は思う。
2015-02-20 20:19:05「…でも」 …山城が呟く。僕は言葉の続きを、静かに待った。 「…あんたがこれからも私達の傍にいていいことは、変わらないからね」 「…うん。ありがとう、山城」
2015-02-20 20:22:15山城が視線をくれた。少しだけ寂しそうに微笑む山城が、とても愛おしかった。再び、僕の頬が緩む。ちょっとだけ、胸の痛みを感じながら。 「…またそんな顔をする」 「…山城だって」
2015-02-20 20:26:49***
龍鳳「…姉妹っていう繋がりは、決して切れない関係。ずっと繋がってる。私はそれが羨ましい。記憶っていう繋がりは形がなくて、いつ消えてしまうかもわからない、とても不確かなものだから」 夕立「龍鳳さんは、時雨の妹になりたいの?」 龍鳳「妹…かぁ。どちらかといえばお姉さんがいいかな…」
2015-02-21 17:49:44夕立「時雨のお姉さんになったら、夕立のお姉さんにもなるね」 龍鳳「え?…ふふ、そうね」 夕立「…龍鳳姉さん、夕立、おなか空いたっぽい」 龍鳳「…まぁ。ふふ、じゃあ何か作りましょうか」 夕立「…」 龍鳳「夕立ちゃん?」 夕立「のってくれると思わなかったから、少し恥ずかしいっぽい…」
2015-02-21 18:03:13***
龍鳳視点
「おかえり、龍鳳。おつかれさま」 遠征から帰投し、お風呂を終えてぽかぽかした気分で部屋に戻ると、もう寝ていると思っていた時雨が私を迎えてくれた。 「まだ起きてたんだ。もしかして…待っててくれてたの?」 「うん」 「…え?冗談のつもりだったんだけど…」
2015-02-28 00:40:37部屋の中央に敷かれた二組の布団。その上で女の子座りをする時雨が、困惑する私を見て微笑む。…時雨は山城さん方から頂いたという浴衣を着ていた。普段三つ編みにしている髪は解かれ、肩にさらりとかかっている。…毎晩感じていた、時雨の色香。今夜はそれが少し増して見えた。
2015-02-28 00:44:05「龍鳳、こっちに来て」 時雨が私に手招きをする。私は少しドキドキしながら、時雨の前に敷かれた布団の上に座った。…時雨の澄んだ海のように青い瞳が私を捉える。綺麗な目…と、浸る余裕はなかった。あまりにも真っ直ぐに、時雨が私を見ていたから。
2015-02-28 00:46:40「…時雨、どうかした?」 普段と少し違う時雨の様子。もしかしてまた悪い夢を見て不安になったのかもしれないとも思ったけれど、そのような印象はない。今はむしろ、私の方が不安かもしれない。時雨の考えていることが、わからない。
2015-02-28 00:49:23