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胡蝶巡りし希いの淵 一日目の現実

個々の現実。向き合う時。
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人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──わたしが、何を選ぶか」 そう呟けば、少しだけ視線を落とす。 「ここを出る。ここを出て、知らぬ薬草や、花……薬のことを、もっと知りたい。  薬を売ってどうこうとかじゃないの。ただ、作りたい。わたしは、わたしのやりたいことの為だけに生きていたい」

2015-02-19 03:34:22
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「人と関わらず、──そうね、森の奥にでも隠遁生活っていうの? 悪くないとすら思うわ」 そうしてから視線を上げ、赫を見やる。 「わたしは、人との関わりを捨てたい。  捨てた先にある自由を得たい。  ……でもきっと、人との関わりを持たなければ、人間(わたし)は死ぬんだわ」

2015-02-19 03:34:25
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「人間って不自由よね、そういうところ」 ──あんたはどう思う、ファルドル。 そう言葉を続ける。 悪魔から見た人間とは如何に愚かしいのか、或いは賢しいのか。 『人でないもの』からの視点が、少しだけ気になったのだ。

2015-02-19 03:34:28
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

* 「――愛おしい、と。心から、そう思っておりますよ」 *

2015-02-19 22:08:52
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

金の髪を柔らかく漉き続けながら、褐色の男は、しずかに、しかし熱っぽく、海色の視線を受け止め嘯いた。 「葛藤。切望。落胆。怒り。恐れ……いずれも、私たちからは縁遠い。だからこそ愛おしいのです。言ってしまえば娯楽。……趣味が悪い、とお思いなりますか、ディアドラ?」

2015-02-19 22:09:06
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

「……いや。貴女なら……」 おそらくそうは思わないだろう、と褐色の男の赫眼は見る。彼女、ディアドラは、飽々しているのだから。

2015-02-19 22:09:16
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

「健全なる知識欲。好奇心。自由と不自由。……そうですね。森の奥で隠遁生活を送れば、そこでは相当な不便が待っているでしょう。食事も勝手に出てはきません。……それを不自由だと、思いますか?」

2015-02-19 22:09:23
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

……だからこそ、問題は選択なのだ、と男は説く。 「これも下準備です、我が黄金。貴女が願いをかたちとし、私と契約を交わせば、それは叶います。私は貴女の生涯を通じ、その願望成就を支えましょう。……願うままに」

2015-02-19 22:09:34
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

髪から手を離したと思いきや、すっと彼女の頬に手を添える。 「貴女は、ヒトでなくなりたいのですか?」 覗き込む――

2015-02-19 22:09:43
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──ふうん」 相槌一つ。触れる事を拒絶しようと思わないのは、相手が人で無いからだろうか。 心地よさすら覚えるのは、相手が悪魔だからだろうか。 「世間一般の感想をわたしに期待しているなら、残念ねとしか言えないけれど」

2015-02-20 00:38:45
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「いいんじゃない? 寧ろ、それでこそ悪魔……ってやつなんじゃないの。悪いとは思わないわ」 海色は逸らされず、ただ赫を真っ直ぐに見やる。 続いた言葉には、少し考える風な仕草をしてみせる。すぐに言葉は出ないが。

2015-02-20 00:38:47
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「やってみなきゃわかんない。やってみたら、なにくそって思うかもしんないけど。  それでも、今、何もやらせてもらえない“今”に比べたら、ずっと──  ずっと、──自由だわ」 触れる手の体温は感じ取れない。自分が麻痺しているのか、そもそも相手の手が冷たいのか。

2015-02-20 00:38:49
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──そう望んで、なれるの?」 上擦ったような声。海色が熱っぽさを持って。 「或いは。自由になりたいと望めど一人は厭だと“人”らしい欲(ワガママ)を吐き捨てるのなら」 「それも、あんたは叶えてくれるの?」

2015-02-20 00:38:52
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

彼女ならば、そう返すだろう、という男の予期は外れなく。 煮えたぎる海の奥底から、挑戦の意思、その眼差しは揺るぎなく。 瑞々しい頬の上を、触れるか振れないかほど、柔らかく滑る。

2015-02-20 01:31:21
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

「ある意味では――」唇を釣り上げる。「ヒトでなくなる道が」ある。褐色の男は、存在し得る可能性しか叶えることができない。しかし―― 「叶えましょう。貴女が、代償を約束するならば」

2015-02-20 01:31:32
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

ディアドラは意思した。そして、健全なる知恵がある。まったく不可能の案件ではない。よって確率はゼロではなく――褐色の男にとって、それは1と等しいことだ。褐色の男の介添えがあるかぎり、奇跡と思える連続により、ディアドラの願いは成就するだろう。 ――賽は投げられる。

2015-02-20 01:31:42
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

……突如、閉ざされた部屋の窓辺が、朝日を取り戻す。扉の外からは何やら物音がする。清々しい朝の空気は何処かへと去り、昼の時間が訪れようとしていた。 「――契約なき状態では、この程度か」褐色の男は口惜しそうに呟くとディアドラから身を離し、寝台から立ち上がる。

2015-02-20 01:32:56
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

「ハンカチは差し上げます。今の貴女に、とても相応しい」 猫の意匠が刻まれたそれをちらと見やり、寝台に腰掛ける彼女に向けて跪く。 「朝靄が去ろうとしています。私の黄金……」 ディアドラの手を取り、甲に恭しく口づけ……ようとして、ふっと止め、

2015-02-20 01:33:22
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

立ち上がると同時に彼女の手を引く。耳にそっと口付けて、 「今は、ここまでです。また、夢で」 他の方の話を聞くのも良いでしょう―― 「ご指名、お待ちしております」 出会ったときのように、優雅に一礼した。

2015-02-20 01:34:25
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「──あんたが望むものを差し出しましょう?」 頬を滑る指先。 互い違いに伸ばす手。 指先が褐色を撫ぜる。 「人生(すべて)をくれてやっても構わないわ」 「──それほどまでに、わたしは、自由が欲しい」

2015-02-20 01:59:54
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「……だから、わたしはまだ、あんたの黄金じゃ──」 無意識に口にした『まだ』という言葉に気付く事無く。 「──ひぁ?!」 手を引かれてしまえば、気を抜いていた少女の身体は傾ぐしかなく。 耳を掠めた唇に僅か、頬を染めれば小さく声を上げた。

2015-02-20 01:59:56
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「~っあにすんのよ! ばか悪魔!」 それに羞恥心を感じる少女らしさはあったらしい。 どこか気障ったらしい悪魔の行動に、ここで初めて、“大きく”表情が揺らいだ。 つんと澄ましたようなものでなく。それは、年相応の表情で。

2015-02-20 01:59:59
人間《ディアドラ》 @actSkbz

「っ、ふー……」 首を振る。深呼吸を繰り返す。 「そうね、また夜、他の悪魔とか、白いのとかと、集まるのよね」 思案するような素振り。 「あんたにも選ぶ権利があるんだもんね」 付け足すように、呟いた。

2015-02-20 02:00:01
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

* 「――やはり、貴女は、可愛らしい」 耳元で低く囁く。いかにも愉快げに。そのまま朝靄と共に立ち去ろうとして、名残惜しいのか。褐色の男は、半身だけ翻す。

2015-02-20 21:32:54
悪魔《ファルドル》 @DemonFabelwesen

「――選ぶ権利――ええ。私にも、ございます。――私が求めるのは、身を焦がすほどの強き願い――」片側の赫眼は、ちらと海色を垣間見る。 彼女は否定し、男は繰り返す。 「ディアドラ。我が黄金。私は、貴女が欲しい」 そっと目を逸し、虚空を見上げる。

2015-02-20 21:33:19
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