鈴木亘氏の「日本の医療・福祉は"過保護"」という主張はウソばかり

鈴木亘・学習院大教授が『「社会保障で成長」が画餅である理由 ~規制と公費投入が、過剰需要を作る』 http://bit.ly/g2300x で主張した、日本の医療・福祉の"過保護"ぶりを、欧州在住の福祉研究者 @dojin_tw 氏が事実と違うことばかりと批判。
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安藤道人 (Michihito Ando) @michihito_ando

鈴木亘氏、最近「啓蒙」モードのためか言動がどんどん非学術的になっている。鈴木亘『「社会保障で成長」が画餅である理由 ~規制と公費投入が、過剰需要を作る』(http://bit.ly/g2300x)。以下いくつ気になった点を列挙。

2010-12-13 09:30:36
安藤道人 (Michihito Ando) @michihito_ando

1.『日本の医療は利用者からすると異常に安い。老人が1割負担、なんていう国はないですよ!』とあるが、ヨーロッパやカナダなど一般医(GP)によるゲートキーパー機能と引き換えに、自己負担が無料あるいは小額という国は多い。そして鈴木氏がそれを知らないはずはない。

2010-12-13 09:35:42
安藤道人 (Michihito Ando) @michihito_ando

私はスウェーデンでGPによるゲートキーパー機能の不便さ・不安さを体験しているので日本での「GP+ゲートキーパー導入と引き換えに自己負担引き下げ」の全面導入は困難と思っているが、少なくともそこに言及せずに「こんな異常に安い国はない!」というのは事実と反する。

2010-12-13 09:38:45
安藤道人 (Michihito Ando) @michihito_ando

2.『高額療養費制度というのがあって、1カ月に払う上限の金額が決まっている。パケット通信し放題。モラルハザードを起こし放題』とあるが一般の所得層の高額療養費での自己負担上限はだいたい「同月内に同一医療機関に支払った自己負担額」が80,100円なのでパケ放題とはレベルが違う。

2010-12-13 09:43:51
安藤道人 (Michihito Ando) @michihito_ando

そもそも医療経済学での「モラルハザード」の定義は、単に自己負担が少なくなると価格弾力性に応じて医療サービス需要を増やすという(普通の)消費者行動を指すもので、公的医療保険は国民の医療ニーズを所得に関係なく保障するということでこの「モラルハザード」を制度的に奨励している。

2010-12-13 09:49:09
安藤道人 (Michihito Ando) @michihito_ando

もちろんこれらは全て鈴木氏も当然知っていると断言できるし、確かにインタビューでもこれに反することを述べているわけではない。それに個別の論点や問題意識については勉強させられることが多い。

2010-12-13 10:03:16
安藤道人 (Michihito Ando) @michihito_ando

ただし根本的な現状判断や価値基準が異なる。それは仕方ないので政策論としてはそこらへんを明示した上で妥協点を探るのが大事だと思う。しかしこのインタビューでは、対立する論点を声高な物言いで乗り越えようとする意図を感じてしまう。せっかく豊富な学術的蓄積もある分野なのに、もったいない。

2010-12-13 10:14:03