「トリックとは何か」思索過程の備忘ツイート(「ミステリとは何か」補論)

トリックとは何かを思いつくままに。「ミステリとは何か」の方も併読いただければ幸い。 「ミステリとは何か」思索過程の備忘ツイート http://togetter.com/li/395780 続きを読む
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じねん @jinensai

(トリ1)さて、トリックについて少し考えていた。歳がバレるが少年時代に読んだ雑誌にはなぜか探偵に挑戦企画があって、ネタバレ全開の推理クイズが載っていたものだ。解答や解決編が後ろの頁にあったり、次の号に掲載されたりとなかなか趣向自体は楽しかった。ネタバレを除けばだが。(続

2015-02-21 22:47:07
じねん @jinensai

(トリ2)背景を考えると紹介者の前提として乱歩のトリック集成・分類が王道と捉えられていたのかなと思う。乱歩が水先案内で御墨付きの発行者であり、判断基準は紹介者や出版社には希薄だった感がある。「~殺人事件」で書店の棚が埋まったのは、結局指標たる乱歩亡き後の混迷の帰結に思える。(続

2015-02-21 22:49:41
じねん @jinensai

(トリ3)探偵行為は犯人のトリックを暴くことにあり、その展開される舞台として殺人事件が重宝されたが、ここからなぜか反転現象が起きる。舞台設定のはずの「人死に」の有無が指標へ遷移したのだ。トリックはその使用で人が死ねばOKなので、ロジックそっちのけで当然荒唐無稽化する。(続

2015-02-21 22:50:32
じねん @jinensai

(トリ4)都筑道夫の憂鬱は「トリック」から「人死に」への指標遷移に逆らっていた自覚からではないか。「古い革ぶくろに新しい酒」を盛るには論理のアクロバットを必要とする。「トリック無用」論は人が死ねば良いだけのトリックなら「無用」だが、本来は「必要」だという屈折した表明に思える。(続

2015-02-21 22:54:08
じねん @jinensai

(トリ5)「人死に」にも論理がなければ、やはり荒唐無稽だろう。「動機」重視は必然である。ここで気づくのは、いずれの指標も荒唐無稽化を避けていることだ。想定できる理由としては、私が再三「ミステリとは何か」を考察する際に取り沙汰している「双方向性」と「互換性」が挙げられる。(続

2015-02-21 22:55:17
じねん @jinensai

(トリ6)作者は読者であり探偵は犯人である。それまでの文学が彼我に引いていた一線はそこには無い。作り手と受け手は同一平面上で切り結んでいる。ゆえに作品内の事物・情報はどちらからも「さわれる」必要がある。凶器の質感など彼我で共有できなければ「犯人あて」は無意味になってしまう。(続

2015-02-21 22:57:12
じねん @jinensai

(トリ7)巧みなスキルで同じものと見せかけつつ違うものだったことで「驚き」を引き出す叙述もアリだし、設定が彼我で共有できるなら異世界だって展開可能だろう。フェア・プレイやリアリティーが求められるのも、共有してる質感・情報が異なると「驚き」のギャップがかえって小さくなるからだ。(続

2015-02-21 22:57:45
じねん @jinensai

(トリ8)つまり彼我でさわれるものの代表格が「トリック」なのではないか。作中の時刻表からアリバイの穴に気づくこともできるし、明かされる物理トリックは重力の方程式に則っており、化学反応は実験通りに推移する。実行しようと思えば読んだ人間がトリックを現実世界で再現することもできる。(続

2015-02-21 23:00:01
じねん @jinensai

(トリ9)今日この共有には従来のミステリ群の豊富なデータも蓄積されている。新本格のある種「楽屋落ち」感は「トリック」から「人死に」への遷移が「(いわゆる)ミステリ」ならこうだよねという彼我の了解へ移行したともとれる。その「ミステリとは何か」が積み残されているのが実は問題なのだが。

2015-02-21 23:00:42