ホンモノ、ニセモノ

りえこ @eighter_rieko83

１ ◇◇ わたしの初恋相手はアイドルになった。 有名になる前から変わらず、ずっと好きやった。 わたしのそんな気持ちを、彼はずっと気付かへんで、恋愛相談してきたり、アホば話ばっかりで、全然オンナとしては見てくれんかった。 それが、どういうわけか再会した今付き合ってて…。

りえこ @eighter_rieko83

２ ◇◇ 大倉「もー起きるーん？」 まだ眠そうな声で、そう言って、起きようとするわたしの身体を抱きしめて離さない彼。 ◇◇「仕事だし、朝ごはん 食べるやろ？」 大倉「今日はいらん… まだ一緒に寝てたい…。」

りえこ @eighter_rieko83

３ ◇◇ ◇◇「何言うてんの。忠義も 仕事やろ？」 大倉「まだ早いて…。」 そう言いながら、服の中に手を入れてくる彼。 ◇◇「な！何してんねん！///」 大倉「きのうのじゃ足りんもん…。」 寝ぼけた身体には強い、その刺激。

りえこ @eighter_rieko83

４ ◇◇ 大倉「おまえ…身体は正直やん。」 くすりと笑った彼の身体も、正直に反応しているようで。 キスされながら、横からいきなり押し入ってきた。 大倉「あんま触ってへんのに…、 全然大丈夫やったな(笑)」 時間ないのに…。 でも…抗えない…。

りえこ @eighter_rieko83

５ ◇◇ 知らんかった…朝って、こんなに敏感なんや、わたし…。 まだ起ききれてない彼の身体…動きは緩いけど、両手で…唇で…同時に的確な場所を刺激するから、一気に昇らされる………。 結局時間ギリギリなって、バタバタと出勤するハメに。 大倉「遅刻したらあかんでぇ♪」

りえこ @eighter_rieko83

６ ◇◇ わたしより時間に余裕がある彼。 ◇◇「誰のせいでバタバタしてる 思てんねん！アホ！」 大好きな彼の笑い声を背中で聞きながら家を飛び出し、なんとかいつもの電車に滑り込む。 荒れた呼吸が落ち着いて、ふと電車の中を何気なく見渡す。

りえこ @eighter_rieko83

７ ◇◇ あ、先輩や…。 会社の先輩…元カレ…。 背が高いから、こんな人だらけの電車の中やのに、見つけてしまう。 ずっと忠義が好きやったけど、叶うはずないて思ってた。 忠義はアイドルになったけど、わたしは普通のOL。 住む世界すら全く違うところへ行ってしまった。

りえこ @eighter_rieko83

８ ◇◇ 大阪支店から東京本社に異動になって、出会った先輩は、どことなく…忠義に似てて。 背が高くて、髪がクセ毛で、ふんわりと優しい笑顔。 標準語が物足りなかったけど、それでもだんだんと好きになっていった。 先輩はかっこいいから、やっぱりモテた。

りえこ @eighter_rieko83

９ ◇◇ でも、 どうしても忠義と比べてしまうわたしは“先輩ぐらいが現実”やって、先輩に憧れる女子に非難されるようなこと思っとった。 だから罰が当たったんかな？ 彼が隣の部署の後輩と浮気しとった。 いや…途中からはわたしの方が浮気相手やったんかな…。

りえこ @eighter_rieko83

１０ ◇◇ 彼女もわたしらが付き合うてること知ってたはずやのに…ね。 そんな元カレと後輩は…どうやら最近うまくいってへんらしくて、また先輩狙いの女子が騒いどる…。 まぁ、今更どうでもいいんだけどね…わたしは“ホンモノ”の忠義とうまくいってるわけやし。

りえこ @eighter_rieko83

１１ ◇◇ 先輩「おはよう。」 ◇◇「おはようございます。」 電車を降りると、先輩の方から声をかけてきた。 同じ会社へ向かうわけやから？同じ会社の社員なんやから？当然といえば当然のただの挨拶なわけで。 でも、まだ会社じゃないんだし、挨拶なんかしてこんでえぇのに…なんて。

りえこ @eighter_rieko83

１２ ◇◇ 先輩「なっ、久しぶりに 食事でもどう？」 は？なんなんコイツ。 ◇◇「もっと親しい後輩 いてますでしょ？」 先輩「ふっ、関西弁、なんか 懐かしいな。」 なんじゃ、それ。

りえこ @eighter_rieko83

１３ ◇◇ 前を向いたまま、返事せず、ただ歩く。 先輩「あのさ…相談あるんだよね。」 聞いてくれそうな子いっぱいおるやん。 先輩「ちょっとでいいからさ、 時間作ってくれないかな？」 なんで裏切った“ニセモノ”の為にわざわざ。

りえこ @eighter_rieko83

１４ ◇◇ 会社はもうすぐそこ…。 ◇◇「お先に失礼します。」 先輩の隣を小走りで離れて、閉まりそうなエレベーターに乗り込んだ。 ただちょっとだけ並んで歩いてただけやのに、ただ前付き合っていただけやのに、それだけでちょっと居合わせた女子の視線が痛い気がする。

りえこ @eighter_rieko83

１５ ◇◇ 仕事中、何度か視線を感じて見ると、先輩が何か言いたげに見てたりしたけど、全部無視したって、仕事が終わると誰よりも早く会社を出た。 家に帰ると、なんだか無性に忠義に会いたくなった。 今朝会ったばかりやのに。 『まだ仕事中？』 LINEは既読にならない。

りえこ @eighter_rieko83

１６ ◇◇ 諦めて夕食たべて、お風呂に入った。 お風呂あがって、もう一度LINEを確認したけど、まだ既読になってない。 小さな溜息をした時、チャイムが鳴った。 時計を見ると、21時を回ったとこ。 遅すぎることはないかもだけど、こんな時間に訪ねてくる人って…。

りえこ @eighter_rieko83

１７ ◇◇ 忠義は合鍵使っていつも勝手に入ってくるし、それにLINEの返事もないのに…。 玄関へ近付くと、聞き覚えのある声が聞こえた。 先輩や…。 先輩「◇◇？開けてくれよ！」 なんか酔ってる…？ ◇◇「何しに来たんですか？」 先輩「いいから、ちょっと開けろって。」

りえこ @eighter_rieko83

１８ ◇◇ いつもより声が大きい先輩…。 ご近所が気になって、つい玄関を開けた。 雪崩込むように部屋に入ってきた先輩は、ソファーへ一直線で、我が物顔で座った。 まるで今でも付き合ってるみたいに…。 ネクタイを緩めながら「喉渇いた」って…ほんまになんなん…。

りえこ @eighter_rieko83

１９ ◇◇ ◇◇「これ飲んで、さっさと 帰ってくださいね。」 ミネラルウォーターを手渡す。 小さな声で感謝の言葉を言ってゴクゴクとそれを飲んだ。 先輩「…俺、ちゃんと謝って なかったよな…ごめん…。」 何を今更。

りえこ @eighter_rieko83

２０ ◇◇ でも別に怒ってるわけでもない。 もうどうでもいい…どうでもよくなった。 先輩「オトコできた？」 ◇◇「…はい。」 誰？とか聞かれたら言いにくい相手、ですが。 ま、言っても信じんやろうけど。 先輩「ホントに？」 は？疑ってるわけ？ ◇◇「ホンマです。」

りえこ @eighter_rieko83

２１ ◇◇ 先輩「俺、やり直したいと、 思ってるんだけど…。」 ◇◇「はっ？！」 思わず声が出た。 先輩「やっぱり俺、◇◇じゃないと ダメだって気付いたんだ。」 あんなことしといて、よくそんなん言えるなぁ…？

りえこ @eighter_rieko83

２２ ◇◇ 先輩「後悔してるんだ。許してくれ るなら、俺何でもするし。」 ◇◇「先輩、酔ってますね？あまり 強ないのに。やから酔って ちょっとおかしなこと、」 先輩「酔ってねぇよ。」

りえこ @eighter_rieko83

２３ ◇◇ ◇◇「・・・・っ、」 ううん、酔ってる。 先輩のこんな顔、初めて見た。 いつもふわふわと優しい笑顔やのに…、今の先輩は、ちょっと…コワイ…。 そう思った時、サッと距離を縮めて両肩をガッと掴まれた。 先輩「ホントにオトコいんの？」 ◇◇「・・・・、」

りえこ @eighter_rieko83

２４ ◇◇ どうしよう、コワイ…。 コワくて、“いる”という答えが正解なのかもわからない…。 先輩「…好きだ、付き合って？」 ゆっくり、横に首を振った。 先輩「…なんで？」 一瞬優しくなった顔がまたコワイ顔になる。 でも、ちゃんと言わんと…。 ◇◇「か、カレシ…、」

りえこ @eighter_rieko83

２５ ◇◇ 言いかけた時、勢いよく身体が倒された。 先輩が覆いかぶさってくる。 先輩「嘘つくなって。」 そして、荒々しく唇を重ねられた。 ◇◇「っん！…やっ！！」 思いっきり先輩の身体を押し退けようとするけど、ダメや…かなわん…！ どうしよ…助けて！忠義っ！