徒手空拳のピケティ氏

プレジデント誌が悪乗りとしか思えない記事を書いた。ピケティ氏の主張を逆手に取り、「資本家側になるにはどうしたらよいか」という特集。こんな面の皮の厚い特集を組めるのは、ピケティ氏が徒手空拳であることに一つの原因がある。
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shinshinohara @ShinShinohara

3月号のプレジデント誌はひどい。ピケティ氏の「格差を縮小すべき」という主張を無視し、「もはや格差拡大は必然、ならば勝ち組である資本家(r)になるにはどうしたらよいか」という特集。なんともふてぶてしい。 president.co.jp/pre/new/index/

2015-02-25 17:43:14
shinshinohara @ShinShinohara

しかしこのことは重要なことを意味する。ピケティ氏がどれだけ格差縮小を主張しても手の打ちようがないだろ、と資本家がタカをくくっているということだ。権力は俺たちが握っている、ロボットが労働を代替する。庶民には力もないし不要なのだ、と。 president.co.jp/pre/new/index/

2015-02-25 17:45:56
shinshinohara @ShinShinohara

こんな言葉を聞いたことがある。「人類は増えすぎた。地球環境を考えれば、人口は大幅に減るべき。生き残るのは我々資本家だけでよい。力もない貧乏人が死ぬのはやむを得ない。ピケティのいう格差縮小なんて愚論。我々資本家が巻き添えを食う必要はない」president.co.jp/pre/new/index/

2015-02-25 17:49:30
shinshinohara @ShinShinohara

確かに、庶民が資本家に対して訴える方法はあまり残されていない。民主主義政治なのだから政治家を選べるはずなのだが、うまく世論誘導されて金持ちから税を取る話になかなかならない。「俺たち海外に逃げるよ。いいの?」という恫喝に屈する。 president.co.jp/pre/new/index/

2015-02-25 17:51:56
shinshinohara @ShinShinohara

かつては資本家たちを震え上がらせた労働組合も怖くない。昔はストを打てば工場や鉱山は停止に追い込まれ、資本家を困らせることができた。今はIT化が進み、人が要らなくなっている。ストを打てば「ちょうどいい。みんな辞めて」と言われてしまう。 president.co.jp/pre/new/index/

2015-02-25 17:53:41
shinshinohara @ShinShinohara

今後はロボット化も進む。アマゾンのリモコンヘリによる宅配のように、運送業も人が要らなくなる。アマゾンに投資する資本家はそうした「新技術」で儲かるが、庶民はそれによって仕事を失う。そしてわずかな賃金の仕事を奪い合い、資本家の垂らすトリクルダウン(おこぼれ)で生きるしかなくなる。

2015-02-25 17:56:15
shinshinohara @ShinShinohara

お金持ちは次のようにいう。「産業革命のときも雇用を奪ったとして工場の機械の打ちこわしなどが起きた。しかし雇用を奪うというのは誤解であった。実際、現代社会を見ればほとんどの人が雇用できているじゃないか。IT化でも新しい雇用が生まれるから大丈夫だよ」と。本当にそうだろうか?

2015-02-25 17:57:50
shinshinohara @ShinShinohara

実際には違う。工業技術が発展した現代社会で雇用が守られたのは、「マルクス主義への恐怖」があったからだ。マルクス主義が登場する以前、工場で働く人々は低い賃金、長時間労働などひどい労働環境に甘んじざるを得なかった。しかしマルクスの唱える共産主義が広がって、資本家を恐怖に陥れた。

2015-02-25 18:00:53
shinshinohara @ShinShinohara

第2次大戦後、マルクス主義国であるソ連の存在感は絶大で、悪くすると西欧や日本まで共産主義が広がる恐れがあった。そうなればアメリカにまで波及しかねない。アメリカは必死になって西欧と日本をマルクス主義の防波堤にすべく、あらゆる支援の手を打った。その一つが「格差是正」だ。

2015-02-25 18:03:13
shinshinohara @ShinShinohara

マルクス主義のお株を奪って、資本主義社会でも(格差ゼロとは言わないが)国民全員が豊かさを享受できるよう、西欧や日本の戦後復興を支援した。アメリカでも格差是正を積極的に行い、黒人差別なども是正した。その結果、格差縮小と経済発展の両方を手にできた資本主義社会ができあがった。

2015-02-25 18:05:28
shinshinohara @ShinShinohara

話がややこしいのはここからである。格差縮小と豊かさの両方を享受した自由主義社会を、ソ連は憧れの目を向けた。硬直的になりすぎたソ連社会は崩壊。それと同時に、「マルクス主義への恐怖」は拭い去られた。「我々資本家の金を奪おうとするイデオロギーは自ら死んでいった」と。

2015-02-25 18:07:39
shinshinohara @ShinShinohara

ソ連をはじめとする共産主義社会が機能不全を起こす前後に、サッチャーやレーガンが自由主義経済で一応の成功を収めた。成功したと同時にソ連が崩壊したため、「自由主義経済の勝利」と解釈された。「能力のあるものが大金を握る、競争社会こそが社会を発展させる」という「イデオロギー」が再生した。

2015-02-25 18:09:23
shinshinohara @ShinShinohara

しばらくはマルクス主義の復活を恐れて、資本家も沈黙を守っていた。しかし90年代後半に入ると、もはやマルクス主義を恐れる必要はない、という気分に至ったらしい。「今までが悪平等すぎた。能力あるものが大金をつかめる社会にして、より発展させるべきだ」という主張が力を得るようになった。

2015-02-25 18:11:34
shinshinohara @ShinShinohara

昨今はさらに論理のねじれが発生し始めている。「能力のあるものが大金をつかめる社会」から、「大金をつかめた俺は能力があるからだ」という解釈へとねじれた。単に権力やお金のにおいがするところに近づく狡さを持っていただけなのに、それを「能力」だと誤解する話になってきた。

2015-02-25 18:15:13
shinshinohara @ShinShinohara

今後はその「勘違い」がますますひどくなっていくだろう。働きもせず、お金でお金を買い、お金を増殖させる金融で稼ぐことの何が悪い、派遣社員ばかり雇って社長の自分が大金をつかんで何が悪い、だって「俺の能力が高いから給料が高いんだよ」という、転倒した誤解が増えていくことだろう。

2015-02-25 18:19:13
shinshinohara @ShinShinohara

こうした人物は、権力にすりよるのがうまい。たとえ政策が国民の大部分を不幸にするものであっても、「その政策ならこっちの方向に手を打てば、濡れ手に粟で儲かるな」と考える。しかもその思考を「時代の先を読む能力が俺にあったからもうかったのだ」と勘違いする。誰が不幸になろうと頓着しない。

2015-02-25 18:21:55
shinshinohara @ShinShinohara

日本で進行中の現象は、まさにそれ。日本はこれまで「世界一成功した社会主義国」と言われほど格差が小さい社会を形成した。だが今、政策を誘導している連中は「まだまだ悪平等、もっと俺たちが儲かる社会に」と考えている。それがプレジデントの記事。president.co.jp/pre/new/index/

2015-02-25 18:24:51
shinshinohara @ShinShinohara

ストは役に立たない。労働組合は新しい産業を生み出すのにあまりにも無関心、というイメージが社会に根付いてしまっている以上、有効な対抗手段を労働組合が打つことは難しかろう。ピケティ氏が格差縮小のための政策を主張しても、その主張を実現する手段が日本にない。南無三。

2015-02-25 18:27:01