【腐向け】根の国底の国の図書館【チカナリ】

妄想がおとぎ話みたいになっていったツイートのまとめ。 BSRチカナリ。
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さじった🐙 @Bio_sagitta

孤独の底じゃなくて、知識の底、溜まり場みたいなとこに閉じ込められてる毛利さんもいいな。縦に深い円筒場の本棚に囲まれた空間みたいなとこで、永遠に増え続ける知識。世の中の全ての書物が自動的に保管される根の国の図書館。

2014-06-26 21:27:49
さじった🐙 @Bio_sagitta

無限に増え続ける本を読んでいく毛利。ある日一冊の絵本が目に留まる。読み進めて行くと、それは自分と長曾我部の物語だった。著者を見ると長曾我部元親の名前。発行された日付を確認して、何百年も経っていることに気付く。転生した長曾我部がどうしてこんな本を書いたのかが気になる毛利。

2014-06-26 21:31:42
さじった🐙 @Bio_sagitta

@Bio_sagitta けれど図書館からは出られない。心の隅のとどめ置きながらも、また他の本を手に取り、読みふける日々。そしてまた長曾我部の絵本が毛利の手に。読み進めていくとやはり毛利と長曾我部のお話。そんな風に、時々瀬戸内の二人を描いた絵本が図書館にやってくる。

2014-06-26 21:35:07
さじった🐙 @Bio_sagitta

絵本は全て繋がっていた。やがて毛利は気付く。これは後悔の物語だと。長曾我部が、自分を殺したことを悔やんでいる。それを知った毛利は、長曾我部に会いたいと強く想うようになる。そして、それが出来ないという現実を前に、初めて後悔する。

2014-06-26 21:39:11
さじった🐙 @Bio_sagitta

頬を伝うものが、涙だと気付くのに時間がかかる。数百年ぶりに流す涙。暖かいそれが、毛利の肌に蓄積されていた記憶を引っ張りだす。触れられた武骨な手。「あんたもそんな顔ができるんじゃねえか」という、言葉と一緒に。けれどそれを振り払った時の感触も覚えている。

2014-06-26 21:42:55
さじった🐙 @Bio_sagitta

あのとき伸ばされた手に縋りたい。初めて気付いた己の心を慰めるように、絵本を抱きしめて眠った。それからしばらくして、また長曾我部の絵本がやってきた。ぺらりと捲ると「この物語をあんたに…」と書いてある。ずっと続いていた物語の結末の絵本。

2014-06-26 21:48:55
さじった🐙 @Bio_sagitta

そこには、溢れんばかりに愛が綴られていた。長曾我部から、毛利への燃えるような恋心、燃やしつくしてしまいそうな愛憎、燃え尽きたと見せかけて、くすぶっていた愛慾。そして、会いたいという真実。長曾我部と自分の心が同じだと知り、愛しい気持ちが押さえられなくなる。

2014-06-26 21:57:52
さじった🐙 @Bio_sagitta

螺旋状にそびえる図書館をかけのぼる毛利。どんなに走っても、頭上はまっくらで、出口が見えない。ここは世界の知識が無限に降り積もる図書館。走っても走っても、本棚から逃げられない。それでもずっと走り続ける。手には、最後の絵本。長曾我部の愛が詰まった、毛利へと捧げられた物語。

2014-06-26 22:02:27
さじった🐙 @Bio_sagitta

どれくらい走っただろうか。既に底も見えなくなってしまった。本が蓄積される早さが毛利の歩みよりも圧倒的に早い。迫りくる後悔と、積み上がる智の結晶。絶対的な絶望に、毛利は座り込む。手にした本を捲る。最後のページには、たくさんの「会いたい」という言葉。それを指でなぞって、読みあげる。

2014-06-26 22:08:17
さじった🐙 @Bio_sagitta

@Bio_sagitta 「会いたい…会いたい…会いたい、長曾我部に会いたい…」何時のまにか、自分の言葉になっていた。会いたい。初めて口にした自分自身の願い。それが叶わない初恋なのだと知って、毛利は泣きながら本に突っ伏した。

2014-06-26 22:12:53
さじった🐙 @Bio_sagitta

その時、急に体がぐらりと傾いた。まるで穴にでも落ちた時のよう感覚。本棚の螺旋通路から落ちたのかと、頭を庇うように手を伸ばす。するとその手がぐいっと引っ張られ、瞼越しに眩しい光を感じた。驚いて目を開けたが、薄暗い図書館に慣れきった毛利は目がくらんでしまう。

2014-06-26 22:17:12
さじった🐙 @Bio_sagitta

「…毛利?」真っ白な光の中で、困惑する毛利に声が降り注いだ。記憶の中で、なんども自分の名を読んだ男の声。まだ目の見えぬ毛利は、声のする方へ手を伸ばす。「長曾我部…?」伸ばした手が、武骨な掌に包まれた。徐々に視界に色が飛び込んでくる。色鮮やかな世界の真ん中に、待ち望んだ男がいる。

2014-06-26 22:24:29
さじった🐙 @Bio_sagitta

「長曾我部!」記憶の中とは違い、見知らぬ衣服に身を包んではいるが、たしかに長曾我部だった。呆然とする毛利を、長曾我部はぐいと引き寄せた。昔とかわらぬ、強引さで。「会いたかった…!」抱きしめられ、耳元でささやかれる言葉。

2014-06-26 22:33:19
さじった🐙 @Bio_sagitta

それは毛利の願いそのもの。「我も、会いたかった…」ニンフのエコーのように、何度も何度も繰り返した。

2014-06-26 22:40:07
さじった🐙 @Bio_sagitta

「俺の絵本から出てくるなんて、反則だらけのあんたらしい」抱擁を解き、長曾我部は毛利は見つめる「あんた昔のままだな、その大袖懐かしいぜ。兜はどうした?」矢継ぎ早に質問を浴びせられ、毛利は戸惑う。「ああ、悪ぃ。焦っちまった」銀色の頭を掻きながら立ち上がる。

2014-06-26 22:44:10
さじった🐙 @Bio_sagitta

「これからは毎日一緒なのにな」言われた意味がわからず、毛利は長曾我部を見あげた。その視線に答えるように、すっと差しのべられた手。毛利は過去に振り払ったその手を、ぎゅっと握りしめた。おしまい

2014-06-26 22:56:54