メニイ・タイド・リビングデッド・アンド・ア・コンクリート・グラッジ #3

ぬいぬいギアソリッドという意見も聞こえましたが、どちらかというとぬいぬいハザードです
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劉度 @arther456

ガゴォン!敵の腕はコンクリートをやすやすと貫き、コンクリート壁が崩れた。アサルトライフルに動じないことと言い、まともな人間ではない。今の装備では対処不可能と判断した不知火は、踵を返して駆け出した。ナンバーロック式のドアを閉めて出口に向かって全力疾走する。 22

2015-03-02 22:14:23
劉度 @arther456

ガゴォン!出口まであと一息、という所で前の壁が砕かれ、中から黒コートが現れた。不知火を見据えた黒コートは、重戦車のごとく突進する!突き進む敵に対し不知火はライフルの引き金を引いた。狙いはコートの男ではなく、天井の照明!廊下の明かりが消え、二人の視界を闇が包む! 23

2015-03-02 22:17:42
劉度 @arther456

怪物じみた黒コートも、目で物を見ていたようだ。突進を止め、一瞬その場でたじろぐ。その隙に向け、不知火はもう一度引き金を引いた。撃つのはライフル弾ではない。銃身下部に取り付けた、40mmグレネード弾。無防備な黒コートの胴体にグレネード弾が突き刺さり、爆発! 24

2015-03-02 22:21:06
劉度 @arther456

「ガァァァァッ!」身の毛もよだつ咆哮が、爆発音に負けじと響いた。グレネード弾を受けても死なないのか。戦慄しながらも不知火は走る。暗闇と爆音で眼と耳の利かない黒コートの脇をすり抜け、出口への階段を駆け上がる!「五十鈴さん!」コンテナから飛び出し叫んだ。 25

2015-03-02 22:24:16
劉度 @arther456

「どうしたの!?」トラックに寄りかかっていた五十鈴が跳ね起きた。「話は後です!すぐにトラックを……」不知火の足元が、揺れた。「何?」五十鈴も振動を感じ取ったようだ。とっさに、不知火はその場から飛び退く。次の瞬間、さっきまで不知火の立っていた地面が陥没した。 26

2015-03-02 22:27:42
劉度 @arther456

「なになになに!?」粉塵が舞う大穴の縁に、手がかかった。黒コートの男が、地下からよじ登ってくる。グレネードの直撃を受け、今の崩落にも巻き込まれたはずなのに、相手は無傷。それどころが、どこから取り出したのか右手に地対空ミサイル・スティンガーを抱えていた。 27

2015-03-02 22:30:52
劉度 @arther456

「シュウウウ……」目出し帽の向こうの口から、威嚇的な吐息が聞こえてきた。不知火は身を屈め、いつでもその場から飛び出せるようにする。黒コートは不知火を睨みながら、ゆっくりと、しかし確実にスティンガーの弾を込めていく。その時! 28

2015-03-02 22:34:04
劉度 @arther456

ギャオオオオン!力強いエンジン音が、黒コートの男の横から突進してきた!「バカね!轢いてくれってこと!?」五十鈴の4本ワイパー装甲カーゴトラックのエントリーだ!黒コートはトラックに気付くも、回避は間に合わない!ボンネットに片手を叩きつける! 29

2015-03-02 22:37:33
劉度 @arther456

地面の土をかかとで掻き上げながら、黒コートはトラックの突進に対して踏ん張る!右手のスティンガーをも投げ捨て、両手で五十鈴のトラックのパワーに抗う!すると、トラックのスピードが緩くなった。「嘘ぉ!?」自慢のトラックが抑えこまれ、悲鳴を上げる五十鈴。 30

2015-03-02 22:40:46
劉度 @arther456

「そのまま耐えて下さい!」運転席の外を、不知火が駆ける。ライフルを捨て、抜き放ったのは愛用のナイフ。トラックを押さえるため、ガラ空きになった黒コートの脇から、心臓に向けて刃を突き出す!ぞぶり、と肉を切り裂く感触が不知火の手に伝わる。確実に急所を貫いた。 31

2015-03-02 22:43:59
劉度 @arther456

その時、不知火と黒コートの男の目が合った。目出し帽から覗く瞳は白く濁り、生気を宿していなかった。この時初めて、不知火は己の間違いを悟った。コンクリートを砕き、爆発を物ともせず、トラックを止めるような怪物が、心臓にナイフを突き刺したぐらいで止まるはずがなかったのだ。 32

2015-03-02 22:47:15
劉度 @arther456

「ARRRGGHHH!!」怪物が絶叫し、トラックが横倒しにされた。トラックが倒れた衝撃で、不知火は吹き飛ばされる!「きゃああああっ!?」五十鈴の悲鳴が響く。不知火が起き上がると、怪物は心臓に刺さったナイフを引き抜き、投げ捨てるところだった。 33

2015-03-02 22:50:30
劉度 @arther456

怪物はゆっくりと歩いてくる。武器はもうない。逃げる手段も、隠れる場所もない。そもそもあと20分程で、この島は地下の爆弾によって吹き飛ぶ。ここまでか。唇を噛みしめる不知火。だが、怪物は歩みを止めた。「……?」不思議そうに、海の方を見ている。 34

2015-03-02 22:53:45
劉度 @arther456

何をする気だ、と思う間もなく怪物は海に向かって走り出した。そのまま高く跳躍。海に飛び込む、かと思いきや怪物は海の上に着地した。艦娘なのか、と思ったのは不知火の勘違いだ。怪物は巨大な潜水艦の甲板の上に立っていた。怪物が乗り込むのも待たず、潜水艦は潜行を始める。 35

2015-03-02 22:56:59
劉度 @arther456

急いでいる理由はすぐに分かった。聞き慣れた艦載機のプロペラ音が響いてきたからだ。いつの間にか夜は明けて、深海艦載機の姿は見えなくなっていた。「よう、まだ生きてるか?」振り返ると、知らない艦娘が立っていた。「貴方は?」「大湊第一艦隊、瑞鶴だ」 36

2015-03-02 23:00:16
劉度 @arther456

「大湊第一艦隊!?」トラックから這い出てきた五十鈴が空を指差した。「じゃあ、あれが不死身の妖精空軍なの!?」艦娘の航空機は妖精さんの乗り込んだ式神であるのが現在では一般的だ。だが、それを初めて実戦運用したのが、大湊第一艦隊の基となった妖精空軍なのだ。 37

2015-03-02 23:03:31
劉度 @arther456

瑞鶴はサイドテールを揺らして首を振った。「そんなに大したもんじゃない。不死身の軍団ってのは、戦場に長く居た奴の過信だ」海のほうで幾つか水柱が上がった。航空隊が、例の潜水艦に攻撃しているようだ。「おいおい。提督、あの潜水艦は敵でいいのか?」 38

2015-03-02 23:06:45
劉度 @arther456

『雪風が敵だと言っている』瑞鶴の通信機から漏れた声は、冷静にそう言っていた。見れば、潜水艦に対して爆雷を投げつける艦娘がいる。「それならしょうがないか。俺も加勢しよう」瑞鶴が弓を構えて海上に出ようとする。「待って下さい!」だが、不知火がそれを止めた。 39

2015-03-02 23:10:03
劉度 @arther456

「どうした?」「申し訳ありません。言い忘れていましたが、この島はあと15分で爆発します」「嘘ォ!?」「いきなり何を言い出すんだお前は」「本当です。地下に正体不明の施設があって、そこに時限爆弾が仕掛けられています」瑞鶴と五十鈴は顔を見合わせる。嘘を付いている顔ではない。 40

2015-03-02 23:13:17
劉度 @arther456

「嘘だったら元帥に土下座しろよ?」「土下座?」「掴まれ!とりあえず指揮艦まで送り届ける!」言うやいなや、瑞鶴は二人を抱えて海に向かって駆け出した。例の潜水艦は黒コートの男を乗せたまま、既に海上からは見えないところにまで深く潜ってしまっていた。 41

2015-03-02 23:16:31
劉度 @arther456

「うおあああああ!?」空母棲姫の悲鳴が朝の海に響き渡った。去年の秋からマリアナを探し続けて、トラック泊地でボコボコにされ敗走していた空母棲姫は、今度はあろうことか味方から追撃を受けていた。それも何の冗談か、自分自身からである。 43

2015-03-02 23:19:59
劉度 @arther456

「ワレ空母棲姫!ワレ空母棲姫!……駄目だ、やっぱり反応しなーい!」先程から何度も通信を送っているが、空母棲鬼の反応はない。「聞こえてんのか!味方だよ!生きてんのかお前ー!」返事は新型戦闘機の雷撃。「オアー!?」空母棲姫は這いつくばるように旋回して回避する。 44

2015-03-02 23:23:15
劉度 @arther456

「もうやだ……自分殺しナンデ?水鬼に付いてけばよかった……私もブラジル行く……」思えば、このマリアナについた時からおかしかった。パラオ方面に進出した敵の裏をかく作戦だったのに、待ち伏せを受けるどころが、敵は既に別の深海棲艦部隊と一戦を交えた後だったのだ。 45

2015-03-02 23:26:37
劉度 @arther456

もちろん空母棲姫には、自分が道に迷って3ヶ月遅れでトラック泊地に来てしまったことなど知る由もない。だがそれを差し引いても、深海棲艦が深海棲艦を攻撃することなどありえなかった。まさか人類は、自分たちを操る技術を手に入れたのか。そんな恐ろしい考えが頭をよぎる。 46

2015-03-02 23:30:13