「 そうで無いのなら、 僕達が───少なくとも 僕が存在する意味も無い 」 ザァ──── と。 夢の終わりを間近に控えて、 蛇から 髪の淵から 薄れ行きて
2015-03-07 20:24:59「なら、そういう『神』も世界にはいるのでしょう。世界が数多ある様に。その形もきっと、多くある。私の世界には神が成した『史実』は存在しないわ。神は人の心が作り出す幻影でしかない。所詮、創世神話の中の存在」 手にすり寄る蛇を撫でるように。絡みつくのであれば好きにさせ。
2015-03-07 20:43:58「でも、そうね。私からしたら不思議でならないわ。さっきの神話も、事実なのでしょう? それなら、どうして竜は途中からなのかしら。あなたの世界の人間が、餌の為に生かされているというのなら」 不思議そうに首を傾げて。 「どうして神は、最初から世界を『餌として』作らなかったのかしら?」
2015-03-07 20:44:44「ごめんなさいね。勝手に、思ったことを言っただけだから気にしないでちょうだい」 そうして、薄れゆく銀の色を見る。 「もう、目覚めが近いのね」
2015-03-07 20:44:49「あなたと話せてよかったわ。もう会う事もないでしょうけど。この夢を、私はきっと忘れない」 セレナへ。皆へ向けて。 「願いが叶うといいわね」
2015-03-07 20:44:54ふむ、と眉間にしわを寄せて動く指先を見ながら思案。 「一つ目の、お金以外というのは具体的に何だ。腕だとか足だとか、魂だとか、そういった類のものか? 差し出せる範囲でなら差し出そう。私に無理なものならば――仕方がない、好きにしてくれて構わない」
2015-03-07 21:33:16「二つ目だが」 ううん、と首をひねる。 身近な人間、というのが思い当たらない。ので。 すっと、赤い悪魔を指差す。 「トリトマ、お前が構わないのならば、お前がなってくれると有難い」 「お前が私の環境《せかい》を変えるんだ。どうせ根は残る」
2015-03-07 21:33:43「消えてしまうというのなら、近くはない。疎遠という程遠い位置ではなく、私の中で感謝せねばならない位置になる」 どうだろうか、と首をかしげる。 消えるといった事象に対しては、深く追求はせず。 彼女自身が選んだ選択ならば干渉はしないとだけ思う。
2015-03-07 21:37:38それから今度は白雪の子に視線を向ける。 「私は、見えないものは信じないだけだ。それに別に悪魔を信じている訳ではない。目の前に実際にいるこいつ達が自分を悪魔だと言っていることを信用しただけだ」 「神が同じように出てきたらその存在は同じく、否定はせんよ」
2015-03-07 21:37:51「ただ、信仰という意味では私の世界でも神はいるのだろう。あれは高度なものを信じ、それを正しいと思い、寄り掛かり許しを得るために作ったものだと私は思っている」 「だからもし、人を都合よく配置しただけならそれは、信仰すべき対象ではなく――邪神だと。私はそう思ってしまうかもしれん」
2015-03-07 21:38:01予想しなかった答えではない。それでも一泊、返す言葉が遅れた。 「……私に仮初めの親愛を抱きたいだなんて、ひどい人ね」 茶化すような軽い調子。べつに、非難したり、軽蔑するわけじゃない。 「寿命をいただくわ。私に足りない分、あなたの時間を使わせてもらうってこと」
2015-03-07 21:49:36「私に留まることを望むだけ、あなたの命が短くなる。折角調える環境(せかい)を楽しみたいなら、なるべく早めに済ませたほうがいいわよ」 絨毯の上では、靴音は鳴らない。一歩だけ近くへ寄って、手を差し出す。 「それで、構わないのなら、叶えて差し上げましょう」 間もなく、最後の夢は醒める。
2015-03-07 21:49:40振り返ることはしない。振り返っても、私にはもう、見えないだろう。宴の席も、切な想いも、胸の痛みも。 「――左様なら」 見えないままに、別れを告げる。
2015-03-07 21:55:49「寿命か、了承した。かまわんよ。納得のいく形を手に入れる方がいい」 頷き、了承を。 酷いと言われれば肩をすくめる。 「他に、思い当たる相手もいなかったんだ。すまんな」 そうして、差し出された手を取る。
2015-03-07 21:59:43