ミンストレル・ショーとアメリカのユダヤ人

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直立演人 @royterek

「…公民権活動に没頭したユダヤ人の多くが、ユダヤ人としての出自に由来した衝動に基づいて活動していたとすれば、彼らがそのような目に見える形でアフリカ系アメリカ人を支援できたのは、実のところ、彼らがユダヤ世界と距離をとっていたためだった」

2015-03-10 23:13:22
直立演人 @royterek

「ユダヤ人公民権運動家のこの同化傾向の高い集団と並び、ユダヤ人共同体に大きな愛着をもちながらもアフリカ系アメリカ人への気遣いと共感を自由に表現できた者達もいたが、それは、彼らの富や特殊な職業的環境ないしはラディカルな思想のおかげで、非ユダヤ人の承認を勝ち取る心配がなかったためだ」

2015-03-10 23:25:43
直立演人 @royterek

「…ユダヤ系の労働運動指導者のラディカリズムも彼らを独立させ、多くの非ユダヤ系労働組合の人種的因習を無視させた。彼らが多くの非ユダヤ系労働運動指導者より黒人の窮状に心を痛めたのはそのユダヤ性故かもしれぬが、他の同化ユダヤ人よりも容易にアメリカ基準に抵抗させたのはその社会主義故だ」

2015-03-10 23:44:14
直立演人 @royterek

「…1920年代と1930年代にアフリカ系アメリカ人を擁護した指導的なユダヤ人の中にはラビたちもいた。というのも、彼らもまた、そういった態度(sentiment)に反発したかもしれない非ユダヤ人からの直接的な圧力をほとんど感じなかったからである」

2015-03-10 23:48:38
直立演人 @royterek

「たとえば、シカゴのシナイ・テンプルのラビ・E・G・ヒルシュは、1919年のシカゴでの人種的暴動をポーランドのポグロムと比較して憚らなかった。彼の会衆はそのような類推を敬遠したかもしれないが」

2015-03-10 23:52:57
直立演人 @royterek

「…ただし、同時期の大抵のユダヤ人が、社会的受容のための闘争で直面した絶えざる圧力故にこうした立場を一貫してとれなかったことは指摘しておかなければならない。むしろ、彼らは往々にして、黒人への共感とアメリカの白人社会に完全に受け入れられるための切望との間で引き裂かれ続けたのである」

2015-03-11 00:01:04
直立演人 @royterek

「1920年代と30年代におけるアフリカ系アメリカ人との連帯(identification)の最も断固たる発言がイディッシュ語でなされたのは不思議ではない。ユダヤ人作家達は、非ユダヤ人大衆にはわからない独自の言語で、深く感情移入した黒人との連帯意識を表現することができたのである」

2015-03-11 00:17:18
直立演人 @royterek

「…(映画『ジャズ・シンガー』で)ジョルソンの役ジャック・ロビン(本名ジャッキー・ラビノーヴィッツ)が偏狭なユダヤ世界を去って黒塗りで"Mammy"(黒人の子守女)ソングを歌う歌手になる場面から、人種が、同化圧力とユダヤ的過去への忠誠との彼の闘争における中心的要素として浮上する」

2015-03-11 00:35:18
直立演人 @royterek

「ジョルソンの黒塗りの場面は当時の人種差別的ステレオタイプを採用してはいるが、そうした場面は、同化しつつあるユダヤ人のアフリカ系アメリカ人への力強い感情移入(emotional identification)をも示唆している」

2015-03-11 00:39:07
直立演人 @royterek

「黒塗り芸人になることは、ジャック・ロビンを自身のユダヤ人「ゲットー」からアメリカの白人ショービジネス界へと駆り立てる行為だが、「ユダヤ的」感情――伝統的な父との確執への痛みのような――を表現するために黒い仮面を利用する彼の才能は、彼のミンストレル芸に二重の効用を与えるのである」

2015-03-11 00:49:53
直立演人 @royterek

「『ジャズ・シンガー』のこの読解は、ユダヤ人として表現するのが居心地が悪いと感じていた感情を表現する一手段としてユダヤ人芸人たちが黒塗りをしばしば利用したのだという作家ロナルド・サンダースの主張を裏づけるように見える。」

2015-03-11 01:09:16
直立演人 @royterek

「この筋書きによれば、黒塗りの利用は芸人のユダヤ性を曖昧にし、きついステレオタイプの利用を通じて、聴衆の注目を白人と黒人の分離(divide)に集めさせたということになる」

2015-03-11 01:13:21
直立演人 @royterek

「しかし黒塗りは同時に、「憧れの賞賛」(longing admiration)とサンダースが呼ぶものと芸の人種差別的要素とを(恐る恐るであるとはいえ)結びつけることによって、アフリカ系アメリカ人の主体(subject)をユダヤ人の表現のための代理として利用可能ならしめたのである」

2015-03-11 01:25:26
直立演人 @royterek

「アフリカ系アメリカ人のステレオタイプを利用したユダヤ人の多くが、受け入れられたいと願えば願うほどユダヤ的「タイプ」を練り上げて自らを表現することがいよいよ難しいと感じたため、そのキャリアをユダヤ系「人種」コメディアンから始めて、黒人ネタ(material)に頼った点は重要だ」

2015-03-11 01:41:28
直立演人 @royterek

「彼らは黒塗りによってこうしたジレンマから増大した相克する感情に対処することができたのである」

2015-03-11 01:45:27
直立演人 @royterek

ユダヤ人が黒人に「なりすます」ことをめぐる問題については、フィリップ・ロスの『人間の傷』("The Human Stain")とそれに基づいた映画『白いカラス』(ロバート・ベントン監督、アンソニー・ホプキンス主演)がある。cinematopics.com/cinema/works/o…

2015-03-09 03:16:50
直立演人 @royterek

アメリカにおける黒人とユダヤ人の関係については、ミンガスに関する次の逸話が示唆的だ。サイドマンだった若き日のミンガスは、白人のバンドにも黒人のバンドにもなかなか入れてもらえなかった。そこで自分をメキシコ人だと称したらあるバンドに入れてもらえた。それはユダヤ人のバンドだったという。

2015-03-09 14:48:47
直立演人 @royterek

黒人や白人性に対するユダヤ人社会のこうした両極のスタンスとともにアンビバレントな態度は、やはりドイツ系と東欧・ロシア系の移民が多かった南アでも同様に見られた現象だったはず。ユダヤ人の中には、当然アパルトヘイトに荷担した者もいただろうが、それと闘った活動家はそれ以上に突出していた。

2015-03-09 14:17:51