伊谷純一郎の聴いた「アフリカの声」

日本の生態人類学の泰斗であり、アフリカに長年通い続けた故・伊谷純一郎。氏の著作より印象的な部分を引用してつぶやいたのをまとめてみました。
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①伊谷純一郎『トゥルカナの自然誌―呵責なき人びと』(雄山閣)より

座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

虫の声。伊谷純一郎がアフリカの夜に聞いたと云う謎の声のことを、ふと思い出す。「トゥルカナの自然誌〜呵責なき人びと」(1980年・雄山閣)に記述があった。

2014-08-28 01:18:10
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

「シェラフを頭からかぶって、もう一寝入りしようと思っていると、非常に低く規則正しい二拍子のリズムが聞こえてきた。じっと耳をすましていると、そのきわめて単調なリズムは、波のうねりのように高揚し、そしてまた次第に調子を下げてゆき、ついにはまるで地鳴りのように低い響きになる。」

2014-08-28 01:24:06
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

「それは、ターコ、ターコ、ターコ、ターコと繰り返される声だった。私にはそれが、ある一人の男のリードに従う、非常に多くの人びとの合唱にちがいないと思った。」「あたかも波がこの原野に打ち寄せ、また引いてゆく音に似ていた。」

2014-08-28 01:28:52
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

「それは、人間のだれもが持っているもの、サーヴェイジというものがだれもの心の奥底にひそんでいるものだとするならば、いま聞こえてくるこの斉唱は、それを蘇らせ、それをかき立てるような声だと私は思った。」

2014-08-28 01:37:17
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

「私は、昨日もこのすぐ近くの薮にころがっていた砂にさらされた人間の白骨のことを思い出していた。それと、昨日の午後出あったあのノーブルなトゥルカナのイメージが交叉し、いったいサーヴェイジとは何なのか、これから私たちが調査しようとしているトゥルカナとはいったい何ものなのかと自問した」

2014-08-28 01:41:59
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

・・・伊谷が夜の砂漠で聞き、人の声と思い、イマジネーションを掻き立てられたこの声の持ち主は、雨の夜にしか鳴かぬ丸っこいカエル達だったと云う。伊谷純一郎「トゥルカナの自然誌〜呵責なき人びと」(1980年・雄山閣)より。

2014-08-28 01:51:03
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

いつの日か俺も、夜のシェラフの中「サーヴェイジ」を蘇らせかき立てるコーラスを聴いてみたい、などと詮無き事を深夜に思う。

2014-08-28 01:58:00

②「人類発祥の地を求めて-最後のアフリカ行」より

座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

7月新刊の伊谷純一郎「人類発祥の地を求めて〜最後のアフリカ行」(岩波現代全書)を入手し読んでいる。簡潔で的確な描写とリズムに富んだ伊谷の文章、好きだった。「ゴリラとピグミーの森」「チンパンジーの原野」「大旱魃〜トゥルカナ日記」など読み耽った日々が懐かしく甦る。(続)

2014-08-15 00:19:52
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)伊谷純一郎「人類発祥の地を求めて〜最後のアフリカ行」(岩波現代全書)。死の直前の99年、放送大学のビデオ撮影の為に伊谷は長年通い続けたアフリカに再び渡る。その紀行と思索の記録。2001年に伊谷は亡くなり原稿は未完のまま残されたが子息の原一氏が原稿を読み解き増補した。(続)

2014-08-15 00:50:21
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)伊谷純一郎「人類発祥の地を求めて」。ビデオやヘリによる駆け足の撮影行が主であり現地の人達との交流は少ない。代わりに植生への言及が多数。伊谷の目的はアフリカの植生史を読み解くことであり、それは彼が最後に解こうとしていた謎=人類発生の場の環境を探ることに直結していた。(続)

2014-08-15 01:09:36
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)伊谷著より。「私はこの旅で、ただ一つのプリンシパルをきめていた。かつてともに苦労を分かちあって生活をともにした人々とは会わず、そっと避けて通りすぎたい。」「かつてお互いに、何も遮ることのない灼熱の原野の中で、たくましく生きた人たちの黄昏の姿を見ようとは思わない。」(続)

2014-08-15 01:32:47
座散乱木 [zazaragi] @zazaragi

(承前)しかし伊谷は燃料補給で降り立ったタンザニアの町で、ヘリを囲む群衆の中に、かつて共に旅をした男によく似た男を見つけ呼び止めてしまう。勿論別人だった。「死んだはずのイサが、こんなところにいようはずはなかったのだ。だが、それほどよく似ていた。」冷静な記述にふと交じる過去の幻影。

2014-08-15 01:35:59

※「トゥルカナの自然誌 呵責なき人びと」は「伊谷純一郎著作集 第5巻 遊牧社会の自然誌」(2009年・平凡社)にも収録されている。「人類発祥の地を求めて」(2014年・岩波書店)は新刊として購入可能。(2015年現在)