オフィス青

オフィスと続編
2
全∞ @all_zen_bu

オフィス青① 経理部の先輩。入社試験受けた時から、ずっと気になってたヒト。 配属部署がちゃうくて、まともに話し出来るようになったのはつい最近。 俺が営業へ異動になってから。 毎日ある営業の伝票を経理部に持っていく。 「髪切りました?」「ネイル可愛いですね。」「飯行きませんか?」

2014-07-22 06:44:48
全∞ @all_zen_bu

オフィス青② 伝票を持っていく度、さりげなく口説き続けてる。 付き合いの長い彼氏と、結婚まで秒読みって、そう噂を聞いたあとも。 だってアカンもん。アタックもしてへんのに、諦めきらん。それじゃ引き下がれんわ。 迷惑でも、無理って分かってても、もう少し悪あがきさせて…。

2014-07-22 06:44:55
全∞ @all_zen_bu

オフィス青③ 先輩はすごく優しいヒト。困った顔で笑って、首を横に振るばかり。 彼氏や同僚には絶対相談しないタイプ。 迷惑や心配、掛けたくないし…何より自分の気持ちが揺るがないって、自信あんねやろな。彼氏は幸せや。 でも、そこを分かっても、俺も「どうにかしたい」ねん。

2014-07-22 06:45:01
全∞ @all_zen_bu

オフィス青④ ある日俺は経理部に駆け込んだ。 「先輩、ちょっとええですか?」 「安田さんどうしました?」 「あの、先月の領収書ってどこにあるんですか?」 「月末に締めて、もう倉庫ですけど…」 「実は書損と間違えてもうて…」 「ホントですか?…月末に月計出して確認しましたけど…」

2014-07-22 06:45:10
全∞ @all_zen_bu

オフィス青⑤ 「ホンマにすいません。上司には説明して許可取ってるんで、差し替えだけさせてもらえます??立ち会ってもろて。」 「…分かりました。私ももう一度計算しなきゃだし、鍵貰ってきますね。」 鍵を取ってきた彼女と倉庫へ行き、棚を探す。 「今年度のは手前にあるから、多分この辺…」

2014-07-22 06:45:14
全∞ @all_zen_bu

オフィス青⑥ 「あ、ありまし…っ…」 彼女が振り向くか振り向かないかのところで、伝票の綴りごと手を握った。 彼女の表情が一瞬で固まって、みるみる変わる。 構わず一気に距離を縮めた。 身長がほとんど同じくらいだから、鼻先が触れ合うほど近づく。 「やすだ、さん…」

2014-07-22 06:45:19
全∞ @all_zen_bu

オフィス青⑦ 「油断、し過ぎ。隙、見せ過ぎ。」 「え、と…伝票…」 視線は外さずに、後ずさりながらも伝票を渡そうとする彼女。 「無防備過ぎやないですか、先輩?もっと警戒しとかな…」 「あの、私…」 目の奥に焦りが見える。 「俺、まだ何も言うてへんし、言われても無い。」

2014-07-22 06:45:24
全∞ @all_zen_bu

オフィス青⑧ 俺は今まで、わざと彼女に決定的な「断り」を言わせへんかった。 彼女の優しさにつけこんで。 ズルくてゴメンな。 『自分が断らなかったから』 だからこうなったって、彼女の逃げ道を塞いで責め立てる。 もう一歩前に踏み込むと、彼女の背中が棚にぶつかった。

2014-07-22 06:45:30
全∞ @all_zen_bu

オフィス青⑨ 今にも泣き出しそうな彼女。 そっちが先輩やのに俺に敬語使って、遠回しに距離置いてたのも、そんなん知らんふり。 言われてへんもん。 嫌だとも、駄目だとも、彼氏がいるとも。 あんたが悪いねんで?ちゃんと言うてくれへんから。 勘違いすんねん。

2014-07-22 06:45:35
全∞ @all_zen_bu

オフィス青⑩ 「男はみんな狼だって、彼氏教えてくれへんかった??」 彼女は黙って首を縦に振った。 いつもとは反対に。 「ほんなら俺が教えますわ。」 言うたら、 観念したみたいに、彼女がぎゅっと目を閉じた。 end.

2014-07-22 06:45:40
全∞ @all_zen_bu

続青⑪ 目をつむった彼女を腕の中でぎゅっと抱きしめてから、身体を離した。 「嘘です。ごめんなさい…。」 彼女がゆっくり顔を上げた。 怯えたような目で俺を見て… 「困らせて、ホンマにすいません。どうしても好きやって伝えたくて…。どうかしてました。」 手を下ろすと彼女が俯いてた。

2014-07-31 18:13:10
全∞ @all_zen_bu

続青⑫ 表情を見せないで伝票を押し付けるように渡し、倉庫から出ていく。 耳とうなじが、赤く見えた。 そのあと、口説くのはやめた。 経理に行くと、変わらず対応してくれるのは彼女やけど。別の女子社員に話しかけることも多くなって。 何か言いたげな彼女の視線も、気のせいって思い込んだ。

2014-07-31 18:13:14
全∞ @all_zen_bu

続青⑬ 噂が耳に入ったのは1ヶ月くらい経ったころ。 そんな時、先輩が先月の旅費の精算を忘れたと言い出して。 強引に頼まれた俺は仕方なく経理部に行く。 彼女しかおらんくて…言いづらいけど呼び掛けた。 「あの、コレ先輩が忘れてて…まだ間に合いますか?」 「あ、はい……大丈夫です…。」

2014-07-31 18:13:18
全∞ @all_zen_bu

続青⑭ 「先月の請求書が必要なので、倉庫に行ってきます。」 「あ…待ってた方が…?」 「あの…立ち会いが必要なんです。付き合って下さい。」 一瞬頭をよぎった事を、打ち消すようにすぐ頷いた。 倉庫に入ると彼女が上の方にある保管ケースに手を伸ばす。 「取りましょか?」

2014-07-31 18:13:22
全∞ @all_zen_bu

続青⑮ 振り返りもせずに「大丈夫」と返された。 でも、背伸びした彼女が最後にやっぱりバランスを崩す。 思わず支えると、腕の中で小さく固まった。 「……わざと??」 耳元で囁くと彼女は黙りこむ。ひとつ息をついて、 「安田さん、意地悪。」 「なんで?」 「全部分かってるくせに。」

2014-07-31 22:42:43
全∞ @all_zen_bu

続青⑯ 「別れたの知ってて、来てるくせに。」 (そうなるように、俺がしたんやもん) 下向いてた顔を覗き込んだら、ちょっと怒った顔してて。 「なんでそんなカオしとるん?」 「ズルいしイジワルだから。」 「嫌い?」 睨む彼女。 「言うてよ。」 「……」 「聞かせて?」 「……」

2014-07-31 22:45:48
全∞ @all_zen_bu

続青⑰ 彼女が黙ってキスしてきた。 言葉にしないのは、最後の抵抗?? そんなとこまで可愛くて。 「やっと捕まえた。」 そのキスに、応える。 「安田さん、怖いですね。」 「…そう?」 半分冗談、半分本気。 欲しいものは手に入れたいタイプ。 そのかわり、大事にするで? end.

2014-07-31 22:47:12