ミイラレ!:幼馴染と蛇神のこと♯2(原文のみ)
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『来るぞ』「わかってる!」朽縄御前の言葉に怜が答える。途端、反物が急停止した。その鼻先を、頭上から降ってきた怪異が掠めていく。続いて反物が急旋回。紙一重で上昇してきた怪異を回避!「四季、大丈夫?酔ってない?」「な、なんとか」顔を上げ、彼はそれだけ答えた。22 #4215tk
2015-03-20 20:33:07「……しつこい。迎撃するよ」「えっ、ちょっと!」四季の制止に構うことなく、怜は左腕を大きく振り上げた。腕から赤帯が解け、急降下せんとしていた怪異めがけて飛んでいく!怪異が回避するより早く、赤帯はその体に巻きつき、締め上げ始めた。怪異が苦悶する。23 #4215tk
2015-03-20 20:36:06「よし。どうかな、御前さま」『問題ない。あの程度の怪異なら縛り付けておけるの』怜と朽縄御前の言葉を聞きながら、四季はもがく怪異を眺めていた。翼を封じられたわけではないので、落下することはないだろう。余程きつく縛り上げられたか、こちらを追う余裕はなさそうだ。24 #4215tk
2015-03-20 20:39:05不意に動き始めた反物に、四季は危うくバランスを崩しかけた。先ほどではないものの、かなりの速度で反物が飛行を再開する。ぐんぐん引き離されていく怪異を、四季は尚も見続けていた。見続けて……異常に気づく。怪異の形が崩れ、赤帯の隙間から零れ落ち始めている。25 #4215tk
2015-03-20 20:42:09「ねえ、怜」「どうかした?」「後ろの怪異の様子が」その言葉に怜が怪訝な顔で振り向く。その頃には、怪異は原型を失い、砂状となって落下を始めていた。怪異の塵は四季たちと同じ高度で不自然に停止。どんどんと降り積もり、先ほどと同じ翼腕の人型を取る。26 #4215tk
2015-03-20 20:45:06「伏せて!」怜の声。咄嗟に身を沈めたその上を、怪異の翼が撫でていく。身を起こし、振り向いたその先には怪異の姿。こちらへと向き直り、進路を塞ぐようにその場で羽ばたいている。その段階になって、ようやく怪異の全貌を見ることができた。27 #4215tk
2015-03-20 20:48:08腕だけを除くなら、ほとんど人間と変わらない体格。燕尾服を身に纏い、シルクハットを被っている。その顔はうかがい知れない。夕日の中であるにも関わらず、不自然な影がかかっているからだ。両腕から伸びるのは、体全体を覆わんほどに巨大な黒い翼。28 #4215tk
2015-03-20 20:51:08後方から舞い戻ってきた赤帯が怜の左腕に巻きつく。彼女は朽縄御前とともに怪異と対峙した。燕尾服の怪異が言葉を発する様子はない。退魔師と怪異の間に緊迫した空気が流れる。どちらかが動けば、戦いが始まる。四季にさえそうわかる空気が。29 #4215tk
2015-03-20 20:54:15