「新型うつ」とはなんだろうか。NHKのドキュメンタリーが取り上げたのを皮切りに、雑誌などが特集し、本も出ている。しかし実は、医学的にはっきりとした概念ではない。「新型うつ」について語られているのは、「仕事だとやる気がなくて出来ないが、休暇だと元気。
2015-03-22 19:28:05休暇中に海外旅行に行ったりする」「わがまま。自己中心的に見える」といった特徴だ。そして「急増している」「若者に多い」と語られ、その原因や理由として、よく「現代の個性尊重の教育、風潮」「若者の規範意識の低下」があげられる。
2015-03-22 19:28:19しかし最後の原因や理由は、漠然とした印象に基づいた素人論議に過ぎず、別に統計的なデータや、科学的分析に基づいているわけではない。うつ病にかかる人の性格としてよく上げられる、「真面目」「思いつめやすい」「規範意識が強く、頑張りすぎてしまう」
2015-03-22 19:28:35しかしそもそも本当に、増えたのだろうか。昔は精神病と言ったら特殊な病気という偏見が強く、うつ病の人でもなかなか病院にかからず、悪化させていたとされる。
2015-03-22 19:29:23精神医療への抵抗感を和らげるため、精神科医やマスコミが「うつ病はおかしな病気ではありません。病院にかかるように」と発信した結果、うつ病患者が「増加」した。そして「うつ病ではないか」「うつ病だと思う」という人に、
2015-03-22 19:30:12典型的なうつ病と違うように見えた若者が多いため・・・、「新型うつ」と名付けられている。しかし「新型うつ」に当てはまるうつ病は、昔からあった。「非定型うつ病」といったものがそれで、うつ病の薬がなかなか効かない一方、MAO型といった薬がよく効く、
2015-03-22 19:30:27私の見立てでは、昔だったら「甘えやナマケ」といわれ、本人もある程度そう思っていた非定型うつ病などが、「病気ではないか」と医者にかかるようになって、表面化したのが大きいのではないか。
2015-03-22 19:32:01MAO型といった、特定の薬が効いたりするのだから、単なる気分の問題ではない。昔だったら単なる「甘えやナマケ」と片付けられていたものが、治療できるならば治療すべきである。
2015-03-22 19:34:10キリスト教では生みの苦しみ、出産の苦痛は「髪から与えられた罰」として、受け入れるのが正しい事とされていた。ヨーロッパでは、「痛みを和らげてほしい」と訴えた妊婦が、教会に生き埋めにされる事件もあったくらいだ。麻酔薬が誕生した際には、
2015-03-22 19:40:37出産に麻酔を使うことを、聖職者が口を極めて非難した。しかしイギリスのヴィクトリア女王が麻酔を使って出産すると、批判は下火になる。女王ほどの人になれば、安全に出産できたほうがいいわけだし、19世紀の聖職者達に、女王を生き埋めにせよ、という勇気もなかったわけだ。
2015-03-22 19:40:50現代の日本でも、無痛分娩に「痛みを経験してこそ本当の母親になれる」とか、的外れなことを言って反対するものがいる。痛みを知らなければいい親になれないなら、父親は原理的にいい親になりようがない。
2015-03-22 19:42:34スペインが征服した新大陸アメリカでは、ヨーロッパ人の持ち込んだ天然痘などで苦しむ原住民を、「不信心なもの(非キリスト教徒)に神が与えた苦しみ」と放置したヨーロッパ人もいたという。
2015-03-22 19:46:05科学技術の進歩で、痛みを減らせるようになったのなら、どんどん減らせばいい。宗教的狂信者、「痛み大好き」マゾヒストのいう事を聞いてはいけない。
2015-03-22 19:46:41参考文献、野村総一郎「うつ病をなおす」、茨木保「まんが医学の歴史」。日本うつ病学会のホームページ、Q&Aも参考にしよう。secretariat.ne.jp/jsmd/qa/
2015-03-22 19:50:32追加
追記。非定型うつ病に効く薬である「MAO阻害薬」は、野村総一郎「うつ病をなおす」が執筆された2004年当時では、まだ日本で認可されていない。また非定型うつ病とは別に、軽いうつ症状、主に無気力や倦怠感が強い「気分変調性」というのもある。
2015-03-24 09:57:11これは薬が効くのにとても時間がかかり、効果も限定的。はたから見れば何もせずだらだらボーっとしているので、苛立ちを誘いやすいが、うつ病治療の基本は投薬と休養だから、怒鳴ってもうまくいかない。
2015-03-24 09:57:27