茂木健一郎@kenichiromogi氏の語る『現実』、『仮想』とはなにか?

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茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(1)ある年の歳末の朝、私は福岡から羽田に帰ってきた。空港内のレストランでカレーを食べていると、近くに、5歳くらいの女の子と、その妹が座っていた。

2010-12-18 09:20:14
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(2)5歳くらいの女の子が、妹に言った。「ねえ、サンタさんていると思う? 私は、こう思うんだ。」その言葉を聞いた瞬間、カレーのスプーンが止まった。私は、不意打ちされたのである。

2010-12-18 09:21:05
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(3)果たして、サンタクロースはいるのかいないのか。5歳の女の子が投げた問いかけ。それを耳にした瞬間、この世の中で、この問い以上に重要なものはないということが直覚されたのである。

2010-12-18 09:21:57
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(4)サンタクロースという「仮想」は、私たちの心の中にこそある。遠い雪の国から、トナカイの橇に乗って、自分にプレゼントを持ってきてくれる人。5歳の女の子にとって、そんな「仮想」が切実だからこそ、彼女は問いかけた。

2010-12-18 09:23:12
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(5)目の前に赤い服を着て白髭の太めの男を提示したとしても、それは、サンタクロースの存在証明にはならない。サンタの橇の位置を、NASAが地球上に表示したとしても、助けにはならない。サンタの存在証明は、私たちの仮想の切実さそのものの中にある。

2010-12-18 09:24:43
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(6)何事も、目に見えるものを優先しがちな現代文明。しかし、人間にとって、決して見ることも聞くこともできない「仮想」の切実さは、これからも変わることがないだろう。そんなことを、5歳の女の子の一言をきっかけにして考えた。

2010-12-18 09:25:40
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(7)たとえば、思春期になって、異性とデートしたらこんな風ではないかと仮想する。そのような異性は、実際には存在しない。現実の異性のあり方に目覚め、適応することを人は「成長」と呼ぶ。その一方で、仮想の中の異性の切実さが変わるわけではない。

2010-12-18 09:26:50
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(8)私たちが「現実」と呼んでいるものもすべて、脳の神経細胞の活動が作りだした脳内現象に過ぎない。つまりはすべては「仮想」である。「仮想」のうちの一部分を、ある手続きを持って、「現実」と名付けるだけなのである。

2010-12-18 09:27:41
茂木健一郎 @kenichiromogi

仮想(9)歳末の空港で耳にした、5歳の女の子の「サンタクロースっているかしら」という言葉から、「仮想」についての思考が巡り、『脳と仮想』という本になった。今でも、あの時の女の子の様子をありありと思い出すことができる。

2010-12-18 09:29:21
茂木健一郎 @kenichiromogi

以上、「仮想」についての連続ツイートでした。

2010-12-18 09:29:38