1 "今日久々にどう?" 声かけてくんのは理科の渋谷先生 うちの学校では生物を教えてる いつもヨレヨレの白衣に無精ヒゲ 愛想もないし口も悪い …けど生徒にはなぜか人気がある 渋やんが赴任してから 理系に進む女子がふえたとか
2014-09-09 00:06:092 歳がおんなじで妙に馬が合って 時々こうして飲みに行く間柄 がやがやした居酒屋のカウンターで 並んで生ビールのジョッキをぶつけた "なんかえー感じにならへんかな〜" 渋やんがいつもの口癖を呟いて 枝豆を口に放り込む
2014-09-09 00:06:193 こういう時学校の話はせーへん 次の日には忘れてるような 普通のおっさんの会話 せやのに… "な、ヒナぁ〜 生徒のこと女としてみたことある?" 「ぶーーっ‼︎‼︎」 急に変なこと言い出すから 吹き出してもうたやんけ 慌てておしぼりとったはずみに 箸もバラバラ落ちて
2014-09-09 00:06:274 "きったないなぁ、もうー その様子やと心当たりありそうやん" ニヤニヤする渋やん… 夏に入る前 好きな子に気持ちを伝えたけど あれから特になんの進展もなく 彼女が卒業するまであと半年 それまでは教師と生徒の一線を 超えたらあかんって…
2014-09-09 00:06:395 "…で、誰なん?それ…いや待って! 俺当てるわ、ヒントヒント" おもしろがる渋やん 結局二つ目のヒントで当てられた "あいつ…な、わかるわかる… 落ち着きあってええよな、可愛いし 俺も好っきやわ〜" 「あほか」 "うそうそ! せやけどあいつ結構モテるやろ"
2014-09-09 00:06:476 「え、そうなん?」 "告られてるとこ見たことあるで" 「ほんまに?」 "生物室から中庭見えるやろ… そんなんようけおんねん" "ま、あの子にはどいつもこいつも みな振られとったけど… まさか本命がおまえやったとはなぁ" 「そ、そんなに…」
2014-09-09 00:07:017 渋やんは相手が俺やったんが よっぽどおかしいんか ずっとわろてるけど 俺は気が気やなくてうわの空 帰る頃になってふと気づく 「渋やんも話あったんちゃうん」 "いや俺の話はええねん、 それよかおまえがんばれよ!" ちっさいおっさんは 手を上げて帰っていった
2014-09-09 00:07:118 考えたら… 彼女に好きって言われたわけちゃう 毎朝校門で挨拶交わすだけで 1日それで終わる日もある 携帯の番号だけ教えてもらったけど かけたことないもんな なんや急に焦ってきた 卒業するまでー なんて言うとったら 誰かにさらわれるんちゃうかって
2014-09-09 00:07:219 そや、電話しよ! 酒の勢いを借りて… ってオーバーやけど それくらいドキドキして 自転車を押して歩きながらかけてみる …けど…留守電 まだ寝るには早い時間、風呂かな? 勢い込んだ分、落胆が激しい 今なにしてるんやろ?
2014-09-09 00:07:3510 LINE…か…しときゃよかったな 電話でけへんだけで、こんなん… いらんことばっかり考えてまう 俺ってこんな女々しかったっけ? #エイトで妄想 pic.twitter.com/41YiVg92Qi
2014-09-09 00:08:0211 もう1回だけかけてやっぱり留守電で 家に着いてすぐ携帯見たら 彼女からの着信があった やった!…けど 急いでかけたらまた出ーへん あかん、完全に行き違いや 落ち着こ…とりあえず 俺からの着信には 気づいてくれてるんやから
2014-09-10 00:34:4912 風呂にお湯をためながら その間もずっと携帯を見張ってる 風呂に入るときも ジップロックに入れて… せっかくためた湯船につかるのも そこそこに出てくる 俺必死やんけ…自分でも笑える… そう思ったとき 電話が震えた
2014-09-10 00:35:0213 「も、もしもしっ!」 『…先生?』 「おぉ、やーっと繋がったな」 『ごめんなさい…今日、塾で…それで 帰ってすぐお風呂入っちゃって…』 「そっか、ちゃんと服着てるんか?」 『…う、ん…』 「い、いや、変な意味ちゃうで! 風邪引いたらあかんからやな…」
2014-09-10 00:35:1514 『うん、わかってる//』 「笑うなや〜」 『だって…嬉しいから…』 「え?」 『初めて電話してくれたから…』 「んー?…せやな」 「今日渋やんとメシ行っててん」 『渋谷先生と…?』 「ん、ほんでな、おまえがモテモテや …っていう話になり…」 『へ?』
2014-09-10 00:35:3215 「なんかな…不安になってもうてん」 「ごめん…な、自分で卒業するまで 待つて言うたのに」 「誰にも取られたないって… 引くよな、こんなん言うたら」 『…ううん…嬉しくて、泣きそう』 ずっと黙ってた彼女が ちっちゃい声で答えてくれた やっぱり電話してよかった…
2014-09-10 00:35:4616 「塾て遅い時間までやってるんやな 帰り大丈夫か?」 『横山くんと一緒に行ってる… 家が近いから』 「あいつも塾行っとんのかいな うーん、あいつやったら許す…わ」 『あと少し、推薦で決まったら…』 「うん、頑張れよ…教師のくせに 俺なんにもできひんけど」
2014-09-10 00:36:0317 『うん、頑張ります』 「俺、携帯…スマホにかえよかな」 『え⁈』 「こやって声聞くのもええけど LINE…できた方がええなって」 『私のため…?』 「せやな」
2014-09-10 00:36:2018 次の休み俺は携帯ショップへ どうしてもついて行くって言う彼女と 付き添いの横山と… ふたりっきりで出かけるんは まずいやろってことで 「2人とも受験生やのに悪かったな」 遅いランチをとりながら言うと "これから先生んちでスマホ講座やろ つかえんの?それ" 確かに…
2014-09-10 00:36:4219 3人で俺の部屋に帰って ジュース1杯飲んだところで "ほな俺帰るわ" 意味深な笑い方して 横山は帰ってもうた 「なんやねん、あいつ」 なにふたりきりにしてくれてんねん 嬉しいけど気まずいやん… #エイトで妄想 pic.twitter.com/p8DJD1fE7z
2014-09-10 00:37:0920 彼女に付きっきりで教えてもらって なんとか一通りの操作を覚えた …ていうかそれに没頭してないと ついつい彼女の横顔にみとれて いらんこと考えてまいそうで 「おっしゃ!いっぺん送ってみんで」 『うん』
2014-09-10 21:44:0821 "LINEできたー" "おめでとう*\(^o^)/*" それと一緒にスタンプも送られてくる "誰?これ" "きりみちゃん" うっ、ここはスルーしとこ 高校生と付き合うには まだまだ覚えなあかんこと多そうや
2014-09-10 21:44:1922 "今日はありがとう" "どういたしまして" "楽しかった" "私も!" ソファに並んで座ってんのに LINEで話すふたり "先生" "なに?" "大好き♡" ハートに乗ったきりみちゃんとやらの スタンプ 「うぇっ⁈‼︎」 変な声出てもうた
2014-09-10 21:44:2623 "私、ちゃんと言えてなかったから" そう送ってきて 真っ赤になってうつむく彼女 俺はスマホを置いた 「こっち向いて…もっかい言うて」 彼女もスマホを置いて そっと視線をあげたけど 両手で顔を隠して目だけ出して 『好きです…』 て言うてくれた
2014-09-10 21:44:3924 「俺も…好きやで」 彼女の両手を引き寄せて おでこにチュッてした 固まった上目遣いの顔が あんまり可愛いかったから つかまえたまま ほっぺにチューして そのまま唇にずらしてキスした 『先生…ずるい…』 唇を離したら 俺の胸におでこをつけて言う
2014-09-10 21:44:5525 「ごめん…びっくりしたか…?」 手を離して抱き寄せたら こくんと頷きながら 『心臓が破裂しそう…』て言う 顎をあげてもう1回 今度はちょっと長めのキスをした 「今日はこれぐらいにしといたる 心臓破裂したら困るから…な」
2014-09-10 21:45:13