一日目、交流 - 今様に落つる怪奇譚

2015/04/02から2015/04/05までの、人間とあやかしの語らいの様子です。
0
不老 蓮 @Lotus_frow

――靄のかかった道を歩く。朝方でもなければ山道を歩いていたわけでもない。歩んだ先は何気ない住宅街。階段を昇っていると、『それ』は訪れた。 どうしたものだろう。僕は逡巡して周囲を見渡しながら歩く。何かに『巻き込まれた』のかもしれない。そう思いをめぐらせながら。

2015-04-02 22:05:30
不老 蓮 @Lotus_frow

階段を登りきった先にあったのは寺だった。随分とふるい作りだが、立派な外観をしている。これほど大きければ観光客でも居そうだけれど、見た限りここにはいない。否、人の気配すらない。 あるのは妙に異質で奇怪な感覚のみ。デジャブを感じながら、石造りの道を逸れて、土の道をブーツで踏み敷いた。

2015-04-02 22:05:41
不老 蓮 @Lotus_frow

少女風貌はまだ日が高いことを確認するために上を見上げた。夕刻にはまだ遠い。階段の下は靄に包まれているものの、まさか帰れないなんてことはないだろう。 僕はそんな風に考え、思考を切り替えることにした。

2015-04-02 22:10:02
赫滑ねぶる @akanameneburu

「ちぁ〜っす。佐川急便で〜す。……誰かいないんすかぁ〜」 ひょこひょこと、古寺の周りを歩いて一周してみたが、建物の中に人間の気配はない。 「……廃寺かぁ?」 これでは美味い風呂垢にありつけそうもない。 落胆に肩を落とせば、もともとのなで肩がさらに強調される。

2015-04-02 22:42:52
赫滑ねぶる @akanameneburu

そうやって、階段のある正面まで戻って来れば。 「……っ!」 さっきまでは確かに誰も居なかったその場所に、一人の少女が佇んでいて。 慌てて寺の柱の影に隠れた青年……赫滑ねぶるは、ダラリと30cmほど垂れていた異形の赫い舌を、急ぎ、口内へと格納する。

2015-04-02 22:42:53
赫滑ねぶる @akanameneburu

ザリッ、と、裸足の足で境内の白砂利を踏み鳴らし、柱の影から姿を現す。 「あ〜、どもぉ。君、一人?……あ、俺ぁ怪しいもんじゃあねぇよ」 ヘラヘラと陽気に笑いながら、相手に警戒されないようにと、両手を広げてゆっくり近づく。 ただし、人間社会ではいきなり声をかける時点で十分怪しい。

2015-04-02 22:42:55
不老 蓮 @Lotus_frow

廃寺というには綺麗だし、無人なだけらしい、が。無人なことが何よりも不気味に思えるわけで。 境内を歩き回ろうか。そう思い立って視線を前に向けると、先ほどまではいなかった気配がひとつ追加されたのを、ようやく認識した。

2015-04-02 22:49:51
不老 蓮 @Lotus_frow

「……っ」 びく、と肩を揺らすと黒髪も共に揺れた。歩もうとした足がとっさに下がってしまう。ただの人間ならここまでのリアクションはとらなかっただろうが、何せ見えた相手は異人のように巨大で、異形のように長い舌が見えたものだから。

2015-04-02 22:49:59
不老 蓮 @Lotus_frow

「怪異……ですか?」 僕が認識することができる、明らかに人間離れした異質な存在。陽気に笑う様もまた不気味だけれど、それはとてもとてもフランクに、僕へと歩んでいた。身構える。 不審者感丸出しのこの"人間"は、明らかにそれと違う。

2015-04-02 22:51:05
染井 恭子 @Swamp_swap

染井恭子は暇人だ。 趣味らしい趣味もなく、青春らしい青い春もなく。 仲良くなった文通相手に勧められるままに。 あるいは最近、耳にした噂話を確かめるために。 興味を引かれる何かを探す為に。 彼女はこの日、明確な目的もなく自分の町を散歩していた。

2015-04-02 22:57:10
染井 恭子 @Swamp_swap

慣れた散歩の途中、四つ辻の角から景色が見知らぬ住宅街になっても。 間違った道を歩むとループするように戻されても。 回りに人影が一つも見えなくとも。 迷子になったとしか思わない。 染井 恭子は非日常に対して酷く鈍感だ。

2015-04-02 23:01:07
染井 恭子 @Swamp_swap

その愚鈍さ故に、お寺なら人が居るかもしれないと思い付いたのはその階段の前を三回通り過ぎ、四回目にささしかった時だった 長そうな階段を、嫌々ながらのぼっていく。 最後の段を踏んだ時には疲れはて、久し振りの人の気配に喜ぶ元気もなく。 ぼんやりと立ったまま 手水舎を探して周囲を見渡す

2015-04-02 23:09:24
赫滑ねぶる @akanameneburu

「ありゃ?」 間抜けな声をあげて口を開ければ、真っ赫な口内から、デロリと、異形の舌が滑るように落ち、その先端はゆうに膝下まで達する。 「へへっ、マジかぁ。そっこーでバレてんじゃねぇか」 笑い、さらに近づく。 親しい友人と話す間隔にまで、距離を縮めようと。

2015-04-02 23:12:45
赫滑ねぶる @akanameneburu

「怪異。うん、そういう呼ばれ方もすんなぁ。そういう君ぁ、人間だろ?……俺のこと、『解ってる』わりに、落ち着いたもんじゃねぇか。あ?」 巨躯をくの字に曲げて、濁った灰色の三白眼で、少女の顔を覗き込み、ニヤリと……本人なりには親愛の笑みを浮かべる。

2015-04-02 23:12:46
不老 蓮 @Lotus_frow

「見た目から異質です」 すい、と目を細める。こういうのは『仕事』で見慣れている。正確には異質なものを見慣れているだけで、こういう肉体的に乖離した存在をお目にかかることはそうなかったのだけど。 距離が縮まり、僕はそれに恐れることもなく、これ以上下がらない。冷静でいるよう見上げた。

2015-04-02 23:18:00
不老 蓮 @Lotus_frow

「……僕は霊能力者です。こういうものは見慣れています。何かお告げにでも、それとも悪さでも……?」 それとも――― 「……迷った人は他にもいるようですね」 ここにはいないようだけれど。

2015-04-02 23:18:48
赫滑ねぶる @akanameneburu

「へぇえ!霊能力者!すっげぇ始めて見たわぁ!」 興味津々と言った風に感嘆の声をあげ。 「あ。あ。ちなみにだけどさぁ、俺ぁ、自分で言っちゃあなんだが、いわゆる善玉でよぉ。他人様に悪さしようなんざぁ考えた事もねぇ!だぁら、退治とか除霊とかそういうんはナシな!」 慌てて付け加え。

2015-04-02 23:32:26
赫滑ねぶる @akanameneburu

「他にも……?」 少女の言葉にぐるりと首を回せば、ヨロヨロと、疲れた足取りで階段を上り切り、そのまま水を求めて彷徨う亡者のような少女(失礼)が目に留まり。 「よぉ。君もここに迷い込んだクチかぁ?」 そちらへ向け、ヒラヒラと手を振って。

2015-04-02 23:32:28
蓮田 颯丞 @hasterMissing

「…外に出るんじゃなかった」 火野夕菜(ヒノ ユウナ)は本日何度目になるか分からない後悔を口にした。 切っ掛けは大した事ではない。 ティッシュ箱のストックが無くなっていたのに気が付いて、母親に何か言われる前に買っておこう。ついでにアイスでも買うとしよう―― そんな小さな気紛れ。

2015-04-02 23:36:55
蓮田 颯丞 @hasterMissing

それで重い腰を上げて、久々に学校以外の用事で外に出てみたらこのざまだ。 近所に少し買い物に出るはずだったのに、気付けば見た事も無い住宅街へと出てきてしまっている。 方向感覚に自信があったわけではないが、近所に買い物に出るだけで迷うほどの方向音痴とは思わなかった。

2015-04-02 23:52:17
不老 蓮 @Lotus_frow

「……危害を加えないのなら」 いたしません。珍しがられる声は、人間を相手にして慣れている。 「そう、ですか……」 安全に話しかけることができる怪異はそう多いものでもない。

2015-04-02 23:53:29
不老 蓮 @Lotus_frow

ひとまずの安堵を覚えた後、に。 「あ……」 亡霊みたいに歩む足取りは幽霊と幻視しそうになって、かぶりを振って再度見る。 髪の長い女性が見渡す様。 ちなみに入り口の左側。すぐ近くに手水舎は見えた。 僕はその人に近づいて、顔を覗き込もうと気持ち低い姿勢。 「あの……大丈夫ですか?」

2015-04-02 23:54:24
蓮田 颯丞 @hasterMissing

少しばかりショックを覚えるも、それで事態が解決するわけではない。 電柱にあった街区表示板は、自分の家のものとは違うという事くらいしか分からない。 そもそも、自分の家の近所に何があるかなどに興味はないし、自宅の住所以外の地名を覚える必要性もなかった。今までは。

2015-04-02 23:55:36
蓮田 颯丞 @hasterMissing

はぁ、と溜息をつきながらとぼとぼと歩く。 ほんの少しのつもりだから、携帯を置いて出てしまったのも痛かった。あれさえあれば帰り道も分かっただろうに。 日が暮れつつある見知らぬ街中だからだろうか。夕奈の心にも徐々に影が差し込む。 ああ、だめだ。私はだめだ。何をやっているんだ。

2015-04-02 23:58:33
蓮田 颯丞 @hasterMissing

おまけに不運な事に、さっきからまったくと言って良いほどに人通りがない。 生活臭があるからゴーストタウンというわけでもないのだろうし、集合住宅の窓に人の姿が見える事もあったが、道を歩く人に声を掛けるのですら勇気がいるのに、声を張り上げて屋内にいる人に声を掛ける勇気があるはずもない。

2015-04-03 00:02:36
1 ・・ 7 次へ