一日目、逢魔時 - 今様に落つる怪奇譚

2015/04/05から2015/04/08までの、人間とあやかしの語らいの様子です。
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赫滑ねぶる @akanameneburu

「……気持ち悪りぃよな。なんつうか……やっぱ……垢舐めなんてよぉ」 漫画なら背景にショボーンという文字が見えそうなほどに、すっかりしょぼくれた様子で。

2015-04-07 23:20:03
染井 恭子 @Swamp_swap

「知ってた。」 むしろあれで隠せてたと思っていたのだろうか? だばだばと音を立てて注がれていくお湯に視線を転ずる。 「別に、気持ち悪くない。 ロリコンじゃないから通報もしない。」 そう言ってから、これでは足りないかと言葉を探す。

2015-04-08 20:11:02
染井 恭子 @Swamp_swap

「そういう生き物だから。そういう生き方だから。別にいい。 私は大抵、気にしない。 流石に、人間の奇食家の人にの猿の××とか、狂犬病にかかった××の血液を×××して×した物を勧められたときは引いたけど。」 それに比べたらだいぶましだと。 彼女は言う。

2015-04-08 20:11:09
染井 恭子 @Swamp_swap

曇り始めた眼鏡を外して。 「人と違うことを責める権利なんて、私にはないしね。」 そう、お湯の音に紛れるほど 小さな声で呟いた。

2015-04-08 20:11:12
赫滑ねぶる @akanameneburu

ポカン、と。 間の抜けた表情で、目の前の少女の顔を凝視する。 「あっ……そっ、そう、かぁ。そっかそっか、気持ち悪く無ぇ、か……っ」 言いながら、彼女から顔を背け、両手で覆ってしまう。 堪えきれない紅潮と、緩んだ頬を、隠すため。 しかし、長い耳は先まで真っ赤だ。

2015-04-08 21:04:06
赫滑ねぶる @akanameneburu

そしてその乙女のような仕草のままで、おもむろに踵を返せば 「〜〜〜ッッッ!!」 ダッ!と、少女の横を通り過ぎて。 「あああ、あのさぁ!!そ、そのうち風呂沸くから、入っとけよな!!……れ、冷蔵庫ん中、勝手に使っていいかっ??ば、晩飯、作っといてやっからよ!!」

2015-04-08 21:04:12
赫滑ねぶる @akanameneburu

気持ち悪く無いと。 そういう生き方だと。 彼女に言われた言葉が、ねぶるの頭の中でぐるぐる回る。 そしてその度にニヘニヘと頬を緩めて、逃げるように転がり込んだキッチンにしゃがみ込む。 ……はたして彼は、先ほどの彼女の異様な発言の、どれほどを意識に入れられただろうか?

2015-04-08 21:04:15
染井 恭子 @Swamp_swap

ねぶるの様子に、何か言葉がせりあがり。 それが吐き出されるのを待たずに嵐のように彼は去っていった。 なんだろう? わからない。 背を見送ってから、脱衣所の扉を閉める。

2015-04-08 21:35:40
染井 恭子 @Swamp_swap

特別は、なく 何事も特になく 眼鏡を手頃な場所におき。 するりとスカートの留め具を外し 布地を床に落として、少女は思う。 否、何も思わない。 一人になって ぼんやりと、思考に霞がかかるのは この時期は桜の季節にはよくあることだ。 ただ、ただ。 呼び声が 頭に響く

2015-04-08 21:36:52
染井 恭子 @Swamp_swap

怖くはないが。 寂しくもないが。 寂しさも鈍ることに虚しさがふとわく。 先程まではそれも、なかったことに 少女は気がつかない。 そんな鈍った思考で、少女は思った。 せりあがっていた言葉が形になる。 「ぁ、冷蔵庫。空だ。」

2015-04-08 21:38:00
赫滑ねぶる @akanameneburu

「へへ、気持ち悪く無ぇってよぉ……へへへ……」 にやけながら、冷蔵庫を開ける。 がパッ 「……そう来るか」 一瞬にして、現実に引き戻される。

2015-04-08 21:49:03
赫滑ねぶる @akanameneburu

さてどうしたもんかなと、腰に巻いた作務衣のポケットをまさぐれば、使い道もなかったバイト代の分厚い封筒が、その存在感を主張する。 「ん〜。まあ、ダメもとでスーパーでも探すかなぁ。お嬢ちゃん、ちょいと10分くらい出かけて来らぁ〜」 風呂場へと声をかけ、裏口のドアノブに手を掛ける。

2015-04-08 21:54:29
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