Voice

りえぷぅ @riem124blue

26 初めて会ってから、10ヵ月経った頃には少しお話ができるようにまで。 渋谷「ギターどぉ？」 □□「上達しないんです…。」 渋谷「そぉなん？」 □□「コードが押えられなくて…指が短いのかな…？」 渋谷「コツがあんねん…ちょっと教えよか？」 □□「えっ…？！」

りえぷぅ @riem124blue

27 渋谷「あ、時間ない？」 □□「いえ！！お…お願いします…///」 渋谷「ほんなら、ここ、座って？」 □□「は、はい…。」 渋谷「じゃ、基本からやな？C押さえてみてぇ？」 □□「えと、C…、」 緊張も手伝って、いつにも増してきちんと押さえられない。

りえぷぅ @riem124blue

28 左手で押さえて右手でゆっくり弦を弾いたけど、変な音が出た。 □□「うぅっ…、」 渋谷「ん、…後ろから、ごめんな…？」 そう呟くように言って、ふわっと体を包まれる。 自分の手の上に渋谷さんの手が重なる。 顔も…近い…！/// 渋谷「こぉ…こんな感じ…弾いてみて？」

りえぷぅ @riem124blue

29 もう１度右手を動かしてみる。 すると初めてキレイな音が出た。 □□「ぅ、わっ…！」 渋谷「あんま強く押さえすぎてもあかんねん。こーんな…ここ…そーそー、な？」 □□「ホントだぁ！ありがとーございま、…す…///」 嬉しくて思いっきり振り返ったら、すっごく近い顔。

りえぷぅ @riem124blue

30 ドキッと大きく跳ねた心臓を止めるべく、すぐに前を向き直す。 渋谷「あー…すまん…なんか…///」 わたしの反応に、渋谷さんもちょっと気まずそう…顔見れないけど…。 □□「ぃ、ぃぇ…、・・・れ、練習しま、す…！///」 この日、わたしは逃げるようにお店を出た。

りえぷぅ @riem124blue

31 好き…なの、バレちゃったかな…。 いや、もう、とっくにバレてるのかな…？ そう思いながら帰った、翌週…。 会社の出たくもない飲み会。 あまり行かない町の居酒屋。 同期の中村くんが、酔った勢いで妙に絡んできて、一刻も早く帰りたくて…２次会の相談してる隙に走って抜けた。

りえぷぅ @riem124blue

32 まっすぐ駅へ向かう。 と…、あの声が聞こえた気がして…。 思わず立ち止まって、顔を上げたら、目の前に…彼の姿…。 渋谷「…気ぃつけてな…？」 渋谷さんが、女の人をタクシーに乗せようとしていた。 女性「また…連絡するね…。」 渋谷「…ん…。」

りえぷぅ @riem124blue

33 そして、どちらからともなく…抱き合ってキスをした。 いわゆるラブホってトコの前、だよね…。 その女性は名残惜しそうに渋谷さんに指を絡めてから、ゆっくりとタクシーに乗り、…消えた。 カノジョ、…だよね…？ でも…ホテルの前でバイバイするって…昔の歌謡曲じゃあるまいし…。

りえぷぅ @riem124blue

34 その場から動けずに、つっ立ってたら、渋谷さんが…わたしに気付いたみたいだった。 バツが悪そうな顔して、頭を掻いた。 そして、ゆっくり近付いて来てくれる。 渋谷「こんなとこで会うとはなぁ…。」 □□「そ、そうですね…。」 渋谷「電車で帰るん？」 □□「はい…。」

りえぷぅ @riem124blue

35 渋谷「家、どのへん？俺車やねん、送ったるで？」 □□「そ！そんな！悪いです…！」 渋谷「えーやん、遠慮せんで？」 わたしは送ってくれるのに…彼女は送らなくて良かったの…？ そんな疑問が頭の中で巡ったけど、彼がなんだか少し寂しそうに見えて、素直に甘えてみる事にした。

りえぷぅ @riem124blue

36 並んで少し歩くと、コインパーキングに着いて、彼の車に乗るように言われる。 車って密室…。 彼女のことで忘れてたけど、乗った瞬間また緊張が戻ってくる。 緊張を忘れようと、ふと車内の音楽に耳を傾ける。 □□「あ…この曲…。」 渋谷さんがあの時歌ってた曲だ…！

りえぷぅ @riem124blue

37 渋谷「この曲知っとるん？」 □□「えっ、あっ、えと…、」 どうしよう「渋谷さん歌ってましたよね？」とか言ったら気持ち悪がられるよね…？ 渋谷「ん？」 不思議そうな彼。 いっか…気持ち悪いと思われても…どうせ失恋決定だし…。

りえぷぅ @riem124blue

38 □□「あ、あの…もう、ちょっと前の話なんですけど…BARで…渋谷さんがこの曲歌ってるのを聴いたこと…あって…。」 渋谷「えぇっ？！・・・・あー…、あん時かぁ…。」 □□「えっ？覚えてるんですか？」

りえぷぅ @riem124blue

39 渋谷「覚えとるってゆーか…あの店俺はあんま行かへんし…まぁー、無理矢理連れてかれたことあったなぁ、て…。で、確かに１曲歌ったわ…。」 □□「あの時…入口前のカウンターに…わたし、居たんです…すみません…。」 渋谷「はは！なんで謝んねん！…そーかー聴いてたんかー…。」

りえぷぅ @riem124blue

40 チラリと運転中の彼を見る。 その横顔は照れたように笑ってて、別に怒ったり、気持ち悪いとかは思ってなさそうで、ひとまずちょっと安心した。 “失恋決定だから…” さっきはそう思って話したのに…諦め悪いな…わたし。 渋谷「この曲気に入ったん？」

りえぷぅ @riem124blue

41 “この曲歌ってたあなたを好きになりました” そんなこと、言えないよね…。 □□「はい…すごく素敵な曲ですね…。」 渋谷「聴く？」 □□「え？」 渋谷「ＣＤ貸すで？」 □□「ほ、ホントですかっ？！」 あー、もー、諦めなきゃいけないのに…うれしい…。

りえぷぅ @riem124blue

42 渋谷「えーよえーよ、持って帰ってゆっくり聴きや？」 □□「ありがとうございます…！」 渋谷「それにしても、よーあん時の歌やって分かったな？」 そりゃ、すごく聴き入ってたから…。 □□「まぁ……、」 自宅前でわたしを降ろすと、車の中からＣＤを出して手渡してくれた。

りえぷぅ @riem124blue

43 渋谷「ほんじゃ、またな？あー、それいつでもえぇから。」 ＣＤを指差して少しだけ笑うと、彼は車で去って行った。 借りちゃった…。 そのＣＤを抱きしめるように大事に持って帰った。 彼の私物に触れるってだけで、ドキドキしてしまう…わたし重症だな…彼女いるのに…。

りえぷぅ @riem124blue

44 いつでもいいって言ってくれたけど、どれくらいで返した方が正解？ 早過ぎたら、聴いてないだろって思われる？ 遅くなったら、いつまで借りてるんだって思われる？ すぐパソコンに音源落として、ＣＤを眺めながら何度も考えた。 結局、渋谷さんに早く会いたくて、２週間後返すことにした。

りえぷぅ @riem124blue

45 お店に入ると、渋谷さんの姿が見えない。 休憩中…？ でも確かもうすぐ閉店時間だけどな…。 今日はいつもの女性もいないな…代わりに…あの酔ってた人…えと、名札…錦戸さん、か。 錦戸「いらっしゃいませー。…あれ？どこかでお会いしました…？」 □□「えっ…？！」

りえぷぅ @riem124blue

46 錦戸「はぁぁあ！ちゃう！ちゃいますよ！ナンパとかやないですよ！！あぁぁ、すみません！！」 □□「…あ…、ふふ、分かってますよ…ふふふふ。」 錦戸「あ…、そりゃそうですよね…会社でナンパとか、普通しませんよね…あはは、すみません…。」

りえぷぅ @riem124blue

47 □□「いえ。…あの…BARで何度かお見かけしたことがあります…。」 錦戸「あっ！！大倉んとこで…！あ、そうかそうか…！や…変なこと言うてすみませんでした…へへ。あ！今日は何かお探しですか？！」 □□「あ…えと…渋谷さんは…いらっしゃいませんか…？」

りえぷぅ @riem124blue

48 錦戸「すば…、えと、渋谷は今日、学校の楽器の修理・点検で外出してるんです。もうすぐ帰ってくるとは思うんですけど…お急ぎですか？」 □□「あっ、いえっ、いいんです！全然急ぎじゃないですっ、すみません！」 その時、後ろから声がした。

りえぷぅ @riem124blue

49 安田「お疲れさまでーす。あ、いらっしゃいませ～♪」 錦戸「あ！章ちゃん、部長まだやった？」 安田「あー、俺が駐車場出た時、車戻ってきとったから、もうそろそろ来るんちゃう？あ、渋谷にご用ですかぁ？」 □□「えっ、あ、はい…。」 安田「あっ、たしか大倉の店で…、」

りえぷぅ @riem124blue

50 錦戸「うわっ！章ちゃん、ちゃんと覚えとるん？！すげーなっ！！」 安田「せやろ？そっかー、部長のお友達やったんか。」 □□「えっ！！いやっ、ち、違います…えと、あの、た、ただの客です…！///」 安田「わ、そうですかぁっ、すみません。」 □□「い、いえ…///」