電王戦、ゲームにおける美

さいおんさんのまとめ
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さいおん @Xiwong_Noel

そして今日、「AWAKE」の巨瀬さんは、22手で投了しました。「AWAKE」は指しつづけることができ、もしかしたら(一割かもっと低い可能性で)逆転する可能性があったかもしれませんが、決定的悪手に誘導され、それを回避できなかった時点で、開発者の権限で投了したのです。

2015-04-11 22:40:42
さいおん @Xiwong_Noel

巨瀬さんは元奨励会員(真剣にプロ棋士を目指して養成機関に在籍した人)です。事前にも、その点に注目が集まりました。(プログラムどうしの戦う)電王戦トーナメントで優勝したときのインタビューでは「将棋プログラムがプロの能力向上の役に立てばいい」という趣旨のことを聞いた記憶があります。

2015-04-11 22:46:02
さいおん @Xiwong_Noel

「ずいぶんきれいな言葉を使う、大人な対応の人だな」と思ったものでした。しかしそれは、ちっともそういう意味ではなかったのでしょう。

2015-04-11 22:49:16
さいおん @Xiwong_Noel

プログラムにその決定的悪手を指させる筋は、各所の観測によれば過去に別の将棋プログラムへの対策研究として発生したものらしく、一般に公開された局面としては、いわゆる「百万円チャレンジ」の生放送企画で多くのアマチュアが使ってよく知られるようになりました。

2015-04-11 22:55:42
さいおん @Xiwong_Noel

その企画や放送より早くから、今回AWAKEと対局した阿久津さんはこの筋を研究していたようですが、それが完全に一から発見したものなのか、コンピューター対策の情報収集過程で知った手を試したのかははっきりしていません。まあ、そこを追求することにそれほど意味があるとも思えませんが。

2015-04-11 23:01:12
さいおん @Xiwong_Noel

投了の理由を説明する中で、巨瀬さんはだいたい以下のようなことを言っています。「貸し出したプログラムを、棋士が自分の能力を高めるために使うのではなく、プログラムのいちばん悪いところを引き出すために利用された。それは何の意味もないプログラムの利用法だ」と。

2015-04-11 23:08:14
さいおん @Xiwong_Noel

そして「アマチュアが先に指してすでに知られているハメ手を、プロは指さないだろうと思っていた。そんなことをするようでは、プロの存在意義にかかわる」といったようなことを言っています。

2015-04-11 23:11:42
さいおん @Xiwong_Noel

これは若干、ディープな将棋ファンでない人間にとってはわかりにくい感覚です。戦術なんて、誰が最初に指そうが、たいした問題ではないのでは? プロかアマチュアかに、そこまで大きな差があるのか? といったような。しかし(特に少し前までの)将棋界にはそういう「美学」がたしかにありました。

2015-04-11 23:15:38
さいおん @Xiwong_Noel

それはプロが間違いなく、絶対的な格差を持ってそれ以外の(トップのアマチュアや奨励会員やプログラム)より強い、と誰もが確信していた時代の、「プロ棋士のあるべき美しい像」であり、巨瀬さんが、その道を断念したために美しいまま持っていた、断念したからこそより美しくなった像かもしれません。

2015-04-11 23:23:11
さいおん @Xiwong_Noel

現在の電王戦は、イベントとしてずいぶん肥大化していて、協賛の会社がいくつもあり、放送では計算されたCMやゲストの予定がびっしり入っています。そういった中で、開始直後に(やむをえない事故以外の理由で)投了してスケジュールをぶち壊しにできるような「大人」はまずいないでしょう。

2015-04-11 23:27:30
さいおん @Xiwong_Noel

今日になってやっと、あの巨瀬さんの発言は「無難な大人」の言葉ではなくて、プロ棋士に(気軽な外野の眼から見れば)過剰なほど虚構の美を見つづけていた人のものだったのだ。それだからそこで投了することができたのだ。と思うわけですが。

2015-04-11 23:35:01
さいおん @Xiwong_Noel

巨瀬さんの投了を(その後の発言などはともかくとして)、将棋の言葉は「美しい」としか処理できないでしょう。投了することはプレイヤーだけの権利であり、いさぎよく投了することこそ、人間にしか理解できない「美」であると主張してきたのですから。

2015-04-11 23:41:49
さいおん @Xiwong_Noel

もちろん、ルールに則って勝つ可能性がもっとも高くなるように行動した阿久津さんは、その点で間違ったことをしたわけではありません。ある種の幻想を持った無責任な人たちから、強いだけではなく、さまざまな美学というハンデをともなってさらに強いことを求められていた、という点以外では。

2015-04-11 23:47:10
さいおん @Xiwong_Noel

「美しさ」がきわめて主観的なものであることに無自覚でいるとき、「将棋が強い」ことは「美しい将棋」であることと等しいと観念されます。ほぼこのとおりのことを、名人挑戦者の行方さんが言っています。たしか「美しい将棋でなければ強くない」というような言葉だったでしょうか。

2015-04-11 23:49:45
さいおん @Xiwong_Noel

さて。美しさ、ゲームにおける美しさとは、どういうものなのでしょうか。人間が盲目的に信じてきた、見慣れて都合のよい虚構にすぎないものなのでしょうか。

2015-04-12 00:00:44
さいおん @Xiwong_Noel

そういうことを、今年の電王戦では最初の頃からあれこれ考えていたのですが、最終局は実にそれを痛切な形で見せられる機会になりました。

2015-04-12 00:02:49
さいおん @Xiwong_Noel

電王戦前の記事にこういうものがありまして。 羽生善治「コンピュータ将棋により人間が培った美意識変わる」snn.getnews.jp/archives/588103 私はこれを、美とは主観的で変動するものであることの自覚を迫られる、と解釈していたのですが。果たしてどういう意図なのかなあ。

2015-04-12 00:08:22
さいおん @Xiwong_Noel

さすがに今夜はこの辺まで。長々とお騒がせしました。

2015-04-12 00:10:27