NW鎮守府 #.5

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ヴィジ(ap1895)/C103 日曜東G-21b @mabo_to_fu

一人の少女が、横須賀鎮守府区域のとある街中を歩いていた。 その少女はやや茶がかかった短めの髪と、濃いグリーンのパーカーと短めのスカートにタイツとブーツ、という出で立ちだ。 それだけ見れば、活発な少女に見えたであろう。1 #NW鎮守府

2015-04-20 11:13:04
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横須賀周辺は艦娘が多いが、少女は外見だけではそうは見えない。 ただ、纏う雰囲気は明らかに見た目通りの年頃の少女のものでも、艦娘のものでもなかった。2 #NW鎮守府

2015-04-20 11:13:56
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その少女は、やがてあるビルの前で足を止め、その看板を見上げた。 看板には、階ごとのテナントの名前が書かれている。 少女はその中、1階2階の喫茶店の名に目を留めた。3 #NW鎮守府

2015-04-20 11:14:38
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日本各地にチェーン展開されている、よく見る喫茶店だ。 少女は、仏頂面のまま数秒間睨むように看板を見ていた。 次に、瞬きを何度か繰り返した。4 #NW鎮守府

2015-04-20 11:15:26
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そしてデジタル式の腕時計を確認し、小さく呟いた。 「時間は丁度。」 それから、少女は喫茶店の中へと足を進めた。5 #NW鎮守府

2015-04-20 11:16:18
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休日だと言うのに、喫茶店の中の人影は疎らだ。 少女は客席に目もくれず、早足でカウンターへと向かった。 「いらっしゃいませ、ご……」 カウンターの店員が言い終わる前に、少女はメニューを指した。 「Sサイズ一つ、店内。」6 #NW鎮守府

2015-04-20 11:17:08
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店員は営業スマイルのまま、会計の処理を済ませた。 対し、少女は仏頂面のままであった。 少女はその顔のまま、注文したコーヒーを受け取り二階へと上がる。 その様子を、むっとした顔の店員が暫く眺めていた。7 #NW鎮守府

2015-04-20 11:18:37
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二階の客席も、一階と同じ様に空きが多かった。 少女は軽く辺りを見回し、ある点に顔を向けた。 数少ない先客の一人が、少女を見て手招きしていた。8 #NW鎮守府

2015-04-20 11:19:34
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「どうも、高宮さん。」 同じテーブル席へと腰を下ろした少女が、先客に声をかけた。 「お久しぶりです、直接会うのは半年振り位ですね。」 高宮、と呼ばれた先客は、少女よりは年上に見える。9 #NW鎮守府

2015-04-20 11:20:20
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肩より少し上程の明るい茶髪と、髪と同じ位に明るい色をした瞳。 そして、左の瞳は右とはやや違う虹彩を持っている。 ただ、注意して覗きこまなければ気が付かない程度の差だ。10 #NW鎮守府

2015-04-20 11:21:13
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「まあ、積もる話は後にして、と。」 少女はコーヒーに口を付け、顰め面を作った。 「不味い……」 高宮はそれを見てくすくすと笑った。11 #NW鎮守府

2015-04-20 11:22:54
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「コーヒー嫌いなら、無理に飲まなくてもいいのに……」 「無いとだめなんですよ。」 先ほどまでとは打って変わって、少女は頬を膨らました。 「それはさておき、こんなとこで良かったんです?」12 #NW鎮守府

2015-04-20 11:24:09
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如何にも苦いといった顔の少女は、それに答える代わりにウェストポーチから一つの端末を取り出した。 何の事はない、市販されているタブレット式携帯電話端末である。 ただ、充電ケーブル差込口も兼ねた端子からは、少女のポーチへとケーブルが伸びている。13 #NW鎮守府

2015-04-20 11:25:04
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端末を見て首を傾げた高宮を見て、今度は少女が含みのある笑いを漏らした。 「まあ、見てて。」 そう少女は言うと、端末を起動。 画面に表示された、これまた何の変哲もないその端末のメニュー画面から一つのアイコンを選んだ。14 #NW鎮守府

2015-04-20 11:26:06
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「高宮さん、光通信出来ますよね?」 「あ、なるほど。」 高宮は数回程瞬きを繰り返すと、右眼だけを閉じた。 少女は端末の赤外線通信部をそこに向けた。15 #NW鎮守府

2015-04-20 11:27:30
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「HCクラスだとちょっと負荷が厳しいかもしれないですよ。」 「私の型なら問題無いです。」 左眼を端末に向けたまま、高宮は返す。 しばらくして、少女が端末をポーチへと仕舞った。16 #NW鎮守府

2015-04-20 11:28:32
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「展開して読めば解る様になってます。……さて、この後は一応暇でしたよね。少し買い物にでも行きません?」 _________________________________17 #NW鎮守府

2015-04-20 11:29:44
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―横須賀鎮守府区端・蟻ケ崎鎮守府 「兄さん、古鷹知らない?今日買い出し当番なんだけど…」 そう蟻ケ崎提督に聞いているのは"三日月"。 だが、普通の"三日月"とは違い、左目は機械式眼帯で覆われている。18 #NW鎮守府

2015-05-11 01:37:09
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「んー……ああ、ちょっとあいつは今日駄目だ、居ない。」 「外出とも書いてないのに。」 三日月は、端末を操作しながら苦い顔をした。 その口調も、丁寧語を使う性格が多い他の三日月とは傾向が違う。 「任務だよ、ちょっと特別なやつ。」19 #NW鎮守府

2015-05-11 01:38:21
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蟻ケ崎提督が書類の山から引っ張りだした一枚の書類を見て、三日月はため息を付いた。 「こっちに回してくださいって言ってますよね。」 三日月の口調がやや変わる。 「今日突然来たんだから仕方ないだろ。」 蟻ヶ崎提督には反省の欠片も見えない。20 #NW鎮守府

2015-05-11 01:39:36
ヴィジ(ap1895)/C103 日曜東G-21b @mabo_to_fu

普段この手の書類を処理するのは、秘書艦の"仕事をする方"の三日月だ。 が、時折こうして提督本人が抜き打ち的に処理をする。 (また何か変なことを考えてる…) 三日月の右眉がピクリと跳ねた。21 #NW鎮守府

2015-05-11 01:40:43
ヴィジ(ap1895)/C103 日曜東G-21b @mabo_to_fu

そうして提督に処理された書類の内容は、得てして厄介なものだったからだ。 しかも、その厄介さも回を増す毎酷くなっていた。 『前回』に至っては、理由はあれど他の鎮守府を襲うにまで至った。22 #NW鎮守府

2015-05-11 01:42:17
ヴィジ(ap1895)/C103 日曜東G-21b @mabo_to_fu

その時、事の厳密な内容を知っていたのは提督と叢雲だけ。 怒りに駆られて計画に乗った三日月には、知らないことが幾つかあった。 "仕事をしない方"の秘書艦である叢雲は、その三日月の知らない裏話には必ず絡んでいた。 そして、それは必ず三日月に関わる事だった。23 #NW鎮守府

2015-05-11 01:43:26
ヴィジ(ap1895)/C103 日曜東G-21b @mabo_to_fu

叢雲は蟻ヶ崎提督の最初の部下。 傍目に見ても二人は相性が良く、強い信頼関係で結ばれているのは解る。 だが三日月、つまり蟻ヶ崎ヒナタににとって提督は兄だ。24 #NW鎮守府

2015-05-11 01:44:42
ヴィジ(ap1895)/C103 日曜東G-21b @mabo_to_fu

三日月も、兄と叢雲を同じ様に信じている。 これまでの"裏話"も、内容からして自分を想っての事だったのは理解していた。 それでも、妹である自分に隠し事をされるのは、"三日月"というよりは"ヒナタ"として、やはり余り良い気分ではなかった。25 #NW鎮守府

2015-05-11 01:46:36
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