廃棄物日誌 LOG:8

廃棄物13号@カクヨム連載中 @eibis_splicer

重傷とされたのは12.5インチ弾を四発腹に受けた泊地棲鬼、燃料気化爆弾で纏めて吹っ飛ばされた空母棲鬼と戦艦棲姫、提督を庇って被雷した愛宕と片腕を引きちぎられた睦奥の六隻。 他は軽傷または中傷と判断された。 「全員が中大破か…」スタッフが呟いた。 #廃棄物日誌

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「見た目はB-2、武装はA-10Aの爆撃機に姫クラスが瞬殺。F-14みたいなのには雪風がやられた」 「あれは戦争初期、人類対深海棲艦だった頃に深海が使ってた艦載機だよ。ウィキで見たことある」 「どのみち艦娘が相手するものじゃねーな」 #廃棄物日誌

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上の階層でスタッフ達がそんな事を言ってる間、下では。 「ホントにあれ空母ヲ級にゃん？まるで歯が立たなかったのん」「間違いないッス、あの容赦のなさはエンタープライズっスよ」山城とリ級が話している。 「でも狙いは私たちじゃなかったのも確かっス」「この様で？」 #廃棄物日誌

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リ級の言葉に耳を疑う山城。 隣のル級の首は骨にヒビが入ったらしくギプスをつけている。 睦奥や愛宕もボロボロだ。それで狙いは自分達ではないと聞けば、首を傾げたくなるのも無理はない。 「うちらも目標だったら今ごろ皆沈んでます。それぐらいあいつは強いんス」 #廃棄物日誌

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「やはり手加減していたか」起き上がる泊地。 「普段の奴なら、全員あのヨークタウンのようになっていたはずだからな」 胴体に大穴を開けられ、下顎から上が消失したヨークタウンの姿が山城の脳裏を過ぎる。 「笑えない冗談にゃん」「冗談ではない、あれで手加減してるんだ」 #廃棄物日誌

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「思ってたよりも強かったわね、山城」愛宕も起き上がる。 「傷は大丈夫にゃん？思いっきり大穴開いてたけど」「高速修復剤ってこれが怖いのよね」普通の人間どころかファンタジーの生き物でも即死しかねない ようや大怪我でも直してしまうのが高速修復剤の怖い所だ。 #廃棄物日誌

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「で、あのエンタープライズとやらは何者にゃん？ただの空母ヲ級ではないのは確かにゃん」 「エンタープライズはですね、大戦初期からずっと戦い続けてる01ナンバー最後の生き残りなんスよ」「01ナンバー？そういえば、お前たち名前の後に番号があるにゃんね」 #廃棄物日誌

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「あれは名乗った順番だ。あいつは「エンタープライズ」と最初に名乗った、あるいはその姿からそう名付けられた最初の空母ヲ級」 「泊地様やレ級といった連中は最近生まれたので01ナンバーが多いですが、エンタープライズは30年間ずっと戦い続けてるっス」 #廃棄物日誌

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「え！？鬼・姫クラスが深海棲艦の指揮官じゃないにゃん！？」 驚く山城。彼女たちが聞いている話では、泊地棲鬼を始めとする鬼・姫クラスは 深海棲艦の指揮官とされている。 「そうだ、ただ艦種に当てはまらない、戦艦でもあり空母でもあり巡洋艦でもある、それが私だ」 #廃棄物日誌

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「泊地様は艦娘に対抗する為に産まれた存在ですからね。軍艦を模した私達とは違うっス。泊地様たちの≪通常形態≫は、クジラに船体載せたような姿してるっス」リ級は続ける。 「じゃああのヲ級は、ずっと戦い続けてる超ベテランにゃん？」 「そうなるな。艦隊の最高戦力でもあった」 #廃棄物日誌

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「最高戦力、ねえ」睦奥が呟く。 千切られた腕は見つかったので高速修復材のジェルパックを内包した包帯で巻かれていた。 「提督にぶっ飛ばされてたけど？」 「あれは彼女が奴と対を成す存在になったからだ。人とお前らと我々全ての利点を持っている」 #廃棄物日誌

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「人間の柔軟な発想、艦娘の頑強性と馬鹿力、そしてウチらの適応力をあんたらの提督さんとエンタープライズは持ってるっス」 泊地に食いぎみに説明するリ級。 「スーパーマンか劣等生のお兄様にゃん…」「でもさー」山城の背後から伊勢の声。 #廃棄物日誌

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「提督なら倒せるって事だよね。つまりは私たちでも倒すのは無理でも撃退は出来るよね」 「お前正気か？奴は30年間ずっと戦い続けてる化物だぞ」泊地が驚いた様子で言う。 一方的に倒されたのに、伊勢は戦うつもりでいるからだ。 「当然よ」愛宕も頷く。 #廃棄物日誌

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「実体のない幽霊だときついけど、あの子は生きている。なら撃って斬れば死ぬはずよ」 「愛宕の言う通りにゃん。私達は佐世保処理場。30年間現役の空母ヲ級が相手でも倒せるなら倒しに行くのん」 「…信じられん、普通なら戦意など喪失してる筈だぞ」 #廃棄物日誌

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「空母が怖くて赤いきつねは食べれません」 「あのような強者、初見です。提督に譲るのが口惜しいくらい」 「やられっぱなしは癪だもの、お姉さんは執念深いわよ」 「相手が何だろうと、俺はジャムをやっつけるだけだ」 続々と再戦を望む声が上がる。 #廃棄物日誌

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「…やはり理解できん。いやだからこそお前たちに私達は負けるのだな。はっはっは、狂ってるよお前ら」 呆れが半分、驚きが半々といった感じで手を叩き爆笑する泊地。 「狂ってなきゃやってらんねえにゃん。レベル上げてもワンパンで大破するような世界にゃんよ？」 #廃棄物日誌

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「今回なんて田中が狂ったのか索敵値足りても逸れたりしたにゃん。しかもお前ら陣形関係なしに中大破させてくるわ艦載機の性能は狂ってるわそもそもうちらの火力と装甲が役に立たねえにゃん。狂ってなきゃやってらんねえのん」 意味不明な事を言い出す山城。 #廃棄物日誌

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「それから…」「分かった、とにかくお前らは殺る気満々なんだな。よし分かった。あいつの撃沈数を教えてやる。絶望と驚愕のスパイスになるだろうが、お前らなら期待のスパイスになるんだろうな。よく聞け」 #廃棄物日誌

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「通常艦船、軍艦から客船まで合わせて264隻。 BSG、139隻。 艦娘、98隻。艦娘を98隻も奴は沈めたんだ。ノースカロライナでも5隻。お前らは大破すると逃げるからな。 普通は放置してるが奴は追撃したのさ」 #廃棄物日誌

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「艦娘に何の恨みがあるのよ…」 「恨みなんてないさ。ただそこに居るから殺す。お前らと同じさ」 「もっと楽しくなりました。私の目に狂いはなかった」「とても美味しそうです」「あう！つよいこ！そーりゅーだいすき！」加賀、赤城、蒼龍が笑う。 #廃棄物日誌

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「何隻沈めてようが空母ヲ級は空母ヲ級よ。斬って撃てば倒せるのは変わらないわ」 「なら、もっと強くなってもらおう。お前たちと提督は奴を止められる唯一の存在なんだからな」 泊地はそう言うと、寝転がる。 「喋りすぎた、寝る。詳しい話はノースカロライナに聞いてくれ」 #廃棄物日誌

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「え！？ちょっと棲鬼様！？」 驚いて飛び起きるル級。当の泊地は既に夢の中だった。 「えーと、何か聞きたい事って」 「無いにゃん」即答である。そして山城たちも糸が切れた人形のように眠りについた。 #廃棄物日誌

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それを上の階から提督と叢雲が見ていた。 「皆殺る気ね」「当然よ。コテンパンにされて逃げるなんて嫌」 叢雲は鼻をフンと鳴らす。 「次は逃がさないわ」 「勿論、次は必ずぶっ殺して差し上げるわよ…うふ、うふふ…」口を押さえてクスクス笑う提督。 #廃棄物日誌

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「近く遠い隣人との再会」終わり Next 「非日常と日常の境界線」 #廃棄物日誌