鞘(さや)と仕込み刀について(&小話:鞘と刀で見る武士としての心構え) 古武術 天心流兵法

日本刀の鞘(さや)と仕込み刀について、古武術 天心流兵法(@tenshinryu )様がお話くださった内容のまとめです。(古武術 天心流兵法様よりお許しを頂きましてまとめさせて頂きました。この場を借りまして感謝の意を表させて頂きたいと思います)
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(略)また何事においても同じですが、一つの文献でそれが普遍的なものであったと断定するのも危険な事です。──古武術 天心流兵法様のお言葉より

古武術 天心流兵法 @tenshinryu

抜刀後に鞘を落としておく事で、「腰の守りとする」という教えがあります。 剣術で袋竹刀(天心流では丸太刀と呼びます)や木刀(天心流では木太刀、木剣と呼び)では鞘がない(今は鞘木刀が安く手にはいるので使っておりますが)ため、気づきにくいのですが、斬り合いで案外鞘は邪魔になります。

2015-05-04 05:38:01
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

佐々木小次郎が鞘を捨てたのに対して、宮本武蔵が「小次郎敗れたり!!」と言葉戦い (詞戦や言戦とも)のような話がありますが、慣れないと捨てたくなる程度に鞘は邪魔です。 佐々木小次郎が初心者ということはないでしょうが。

2015-05-04 05:43:32
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

明治以降に成立し、伝書(三巻からなる和書)には付伝として最後に付け足されていたのが、仕込の技法です。 これは先蹤(応用の意)の事として、香具師の世界で用いられるために新たに工夫されたものです。 ただ、そもそも仕込刀というのは江戸期から存在するものです。

2015-05-04 05:58:25
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

それらを特に仕込みの技法として独立させたのが、明治期に確立した仕込みの技です。 この仕込みの技法では、「鞘を木刀と思って使え」という教えがあります。 ところがこれはあくまで仕込みの技法での教えで、武士としての技ではそのように申しません。

2015-05-04 06:00:28
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

鞘返しなどに代表されます、鞘を用いる技法はありますが、基本的には鞘が損傷しないような扱い方で、鞘を木刀のようには使いません。 鞘ぐるみ(納刀した状態)で用いる技法には、危急の際の事であり、鞘の造りによっては損傷も起こり得るものもあります。 が、基本的には鞘は大事とします。

2015-05-04 06:04:30
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

なぜなら、武士は基本的に、抜いた刀は納めなければならないからです。 天心流が新陰流の分流でありつつ、抜刀術を初学より徹底的に指導するのは、実際は剣術のような、斬り合い未満の、抜きの初太刀や二之太刀で決まることも多いという事があります。

2015-05-04 06:07:06
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

とっさに切りかかられた時、抜刀も出来ず斬られれば、以下に剣術を磨いても用を成せません。 飛行機の事故は離陸と着陸の魔の11分間と言われていますが、やはり抜刀せんとする時と、納刀時が極めて危険なのです。

2015-05-04 06:11:27
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

という現実的な側面もありますが、もう一つの武士としての心構えの側面があります。 つまり、武士たるもの戦いの備えと、争い終えて治める(納める)事を知らなければならないという教えです。

2015-05-04 06:13:02
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

古武術 天心流兵法~四之動画~ 抜刀術・剣術 youtu.be/Z4juZNWPWEU 納刀時、切っ先が鯉口(鞘の入り口の部分。鞘口などとも)に入った後、一瞬だけ間があります。 演武なので少し納刀が速めだったり、略納刀・速納刀は即入れ、投入れもありますが

2015-05-04 06:16:33
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古武術 天心流兵法 @tenshinryu

基本の納刀では、切っ先三寸(九センチほど)が入ったら、後はゆっくりとゆっくりと納刀していきます。 これは残心(文字通り戦い終えて気を緩めず、心を戦いに残すという程の言葉です)という意味合いと共に、もう一つ重要な教えがあります。 それは刀身の曲がりに注意するという事です。

2015-05-04 06:19:03
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

あからさまに曲がっていれば気づくかもしれません。ですが分かりにくい程度であったり、また実際の斬り合いで心が動揺していれば、大きな曲がりも気づかない恐れがあります。 いずれにせよ、勢いで鞘に放り込むと、鞘が割れてしまう事になりかねません。

2015-05-04 06:20:47
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

まともに鞘に納められない状態、抜き身では町中は歩けません。 お役目の途中ならばあらゆる意味で問題となります。 だから鞘は可能な限り大切にする。 治める事が武士の役目であり、争いそのものは手段であり目的ではない。 これが活人剣を新たに示した柳生宗矩公より伝わる天心流の教えです。

2015-05-04 06:24:29
古武術 天心流兵法 @tenshinryu

なので、仕込みの場合は士分を離れた話なので、鞘は最大限活用し、本来の刀の技法では、鞘を最大限活用しつつも、出来うる限り大切にするという差が教えに出ているのです。 なので出来れば邪魔だと鞘を捨てず、動きに障りなく、かつ腰の守りともするという教えが、抜刀後は鞘を立てよというものです

2015-05-04 06:30:21