ながマギまとめ③

ながマギ14話~ まとめてます。
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マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

魔法少女ながとマギカ・継 第14話 はじまるよ~

2015-05-06 00:04:33
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「長戸、お前はまだ、俺が死ぬと思っているのか?」 帰り道突如投げかけられた問いに、しかし長戸は特に驚くこともなく、ゆっくりと頷いた。 「そう、か…」 「…怒ってるかい、金ちゃん」 「いや、にわかには信じ難ぇ話だと思ってな…」

2015-05-06 00:04:55
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

ある日突然、長戸が金次郎の死を予言するようになった。俺が必ず守るとか白い生き物には気をつけろとか、突飛な事をいう長戸を、佐山をはじめとした黒正義の面々は気味悪がって避けるようになっていた。金次郎だけは、己の死を宣告されているのに嫌な顔一つせず、長戸を遠ざけることもしなかった。

2015-05-06 00:05:06
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「お前を疑っちゃいねえんだが、どうにも俺が死ぬって話は信じられねぇ」 「…そうだよな、今までもそうだった」 「今まで?」 「何でもないよ金ちゃん、俺が守るから、金ちゃんは気にしないで」 「そんなこと言われて、はいそうですかと言う奴がいるか」

2015-05-06 00:05:20
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「長戸、お前は何でそんなことを知っているんだ?」 「…」 「何故答えない?」 「…」 「答えられない理由があるのか?」 「…何がきっかけで因果が変わるかわからねぇ」 「お前は未来から来たのか?」 「…すまねぇ金ちゃん、それ以上は、危ない」

2015-05-06 00:05:33
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

この問答は既に幾度となく繰り返されている。その度に長戸は曖昧な回答を示し、金次郎に確証を与えない。 「大丈夫だ、金ちゃん。俺がきっと、必ず、運命を変えてみせるから、だから…」 祈るような、縋るような、懺悔するかのような声で、長戸が金次郎の前に膝を折る。

2015-05-06 00:05:44
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「俺を、信じてほしいんだ…。金ちゃんが信じてくれるだけで、俺はどんなことだって出来る…」 精魂尽き果てたようなどろりとした目を細め、うっそりと微笑む長戸に、金次郎はいつもそれ以上言葉を投げかけることが出来なかった。帰路が分かれるところまで、2人は無言で歩き続けた。

2015-05-06 00:05:55
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「じゃあな、長戸」 「うん、金ちゃん、また明日」 軽く手を振り、金次郎は自宅に向かって駆けて行った。その後ろ姿を、長戸は見えなくなるまで眺めていた。 「また、明日…」 誰に向けてでもなく、独り呟く長戸の背後に、小さな影が迫っていた。 「明日は何をするんだい?ナガト」

2015-05-06 00:06:07
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「…お前に話すことは何もねぇ」 「前に僕が話した、仮説を前提とした君の存在定義について、感想を聞きたいんだ」 「失せろ」 吐き捨てるように言い放ち、その場を後にする。 「やれやれ、君に警戒される謂れは全くないはずなんだけどなぁ」 大きな尾をゆらりと揺らし、それは長戸の後を追った。

2015-05-06 00:06:17
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「君が背負う絶望と、キタエダキンジロウが背負う因果、この2つは無関係なはずがない。君に何かが起こる時、キタエダキンジロウにも何かが起きる」 「何も起こさせねぇ。その為だけに、俺は居る」 「それは、『何も起きなかった先』で君は無に帰すということなのかい?」 「…さあな」

2015-05-06 00:06:26
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「俺は、終わらせたくないだけだ…その先のことなんざ、どうとでもなればいい」 どうでもいい。本当に。とにかく、進んでほしいのだ。愛しい人に、先へ、先へと。 「金ちゃんが明日も、明後日も、笑ってくれれば、それでいいんだ」 たとえその隣に、自分が居なくなったとしても。

2015-05-06 00:06:38
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

両親の顔は知らない。本当の名前も、そもそも名前があるのかさえも。北枝金次郎という名を与えられてから、北枝金次郎として生きる。それが北枝金次郎の日常であり、その日常がこれからも続いていくのだと、何も疑うことなく生きて来たのに。

2015-05-06 00:45:58
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「金ちゃんは俺が必ず守るから!!!!」 青天の霹靂とはこのことである。自分に死が迫っていると突然突き付けられて、それをすんなりと受け入れられる人間が、はたしてこの世界にどれほどいるだろうか。少なくとも、北枝金次郎はその類ではなかった。 「ばっきゃろおおい!!!」

2015-05-06 00:46:07
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

死の解釈は様々存在するが、北枝金次郎が考える『死』とは、『北枝金次郎の喪失』であった。それ以上言い様がない。要するに、自分が死ぬことなどまだ少しもピンと来ないのだ。まだ老いてもいない、病に冒されてもいない、発展途上の心と体は、未来しか見えなかった。そう、未来しか。

2015-05-06 00:46:44
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

考えるよりも先に体が動いていた。交差点の中心。小さな犬。目の前には、タイヤの溝。溝の中の砂利まで鮮明に見える。ゆっくり、ゆっくり、スローモーションで迫ってくる。 (あぁ、俺は、ここで) 「金ちゃん!!!!!!!!」 世界を裂くような怒号が響き、止まりかけた思考が蘇る。

2015-05-06 00:47:12
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「金ちゃん!!!立って!!走って!!!!!!」 その声に、無我夢中で体中の細胞を奮い立たせた。 「う、ぎ、ぐぎぎぎぎぎぎいいいい!!!!!」 右手左手右足左足の動かし方、なんて、お上品な事言ってられない。とにかく動け、動け!! 「あああああああああああああ!!!!!」

2015-05-06 00:47:44
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「馬鹿野郎!危ねぇぞ!!」 クラクションに混じって聞こえる、男の怒声。爪先のほんの数センチ先には、黒々とアスファルトに引かれた黒い線。ゴムの焦げた臭いが鼻をついた。 「…は、…あ…」 懐から何かが飛び出した。ぶるると身震いして、どこかへと駆けて行った。 「い、きてる…」

2015-05-06 01:23:55
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

金次郎は、交差点の端に尻もちをついていた。掌を少しすりむいていたが、それ以外は全くの無傷であった。 「助かったのか、俺は、何で…―」 「ぎんぢゃん!!!」 答えが出るより先に、長戸が金次郎に駆け寄り、その体を抱きすくめた。 「長戸…!」 「金ぢゃん!!金ぢゃあああああん!!!!」

2015-05-06 01:24:07
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「長戸、お前の声がして、それで俺-」 「ああああああ!!!!金ぢゃああああああ!!!」 「な、が…」 何であそこにいたんだ、お前の声が聞こえたら体が急に動くようになったんだ、お前の言った通り本当に死ぬところだった。言いたい事が山ほどあるのだが、あまりの長戸の様子に、言葉が出ない。

2015-05-06 01:24:29
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「よがっだ…よがっだ、金ぢゃん…!!俺は、俺は、これで…!!」 「長戸、落ち着いてくれ、一体何がどうなって…―」 ビキッ 無機質な音が響いた。次の瞬間、むせび泣いていた長戸がぴたりと静まった。音がした方向。それはとても近かった。ちょうど、自分の耳元くらいの近さ。

2015-05-06 01:25:19
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「良かった、金ちゃん、本当に…」 先ほどとは打って変わって、荒波が凪いだように穏やかになった長戸の声。何故かそれが怖かった。ゆっくりと抱擁が解かれる。今、長戸がどんな顔をしているのか、それを見るのが怖くなった。 「長戸…」 その顔は微笑んでいた。いつもの、長戸がそこにいた。だが、

2015-05-06 01:26:16
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「お前、そんなモンつけてたか…?」 長戸の左耳に輝く、赤黒い物。罅が入っていて、今にも割れそうだった。先ほどの音はこれに罅が入った音だろうか?だとしたら何とか弁償出来ないだろうか。いいやまずは助けられた礼だな。逡巡する金次郎に、長戸が口を開いた。 「金ちゃん、さようならだ」

2015-05-06 01:27:24
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

魔法少女ながとマギカ・継 第15話へ続く

2015-05-06 01:27:46
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

魔法少女ながとマギカ・継 第15話 はじまるよ~

2015-05-07 23:08:16
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

空気が、変わった。ねっとりと、肌にまとわりつく不快な風が、長戸に向かって吹いている。 「う、う、う、う、」 「どうした!?どこか傷めたのか!?」 「ちが、金ぢゃ、俺から離れ…!!」 「ナガトから離れて、キタエダキンジロウ」 突如背後からの声に、金次郎は弾かれたように振り返る。

2015-05-07 23:08:50