ながマギまとめ③

ながマギ14話~ まとめてます。
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マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

振り返るとそこには、白い狐のような、紅い目をした生き物が鎮座していた。頭の片隅に追いやっていた記憶が呼び覚まされる。 「白い、生き物…!長戸が言ってたのは、お前か…?」 「僕のことはどうでもいい!早くナガトから離れて!君も巻き込まれてしまう!」 「ぎんぢゃん…っ、に、げ、―」

2015-05-07 23:09:10
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

苦悶の表情で、長戸は必死に金次郎を押しやる。しかしそれが、かえって金次郎の不安を煽ってしまっていた。 「ダメだ!こんなお前を置いて行けねぇ!気をしっかり持て!」 「―ッ!」 「大丈夫か?長、と、!?」 突然、金次郎の体が宙に浮いた。と同時に、凄まじい勢いで弾き飛ばされた。

2015-05-07 23:09:19
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「長戸!!!」 叫びも虚しく、長戸から一気に引き剥がされる。そのまま金次郎の体は近くの電柱に叩きつけられた。 「が、っは……」 「なんてことだ!そんな状態で更に魔法を使うなんて!更に穢れを溜め込んでしまう!」 白狐が声を張り上げた。 「そのまま魔女になるつもりかい!?」

2015-05-07 23:09:30
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

激痛で朦朧としかけた意識を必死に繋ぎとめる。しかし、体が動かない。今、白狐は何と言った? 「ま、ほう…?まじょ…?」 「ものすごい穢れと絶望の渦だ…!今まで観測したことがない!やっぱり僕たちの仮説は正しかったんだ!」 歓喜の声色を上げる白狐の姿の、その先。必死に目を凝らす。

2015-05-07 23:09:40
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

霞む視界の先。そこには、項垂れたまま微動だにせず、今にも黒い影に飲み込まれそうな長戸の姿があった。 「長戸!!」 肺を押す激痛を押し殺し、必死に名を叫ぶ。すると、その声が届いたのか、ゆっくりを頭が持ち上がる。 「金ちゃ、よか た…ごめ、なぁ、加減、出来なく てよ、痛 ったろ?」

2015-05-07 23:10:51
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

途切れ途切れ聞こえる長戸の声。その表情は、驚くほど穏やかだった。見間違いでなければ、笑みを浮かべている。 「長戸ッ、待ってろ…!今、助ける!」 「無理だよ」 2人の間に、無慈悲な声が響く。 「ナガトを助けることは不可能だ」 「なっ!?」 「……インキュベーター」

2015-05-07 23:11:15
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「長戸を助けられねぇって、どういうことだ!」 「ナガトは君を助けるために3つも魔法を使った。時間を遅滞させる魔法、遅滞させた時間の中で君の時間だけを正常に動かす魔法、君の身体能力を向上させる魔法」 「…あ?」 「既に限界まで穢れ切ったソウルジェムに、遂に限界が来てしまったんだ」

2015-05-07 23:11:27
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「い、言ってる意味がわからねぇ」 「これで最後の謎が解けた。何故君だけが因果の糸を集めてしまっているのか。君は糸を集めていたんじゃなくて、君が糸の起点だったんだね、キンジロウ」 「言ってる意味がわからねぇ!!」 金次郎の理解力を遥かに超える話の内容に、遂に堪忍袋の緒が切れた。

2015-05-07 23:11:40
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「つまりどういう事なんだ!!」 「や、め ろ…インキュ ー…ター…、言う、な…」 「ナガトは君を助けたかったということさ。その為にあらゆる犠牲を払ってきた。自らの人生、存在し得た無数の世界。そしてその結末が、今、この瞬間ということさ」 「……言ってる意味が、わからねぇ…」

2015-05-07 23:12:26
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「長戸が犠牲に…!?どういう…」 「恐らく最初の世界で、ナガトはこう契約したんだろう。『キンジロウの死の瞬間をやり直したい』。これまでの世界ではそれが達成されず、時間遡行が繰り返されてきた。ナガトただ一人が全ての記憶を引き継いでね」 「俺の、死…」 「でもそれがいけなかった」

2015-05-20 22:47:46
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「時間遡行はキンジロウの死の因果を上塗りし続け、ナガトの願いの成就を困難する結果となった。とても皮肉だね。君もいつからかは気付いていたんだろう?ナガト」 「…!長戸…お前…」 「いい だ、金ちゃ ん…俺はもう、これで」 「何がだ!!いいわけないだろ!?」 「これでいいんだよ」

2015-05-20 22:48:07
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

じりじりと長戸に這い寄ろうとする金次郎の前に、白狐が悠然と立ちはだかる。 「キンジロウ、わからないのかい?ナガトの悲願はようやく果たされたんだ」 「悲願…?」 「ナガトは限界を超えて魔法を使い、そして遂に君の死の因果を断ち切ったんだ。これはとても素晴らしいことなんだよ!」

2015-05-20 22:48:25
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

心の底から偉業を寿ぐ白狐。何がそんなに嬉しいのか、金次郎にはこれっぽっちも理解できない。 「そしてナガトはこれから、人類史上最大最悪の魔女になるんだ」 「……魔女?」 「限界を迎えた魔法少女の、その先の姿さ。君には説明しても理解できないと思うけれど」

2015-05-20 22:48:38
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「確かに何のことかわからんが、大丈夫なのか?苦しんでいるように見えるが…」 「そりゃあ苦しいさ!穢れと絶望の渦が一気に押し寄せているからね!ナガトの場合、これまで遡行を繰り返してきた時間軸分もソウルジェムが記憶していたようだから、その苦しみは想像もできない!」

2015-05-20 22:48:48
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「並の魔法少女だったらとても耐えられなかったけど、遡行を繰り返して因果を収束させたことで君自身の魔法少女の素質も高まってしまい、そして今君はその計り知れない穢れと絶望の渦に耐えることが出来てしまっている」 「おい…それはいいことなのか?」

2015-05-20 22:48:59
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「もちろん!とても素晴らしいことだよ!やっぱり君たちを観測し続けてよかった!このデータは今後の人類との交渉にとても参考にできる!」 「…ナガトは、どうなる?」 「魔女になるんだよ」 「魔女とやらになって、それからどうなる?」 「どう…?」 金次郎の問いに、白狐は小首を傾げる。

2015-05-20 22:49:09
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「どうにもならないよ。魔女は魔女のまま、魔女の役割を果たすんだ」 「役割…?」 紅い瞳がぬるりと光る。 「呪いを撒くのさ」 「…呪、い?」 「呪いを撒くのが魔女の役割なら、魔女を倒すことが魔法少女の使命さ。ナガトの場合、その使命を果たすことなく魔女になる結果となったけど」

2015-05-20 22:50:02
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「ナガトは偉大な魔女になる。ナガトを倒すために、大勢の魔法少女がこの地に集まるだろう。きっとまた素晴らしいデータを観測できるはずだ!」 「…何だよ、それ」 全身の痛みも、頭に昇った血も、全ての感覚が遠のく。 「何も素晴らしくねぇじゃねぇか…!」

2015-05-20 22:50:15
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

ガチガチと歯が震えてうまく喋れない。怒りが、体を支配している。 「ふざけるな…何でもてめぇの思い通りになると思うなよ…!!」 「なぜ怒るんだい?ナガトは君を救うために、自ら魔法少女になることを選択した。その願いは達成され、君は死の運命を回避することが出来た。何が不都合なんだい?」

2015-05-20 22:50:47
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

「ッてめぇは!地球ごとくたばりやがれ!!!」 金次郎は、魔法がどうとか魔女がどうとか、そんな話は少しも理解できなかった。ただ1つわかったことは、自分のせいで長戸が苦しんでいるということ、それだけだった。 「俺が、俺のせいで…長戸…!!」

2015-05-20 22:51:00
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

金次郎の視線の先には、赤黒い渦だけがうねっていた。最早姿すら見えなくなっており、声が届いているかもわからない。しかし、金次郎の声が届いている存在が、1つだけ在った。 「ナガトを救いたいと、キンジロウ、君は願うかい?」 それはいつかの世界で起きた、いつの日かの再現のようだった。

2015-05-20 22:51:46
マイネームイズくろこ @kuroko8o8o

魔法少女ながとマギカ・継 第16話へ続く

2015-05-20 22:52:10