「ストレンジャー・ストレンジャー・ザン・フィクション」 #4
あらすじ:ダイダロス亡きネットワークに張り巡らせたナンシー・リーの壮大な偽装工作は、ついに宿敵ラオモト・カン暗殺の時を手繰り寄せる。浮世絵イラストレーター、アガタと孤独をわかちあったニンジャスレイヤーは、その余韻に浸る間もなく、再び殺戮の中へと身を投じる……
2010-12-23 18:54:16バンダ環状線を滑る様に走行するそのリムジンバスは、トレーラーよりも長い。ルーフパネルは黄金の瓦屋根になっており、交差したカタナのエンブレムがそこかしこにレリーフされているだけでなく、その四隅には、ドラゴン、ゴリラ、タコ、イーグルという平安時代の四聖獣の像が睨みをきかせていた。
2010-12-23 19:05:35ルビー色の車体は五重のパール塗装で、これには特殊な漆塗りの技法が用いられている。ガラス窓はすべて真っ黒にシールドされており、それはこのリムジンの前後左右の車両も同様だ。
2010-12-23 19:08:12いかにも。この車両こそは、トコロザワピラーから日夜ネオサイタマを睥睨し、非情な買収工作を繰り返して権力の頂点に立つ存在、ラオモト・カンの送迎車に他ならぬ。
2010-12-23 19:13:50バズーカ砲の砲撃すら受け付けぬリムジンの中では、邪悪なメンポとニンジャ頭巾を身につけたスーツ姿の男が、タマムシ色の半裸めいたドレスを着た三人のオイランに、かわるがわるウメボシ・マティーニの酌をさせている。
2010-12-23 19:22:31スーツの男は、いうまでもなく、ラオモト・カンである。彼がマティーニを傾けるたび、メンポは精緻なメカニズムによって展開し、飲食を可能にする。タクミ!
2010-12-23 20:02:47この日ラオモトはいつにもまして上機嫌であり、雄大であった。「ムハハハハ!ムッハハハハ!」彼はオイランの一人の胸を揉みながら、アルコール度数97パーセントのウメボシ・マティーニを再度オカワリした。対面ではオブシディアン色のニンジャ装束の男が無言で着席している。ダークニンジャだ。
2010-12-23 21:24:17「俺様の見立てでは、もう1クォーターは必要になろうかという見通しであったわ。金融機関はソクシンブツじみた古老社会だからな。ゆえに、今回の内部クーデターはまさに二階からボタモチ!タイムイズマネー!ムハハハハハ!」「ハイ」ダークニンジャは無感情に同意する。彼はオイランを寄せ付けない。
2010-12-23 21:43:29「何か気がかりでもあるのか、ダークニンジャ=サン」ラオモトはオイランを突き飛ばし、身を乗り出す。ダークニンジャは無感情に答える。「……風向きが」「ポエット!ムッハハハハ!」ラオモトは笑った。「だがオヌシの詩情は侮れぬものよ、ダークニンジャ=サン」
2010-12-23 21:53:41ラオモトのリムジン編隊の数台後ろを行くワカメ輸送機カーゴの上にぴったりと寝そべり、追跡する者があった。ニンジャスレイヤーである。
2010-12-24 00:11:24後続車両のルートがリムジン隊から外れるたび、ニンジャスレイヤーは最小限の動きで別車両のルーフへ飛び移り、追跡を維持。やがてリムジン隊は料金所に差し掛かるが、まるで当然の様にゲートを無視する。彼等は無礼講なのだ!
2010-12-24 00:20:01一般車両はそうはゆかぬ。「正しく支払うべき」とミンチョ体で書かれたフラッグが行く手を厳しく塞ぎ、コインスロットが注意深く、運転席の窓ガラスの高さにあわせて迫り出してくるのである。
2010-12-24 00:22:56ニンジャスレイヤーは取り付いた車両の支払い行為におめおめ付き合ってはおられぬ。ブレイコウしたリムジン隊が遠ざかるのを指をくわえて見送るかわりに、彼は支払いを済ませてゲートを通過した別車両へ、素早く飛び移った。
2010-12-24 00:25:22一般道を走行しながら、リムジンを囲む四台のオムラ自動車製高級セダン「ハヤテウルフ」のうち二台が隊から離れ、ウインカーもそこそこに、脇道へ消えていく。ゴブギ配達チェーンのアルミ荷台に寝そべりながら、ニンジャスレイヤーはそれを一瞥する。
2010-12-24 00:51:08#GOISAZ:morita : リムジン隊が二台切り離した。何か情報は。/// #GOISAZ:ycnan : わからないがGAMEはリムジン内、変わりなし///
2010-12-24 00:55:29やがて車はマルノウチ地区へ差し掛かる。前方にはスゴイタカイビルの威容。ニンジャスレイヤーの心はざわつく。……フユコ。トチノキ。仇はもうすぐだ。
2010-12-24 01:02:56ゴアイサツサマ生命は、平安ゴシックの建築様式を用いたデカダンなスタイルの社屋で知られる。ニンジャスレイヤーは後続車両から飛び降り、リムジン隊が「裏口」と書かれた巨大なノレンの下がる地下駐車場エントランスへ吸い込まれていくのを見届けた。
2010-12-24 01:26:45ニンジャスレイヤーは背中のフロシキ包みを解くと、中からハンチング帽とトレンチコートを取り出し、一般人に偽装した。そして生命保険の見直しへ訪れたカスタマーめいた足取りで正門へ向かう。「ゴアイサツサマ生命はとても皆さんを大事にする」と書かれた巨大なノレンをくぐり、ロビーを横切る。
2010-12-24 01:35:11#GOISAZ:morita : 到着し、ロビー。/// #GOISAZ:ycnan : 差し向けます///
2010-12-24 01:41:03すぐにゴアイサツサマ生命のチョンマゲ社員が迎えに現れた。非合法手段で一時的に執行役員権限を取得しているナンシーの指示だ。チョンマゲ社員は目の前の客の身分を疑るような目線を完全には隠しきれていないが、それでもプロである。丁寧で奥ゆかしい口調でニンジャスレイヤーを促す。「こちらへ」
2010-12-24 01:45:15