「ハンター・インストラクション」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「確か那珂さん旗艦の遠征艦隊がそろそろ帰還するはずです」大淀は悲壮な決意を固め、言った。「私なら、足止め位なら…」「イヤーッ！」大淀の言葉を遮るかのように、海からカラテシャウトが轟き、青と白の矢が突撃する！「AGRR！？」不意打ちのトビゲリを受け、ニ級が１体体勢を崩す！ 30

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「GRRR…」残る２匹のニ級はアンブッシュを仕掛けた者に向き直る。トビゲリを仕掛けた者は蹴りの反動で連続でバク転しつつ、着地した。そして、着地の勢いを利用し、アイサツした！「ドーモ、吹雪型１番艦・吹雪です」 「ARRGH！」「ARRGH！」KBAM！KBAM！「イヤーッ！」 31

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「吹雪さん！？」砲撃をサイドステップで避ける吹雪を見て、大淀は静止しようとする。「無茶です！まだ改装してないあなたに、ニ級３匹は荷が！」「無手よりはマシです！」撃ち返しながら、吹雪は反論する。「逃げてください！こいつらは」吹雪は水雷カラテを構えた。「私が、やっつけます！」 32

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大淀は一瞬逡巡した。だが、無手の自分が戦うよりも、艤装を装備した彼女の方が絶対的な分があると判断し、明石の手を引いて撤退した。吹雪はそれを横目で見つつ、自分に突進してきたニ級をジャンプで避ける。「AGRRH！」「イヤーッ！」跳躍すると同時に「不如帰」のPVC垂れ幕を掴む！ 33

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「イヤーッ！」PVC垂れ幕を強く引き、吹雪は再跳躍！一瞬後、ニ級の砲撃が吹雪の居た場所を掠めた！高度を稼いだ吹雪は己の真下に居るニ級を、そして荒れ果てた出撃ドックを見据えた。（倒す）吹雪の胸中には、敵への怒りが燃え上がる。何故だか分からない。だが怒りが、吹雪の闘志を燃やす！ 34

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倒れ伏す整備員の骸が、逃げ惑う人々の声が、大淀の悲壮な決意の顔が、何故か浮かんでは消える。（絶対に、倒す！）吹雪はそれらを振り払い、魚雷発射管を起動した！天井を背にした姿勢により、魚雷発射管は地面を、即ちニ級に照準を向ける！即ち！魚雷を落とすのだ！爆撃めいて！「イヤーッ！」 35

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６本の魚雷は、寸分違わず真下のニ級へと落ちていった！ニ級は両腕で跳躍し避けようとする！吹雪はその行動を見逃さない！「イヤーッ！」KBAM！12.7連装砲による一撃が、魚雷を穿ち、爆発させる！それにより、周囲の魚雷も誘爆した！KABOOOOOM！「AGRRRH！？」 36

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ニ級が跳躍したその瞬間、魚雷は爆ぜた！跳躍により逃れるはずが、逆に自ら爆炎の中に身を投げてしまったのだ！ナムアミダブツ！黒煙立ち込める地面へと、吹雪は着地する。同時に、跳躍したニ級が落ち、爆発四散した。（まずは１体）吹雪は水雷カラテを構え直す。（後は２体） 37

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然り。これで終わりではない。「GRRR！」「GRRR！」黒煙の中から、二匹のニ級が跳躍し、吹雪に襲い掛かる！「イヤーッ！」吹雪は連装砲を撃ちながら前進する！KBAM！KBAM！砲弾は命中したが、鈍い音を立て弾かれる。（装甲が硬い）吹雪はニ級の下を掻い潜る。 38

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だが、掻い潜ったその瞬間！ニ級はもう片方のニ級を腕で押し、地面へと叩き落とした！吹雪がその行動を訝しむよりも早く、地に落ちたニ級は両腕で地面を押さえつけ、直ぐ様吹雪に向け手を伸ばした！「しまっ！？」跳び逃れようとするが、距離が近いうえに、ニ級の方が速い！「ンアーッ！？」 39

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吹雪は瞬きの間に、ニ級の手の内に捕らえられてしまった！ウカツ！敵の狡知にまんまと引っ掛かった格好である！「ン…ンア…！？」握る力が次第に強まる。吹雪の体を頭だけ出して掴んだその手の握力は、実際凄まじい！このままでは、為す術もなく吹雪はニ級の手の内でトマトめいて潰れてしまう！ 40

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「イヤーッ！」吹雪はどうにか全身に力を込めて抵抗する。だが、質量差による膂力差は、如何ともし難い物であった！（このまま、死ぬの…？）吹雪の脳内でソーマト・リコール現象が起こる。（私はまだ、私自身を、エゴを見つけていないのに、死ぬ？…そんなの、まっぴらだ！）「イヤーッ！」 41

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吹雪はあくまで抵抗を続けた。死への忌避感が彼女のカラテを奮起させる。ニ級は予想外の抵抗に、握り潰すのを諦めた。代わりに口を開き、口腔内の５インチ連装砲を吹雪に向けた！「……！？」狙いは寸分違わず、吹雪の頭。おお、ナムサン！吹雪はこのまま頭を吹き飛ばされて死んでしまうのか！？ 42

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迫り来る死を予感し、吹雪が硬く目を閉ざした、その時！「イヤーッ！」「イヤーッ！」「イヤーッ！」ドック搬入口から二つ、海から一つのカラテシャウトが響き、３人の戦士が矢のように突入してきた！最初に突入してきた暗蒼色の戦士は、吹雪を捕らえるニ級に近づくと、背の武器を抜いた！ 43

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「イヤーッ！」抜き放たれた蒼碧色の刃は、黒い稲妻を伴いニ級の筋肉を切り裂き、腕を切り落とす！SLAAAASH！「AGRRRH！？」切断面から青黒い血を流し、もんどりうって倒れるニ級！「イヤーッ！」着られたことで力が弱まったことを感じた吹雪は、素早く拘束から脱出した！ 44

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着地した吹雪は、暗蒼色の甲冑を纏った男を見た。吹雪は、その男を知っていた。「司令官！？」「おう、遅くなったな」振り向き、リカルドは獣めいて笑った。「ようやく俺の得物が返って来たと思ったら、早速使う機会があるとは思わなかったぜ」手にした剣を構えながら、リカルドはぼやいた。 45

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「イヤーッ！」「イヤーッ！」「AGRRRH！？」リカルド達の後方。もう一体のニ級は二人の艦娘に嬲られていた。「もぉ…那珂ちゃんがいない時に鎮守府でオイタしちゃうだなんて…」歯ごと装甲を毟り取り、那珂は酷薄に言った。「許さないよ？」「その通りです」那珂の言葉に神通が同意する。 46

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「どうやって警戒網を掻い潜ったかは知りませんが」右腕の14cm単装砲群で腕を砕きながら、神通は憤怒の形相で呟く。「これ程の狼藉。100万回滅ぼしても足りません」「と言う訳で～」「AGRR!?」那珂は片腕でニ級を持ち上げ、海へ向けて放り投げた！「那珂ちゃん達と遊ぼうか」 47

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海へと投げ捨てられたニ級へ向け、神通と那珂は駆ける。駆ける途中、那珂はリカルド達に声をかけた。「あ、そっちのニ級は任せたよー……イヤーッ！」「イヤーッ！」嵐のように去って行った二人を見送り、リカルドと吹雪は構え直した。「よく一人で持ちこたえた」リカルドは吹雪を称えた。 48

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「いえ…結局やられかけましたし」「だが、俺達は間に合った」吹雪の恐怖を解すように、リカルドは励ました。既にニ級は切断された腕を再生し、戦闘準備を完了させていた。「此処からは俺達二人だ…勝つぞ！」「はい！」「GRRR！」KBAM！「イヤーッ！」「イヤーッ！」 49

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砲撃を避け、リカルドと吹雪は二手に分かれた。「イヤーッ！」「イヤーッ！」二人は、ニ級の胴体に滑り込むように突進し、すれ違いざまに腕を切り裂く！リカルドは剣で右腕を、吹雪はチョップで左腕を！「AGRRRH！？」右腕が斬り飛ばされ、左腕も半ば程裂かれたニ級は再び倒れる！ 50

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「さて、流石にコイツじゃ殺せんようだな」後方に回ったリカルドは自分の得物を見てぼやく。深海棲艦はその殆どが有象無象の怨念が海中で沈没船などと結びつき物質化した存在である。故に、物理攻撃は通用するが、殺すことはできない。殺すために、否、滅ぼすためには艤装による攻撃が最良だ。 51

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「でも、私の連装砲はアイツの装甲を穿てません」吹雪は自身の連装砲を見てぼやいた。「口の中にでも撃ち込めれば」「いや、そんなことせんでも直ぐ終わるんじゃねぇか？」「えっ」吹雪は思わずリカルドを見た。リカルドは剣の柄を叩き、何らかの機構を発動させた。「目なら、脆いだろ」 52

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剣が煙を吐き出しながら蠢き、斧を形造る。「目…」吹雪はニ級の緑色の目を思い浮かべた。「確かに、潰せそうです」「よし、ならやるか。乗りな」リカルドは吹雪を見る。吹雪はその意図を察した。「イヤーッ！」吹雪は斧の先端部に飛び乗る！「イヤーッ！」同時に、リカルドが斧を振りかぶる！ 53

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一瞬で空中に飛び上った吹雪は、ベーシックカラテたるカワラ割りの姿勢を取る。ニ級は立ち上がろうとするが、遅い！「イヤーッ！」CRAAASH！「AGRRRH！？」カワラ割りの一撃が、正確にニ級の目に突き刺さる！ニ級は苦悶のあまり暴れようとした。だが、やはり遅い！吹雪は砲を撃つ！ 54