不知火に落ち度はない　37（不知火）

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「はい。お願いします」 「では経過は、都度連絡しますので」 「あい。助かるわ」 「じゃあ、お義姉ちゃんって呼んでくれません？」 「そのMP3レコーダー捨てたら考える」 俺だって呼びたいさ。義姉さんって。 興奮するじゃん、なんかさ。 #不知火に落ち度はない

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あ。しまった。 すっかり勢いに負けたけどさ。 俺、値引きできてねえ。 くっそ、妙高上手いな商売。 話をさらり逸らして、値引きをなかったことにしやがった。 「流石は大手企業のご令嬢つーことね」 座ってれば飯が出る、なんて世界じゃないんだよなあ、やっぱ。 #不知火に落ち度はない

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「で、兵頭っち。結婚すんの？」 「しませんけどね」 なお、さっきから聞き流してたのが北上さまである。 相変わらず他人の事情に興味ゼロだなお前さん。 「そっかー。社長になったら奢って貰おうと思ったけど」 「奢るだけなら今でもいけるぞ」 「ポルシェとか」 #不知火に落ち度はない

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北上さま、それ奢るっていいません。 ポルシェ欲しいのお前？ 「売ったら高そうじゃん、ポルシェ」 「そりゃ高いけどさ、ポルシェ」 売る気しかなかった。 流石北上さまだ。 「あ、そだ。御飯休憩してきたから、兵頭っち行ってきたら？」 あ、そんな時間か。 #不知火に落ち度はない

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「んじゃ、言ってくる。留守頼むわ」 「あいあい。スロ行くなら今日やめといたほうがいいよ」 「なんでさ？」 「駅前のが閉店したから」 あ、そりゃ設定閉まる。 北上情報ありがてえ。 「んじゃてきとーに」 「あい。なんかあったら連絡頂戴」 #不知火に落ち度はない

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そんなこんなで俺は、北上さまに後を任せて、食堂にでも向かうこととした。 今日のメニューが楽しみである。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

そうして食堂前。今日のイチオシメニューは卵チャーハン。 どうやら美味しい新鮮卵が手に入ったらしい。。 わりかし人気メニューなので、無くなって無いことを祈りつつ入ろうとし。 ふと足を止めた。 見覚えのあるピンクポニーを、食堂の外で見つけたからである。 #不知火に落ち度はない

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では、さっそく。 抜き足差し足で近づいて、とんとん、と肩を叩いてみる。 ほら、やるじゃん。指で振り返ったほっぺたつくアレである。 「司令ですか？」 「なんでわかんの」 「司令は、見落としが最近酷いのでは？」 指さす地面。 ああ、なるほど。 #不知火に落ち度はない

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「地面の水の反射色で判断したのな」 「はい。影だけが背後を判断する要素ではありませんので」 不知火の手には如雨露。 そして地面は水で濡れている。 こんだけの条件でわかるやつはフツーいねえけどな。 神通教室の教えがいいんだろう。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「それに司令の匂いと触り方は覚えてますので」 「お前どんどん野性に返ってねえ？ 大丈夫なの？」 「仰る通り、不知火は鈍って居ましたね。その程度の情報も嗅ぎ取れなくなるとは」 どんどん鍛えられてる不知火である。 そいや、太ももも太くなってんな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「で、お前何やってんの？」 「ご覧の通り、花に水やりです」 花に。 水やり。 「って、この食堂周り全部？」 「はい。全部」 え。何それ。 お前そんな趣味あったんだっけ？ #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

なお、食堂周囲の花壇はぐるーりと回り込んで結構な長さがある。 フツーにスプリンクラーとかホース使って蒔くレベルなのだが。 「不知火が希望して、やらせて貰ってます」 「そうなん？ 罰ゲームじゃなく？」 「はい、罰ゲームではありません」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

よかった。食堂からの罰ゲームではないらしい。 なお、如雨露は北上の持ってる砲サイズなので、それなりに大きい、というレベル。 しかし、これだけの長さを蒔くとなると何往復なのだろうか。 １０や２０じゃ効かないはずだ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「秘書艦任務の際は気づいてませんでしたが、わりと枯れることもあるようなのです」 「そうなんだ」 食堂の怠慢、ではない。 朝と夕方にしか蒔く時間ないからな、基本。 日差しの強い季節になると、枯れるやつも出てきてしまう。 「ですので不知火が力添えを」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「どの花が好きだ？」 「今咲いてる中ではパンジーですね」 指さすのは雑草避けにもなると言われてる、鮮やかな色合いの花である。 「どの辺が好き？」 「犬っぽいところです」 その感想はちょっと意外すぎである。 犬っぽいって。 不知火のセンスすげえ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「でももうすぐ、パンジーは終わりだな」 「その後は紫陽花、そして朝顔とヒマワリの季節があると思います」 うむ。残念ながら紫陽花は別んとこの鉢だし、朝顔とヒマワリは雪風の畑にあるんだがな。 あん？ 雪風の畑があるのかって？ 俺が作ったに決まってんだろ。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

腐葉土買ってきて、暇んときにサボって敷地の一角に雪風専用の畑あるんだぞ。 あいつがヒマワリの種食べたいし、朝顔植えたいつってたから。 おかげで夏は雪風の楽しそうな顔が見えるのである。 酒の抜けない響も時々手伝ってるしな。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「花の面倒見、楽しいか？」 「存外に。まだ始めたばかりでなんとも言えませんが、水をやると表情が変わる気がします」 「そんなもんなのかね。お前植物の面倒見たことは？」 「ありません。生物の面倒を見たのは司令ぐらいのものです」 まて、俺はペットか。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「んじゃ。ニンジンとか育ててみるか？」 「唐突ですね司令。どこを見てニンジンなのでしょうか」 そりゃお前のパジャマから連想しただけです。 かりかり囓る姿とかちょっと面白いじゃん。 「それに木をどこに植えるんですか？」 「──は？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

待て、待て待て。 待て待て待て。 今、木つったか？ 今、木つったよな？ マジか。ニンジンって木になるのか？ 不知火知識では木になるのか？ これは問題あるんじゃないっすか？ 「不知火。ニンジンは木にならんぞ？」 「不知火を試していますか？」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

いや、試してねっつの。 全然、試してねっつの。 「どの辺からその知識を得ているんだお前」 「ニンジンは、こうつらら状になっていますよね？」 「なってるけど」 「つまりそういうことです」 おい。つまりあれか。 球体が垂れるという考えなのですかこの子。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「待て、不知火。その新説は流石にちょっと人類としても新しすぎるぞ」 「しかし司令。大根もそのように生長するのでは」 しねえ。しねえよ。 「不知火は写真で見たことがあります」 「マジで？」 どんなバカ知識サイトだよそれ。 見せてみろ、苦情いれちゃる。 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「こちらです」 「……」 あ、はい。 そうね。 これは勘違いするわ。 木で大根乾してるのね。 「んなわきゃあるかー！！」 「司令、うるさいです」 #不知火に落ち度はない

不知火に落ち度はない @otinui_yamoto

「なお、裏付ける話として、こちらをご覧ください」 「……なるほど、こっちに至った訳か」 画像は苺。 まあ、苗だけどこんな風になるよねー。 脳内の北上さまがこっち見ないで言ってやがる。 #不知火に落ち度はない