【アイドル・アルマゲドン】#3

ニンジャヘッズの北沢志保bot @heads_shihobot

【アイドル・アルマゲドン】#3

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崩壊した街をルーントリガーが駆ける。その後を漂い追うのはセリカエルだ。「あの、ルーントリガー＝サン、一つお願いがあるんです」「何？」「出来れば人間は命だけは助けてあげて下さい。それが私達のルールなんです」「なら自分で守ることね。私の洗礼済み銃弾は人間にも有効だから」

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劇場の守りはガブリエル達に任せ、二人は襲撃者を迎え撃つべく討って出た。群がるフェイスレスを蹴散らしながら迎撃ポイントに辿り着いた。「私に邪悪なるアイドルをジゴクの釜に投げ込む力を与え給え…」ルーントリガーが銃を額に当て祈りを捧げる。それを聴いたセリカエルが声を掛ける。

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「あ、システムのこと知ってるんですね！」「え？システム？」顔を上げ眉を寄せるルーントリガー。「私達天魔界のアイドルは、地上では『門』を通してソウルを移した肉体の器を使わなければならないんです。だから肉体を失っても精神は元の世界に還るだけなんです。よく知ってましたね！」

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「…え」「でも門を通れるのは一往復だけで、それ以上はソウルが保たないんです。つまり千年に一度しか地上に降りられないんです」「え、浄化とか、そういうのは…」「地上に派遣された皆はこのイクサに勝ち、千年間世界を守る覚悟なんです！皆に会えないのはサビシイだけど、やりがいはあります！」

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熱弁するセリカエルの傍ら、ルーントリガーは茫然と肩を落とし彼方を見つめていた。その目が鋭い光を帯びる。急速接近するエンジンの唸り。「「イヤーッ！」」二人のアイドルは同時に側転回避！間を漆黒の塊が走り抜ける！長い炎の轍をコンクリートに刻み、大型モーターサイクルが急停止した。

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跨るはライダースーツめいたアイドル装束を纏った悪魔アイドル。マシンの上で手を合わせアイサツした。「ドーモ、ヘルライダーです」「ドーモ、ルーントリガーです」「セリカエルです」ヘルライダーは威嚇的にエンジンを唸らせルーントリガーを見た。「へえ、見ない顔だね。助っ人？」

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「私は贖罪のて」「イヤーッ！」「イヤーッ！」フロントにあしらわれた髑髏が迫る！轢殺せんと唸りを上げる車体をルーントリガーは側転回避！「ま、どうでもいいね！お前達！やっちまいな！」ヘルライダーの合図と共に数人の男達が姿を現した。天使は明確な悪意に鼻白んだ。「あれは貴女に任せるわ」

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ルーントリガーは銃を構えた。「ご武運を！」セリカエルはそう言って男達に向かった。「邪悪なアイドル滅すべし。慈悲はない」「ふん！アタシらの地上支配の礎になりな！」ヘルライダーがアクセルを噴かす。炎を吐きながらバイクが突撃！「イヤーッ！」BLAM！BLAM！ルーントリガーが射撃！

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銃弾が撃ち込まれる！だが！「イヤーッ！」ゴウランガ！ヘルライダーは前輪を持ち上げウィリー走行！弾丸は全て車体に阻まれ弾き返される！バイクは無傷！なんたる頑強さか！「ハッハァーッ！」そのままルーントリガーを強襲！車輪がジゴクのアギトめいて叩き付けられる！「イヤーッ！」

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ルーントリガーは側転回避！ヘルライダーは即座に向きを変え追撃！タツジン！この恐るべき火炎車輪に巻き込まれれば、如何なアイドルといえどネギトロめいた姿にされた後にこんがりと焼かれハンバーグ重点！側面から射撃するも巧みなテクニックで防がれてしまう！ナムサン！打つ手なしか！？

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「イヤーッ！」銃弾を弾いた車輪が叩き付けられる！「イヤーッ！」ルーントリガーは側転回避し廃ビルの柱の陰に逃げ込む。「逃がすかッ！」ヘルライダーが黄色サイリウム・ダートを投擲！刃が建物の暗闇に吸い込まれ、彼女は不穏な手応えを感じた。次の瞬間、闇の中から凄まじい勢いで何かが殺到した！

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KABOOOM！「イヤーッ！」騎手は車体を持ち上げガード！車輪が防ぐは夥しい数のベアリング弾！「チィーッ！」掠めた肩から出血！「どう？洗礼済みクレイモア地雷の味は」「イヤーッ！」ヘルライダーは声の聞こえたビルに相棒を走らせた。洗礼？そんなものに意味はない！狂人の戯言だ！

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ルーントリガーの長髪が踊る。獲物を発見した騎手は更に加速！「…うッ！？」車輪に掛かる僅かな違和感。一瞬で炎に焼き切られたそれは(((ワイヤー…？)))転倒用のトラップなら意味のないことだ。この地獄のマシンには効かない。KABOOM！KABOOM！両脇で爆発！

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「イヤーッ！」ヘルライダーは座席を蹴り跳躍！その真下を行き過ぎるマシンをベアリング弾が叩く！洗礼済みクレイモア地雷だ！「イヤーッ！」危機的状況をやり過ごし、ヘルライダーは再び回転着席！ワザマエ！ルーントリガーを追う！「イヤーッ！」ルーントリガーは肩越しに何物かを投擲！

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床を跳ねてヘルライダーに向かうは…「手榴弾！？」「洗礼済み手榴弾よ！」KABOOOM！爆裂破片がバイクを持ち上げ「イイイヤアアアアア！」ヘルライダーがハンドルを握り締め車体を押して爆風を潰す！ゴウランガ！？何たるアイドルセンスを活かした強引かつ繊細なテクニックか！？「ヌウーッ！」

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見失ったルーントリガーを探すと、彼女はビルの砕けた窓の傍に居た。怒りの叫びと共に炎を噴くバイクが走る！「そこを動くなァ！」「それは無理ね」ルーントリガーは手にしたリモコンのスイッチを入れた。……OM…OOM…BOOM…KABOOM！遠雷めいて炸裂音が響く！「…え？」

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KABOOM！ヘルライダーの傍の柱が吹き飛ぶ！地震めいてビルが震えた。「まさか…」遂に自重に耐え兼ねたビルが屈するように沈み出す！「イヤーッ！」ルーントリガーが床を蹴ると、彼女の体はふわりと窓の外に飛び上がった。腰に捕り付けた巻き上げ機構付きフックロープの力だ！崩壊ビルから脱出！

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「ちょ、まっ…」ヘルライダーの制止虚しく、次々と落下する瓦礫がその姿を覆い隠した。……フックロープを外したルーントリガーは倒壊したビルを観た。用意しておいたトラップの一つだ。この街のあちこちに仕掛けている。単純なカラテで倒せぬ敵には武器が必要なのだ。アイドルハンターの経験だ。

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ルーントリガーは踵を返しセリカエルの姿を求めた。人間相手なら万が一にも後れを取ることはないと思われるが、敵の増援が無いとも限らない。その時！KRAAASH！背後の瓦礫が弾け飛び漆黒のマシンが飛び出した！それは傷付きフロントの髑髏装飾は失われているが、未だ盛んに火を噴くバイク！

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「イヤーッ！」相棒同様に傷を負ったヘルライダー健在！「ンアーッ！？」不意を突かれたルーントリガーが轢き飛ばされる！地を転がり道の果てへ！息を吐く間も与えずヘルライダーの追撃！高々と唸るエンジン音を前に射手は立ち上がった。「…スゥーッ…！ハァーッ…！」神秘的呼吸法、フクシキ！

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ルーントリガーは走り出した。一直線に己へ迫り来るヘルライダーを目掛けて。(((アタシにチキンレースを挑もうって！？)))凄まじい勢いで両者の距離が縮まっていく中、ヘルライダーのニューロンが鉛めいて鈍化する。相棒と一体となった証だ。昂ぶった思考がクールになる。風も消えた静寂の世界。

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重低音が遠く響く。加速し続ける世界を飛び越え目の前の敵だけがフォーカスされる。真っ直ぐにスプリントするルーントリガーに。意思を問う様にその目を見た。見てしまった。(((コイツ、まさか本当に…！？)))そのまま激突すれば打ち勝つのは己に決まっている。だが本当に？何も起こらないと？

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先程までの射手の奇抜なイクサが想起される。このまま直撃して良いのか？果たして？ハンドルを握る手に厭な汗が滲む。ルーントリガーの目に何をしでかすか分からぬキタガミめいた狂気が揺らめく。「……ッ！」衝突の瞬間、ヘルライダーは半ば無意識にブレーキを掛けた。「イヤーッ！」

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「グワーッ！？」顔面にルーントリガーの飛び膝蹴りが突き刺さる！速度に速度が重なり、その威力は計り知れない！「グワーッ！」ヘルライダーがバイクから転がり落ちる！ルーントリガーは受け身を取り素早く起き上がる。相手の減速なくば、足を負傷しブザマに転がったのは己だったやも知れぬ。