「好きならよかった……って、あれか、昨日レユアンが着てた様なやつか?……両方かそうか。マジか。」 余計になんも言えなくなる。髪をかけるだけの仕草に、色香を感じて、小さく、息をのんだ。 「んじゃ、今夜楽しみにしておくよ」 笑みと一緒の言葉は内心をごまかすよう、少しだけ早口で。
2015-05-25 21:37:49爽やかなエッラの笑顔が眩しくて、合わせた灰銀を細めて微笑む。 「ありがとうございます…エッラ殿下。…あの、お二人も、御多幸を」 気遣ってくれていた事も、幸せを願って貰った事も、まるで兄が出来た様で嬉しく。 その隣で歓迎すると笑んだ紫紺の瞳にも、イゼルは子供じみた喜色を浮かべる。
2015-05-25 23:21:34ムロミの詩的な言い回しに感心させられたかと思えば、再び芝居掛かった言葉に翻弄されて。何となく悔しくて、舞台衣装の裾を引く。 「もし、運命なのでしたら…そんな風に取り計らって下さった神に、また揺れてしまうかもしれませんわ」 辿々しく悪戯を紡ぎながら、ぎゅうと黒い布を握ってみせる。
2015-05-25 23:23:01疲れ果てた様なジェラールの様子にはそっとしておこうと思いつつ、しかしその絢爛な装いには興味を惹かれ。 「…でも、とても、美しい着物でございます」 少し微笑んで、何か飲む物を持って来ましょうか?と問う。 初日に彼から受けた感覚は、もう綺麗に無くなっていた。
2015-05-25 23:23:14ケヴィの名前を聴き、昨夜の事を思い出す。間接的にとはいえ、彼は自分の所為で倒れたのではなかったか。 「御無事だと、良いのでございますが…」 姿を見せない理由を二日酔いだと勘違いしたまま水差しを片手に入口を窺うが、果たして。 直後、銀月の衣装を断ったフリダには僅かに首を傾げる。
2015-05-25 23:23:36レユアンの小さな笑いに応え、「ありがとうございます」と一礼。捧げるのは謝罪ではなく、感謝だ。 「……水色、なら…わたくしは、氷の…」 そこで言い掛けた自分の言葉に――急に、今までに無い恥ずかしさが込み上げて。 「…あの、いえ、…その…っ」 その先は、続けられる訳が無かった。
2015-05-25 23:24:44「なんだか素敵ね、絵物語みたいなものなのかしら?」教えてもらった劇の話に胸を躍らせている。「私は幸せになれるお話が好きだわ、悲しいお話はなんだか寂しいもの。」自分の胸を撫でるようにしてそう話した。「なんだかとりさんは今日すごいのね、とりさんなのに鳥よけみたい。」
2015-05-25 23:57:34「つよそうとかかっこいいとか、なんかちょっと信じられない言葉が聞こえた気がする……オレいま躓いて転んだら一人で起きられないよ」 椅子の背に凭れてふふんと胸を張る。どうだ、よわいだろうかっこわるいだろう。 「それね。目立つのも王族の仕事なんだとかって。ここを見てると疑わしいけど」
2015-05-26 00:40:43この状態はどう見ても、見るという感覚に慣れてなくてもわかるくらい、明らかにオレだけおかしい。ここまで飾る必要がどこに。じゃらじゃら。重いから項垂れさえしづらい。 「綺麗なのはそうなんだけどさ。飲み物――は、今はいいや。ありがと、イゼル。腕にすると重くて」 それが嫌で翼のまま来た。
2015-05-26 00:40:46似た柔らかさと聞こえれば、思いもよらない言葉で虚を突かれた。ぱちぱちと数度まばたいて、 「にたやわらかさ……?」 どういうことだろうとレユアンを見上げる。似ているだろうか。オレはこんなにかわいくないしきれいでもないしいいにおいもしない。やわらかいけど、羽毛のふかふかとは違うやつ。
2015-05-26 00:40:50「にてる……?」 じぃーっと穴が空くほど見上げて見つめながら、他方、エッラの話にも思考を巡らせる。 「んー、服の話は、オレあんまりよくわかんないけど、きのう、同じ色だったのは、嬉しかったな」 思い出すと頬が緩んでにやけてしまうのは、ちょっとだらしないけど仕方ないと思う。
2015-05-26 00:40:54今は翼の内にいるわけでもないのに、なんだか胸のあたりが暖かいような気がする。 「この色もきれい。レユアンの目の色と同じだもん」 白く抜かれた模様も、髪の色に似ている。
2015-05-26 00:40:57「私が着ているような、で分かるだろうか」 ミューシャに向けて、そう告げながら、軽く回って見せる。 「胸元や背は空いている方が良いだろうか? ああ、ぴったりしているように見えて、意外とゆとりはあるから、締め付けられるような事は無いと思う」 問い掛けに、そう答えを投げる。
2015-05-26 03:18:24ムロミとエッラのやりとりには目を細めて、どことなく嬉しげに頷きを返し。 「ムロミ殿は決まりだな。──ふふ、今宵が楽しみだな、エッラ殿」 からかい混じりにそんなことをこぼしてから、次いでフレーゲルの方へ身体を向け。イゼルの言葉に幾度かまばたきを繰り返したのち、柔らかい笑みを浮かべ。
2015-05-26 03:18:26「貴方のお望みの色が確か、一着だけある。あれは元より、下にスカートを履くタイプのものだし、きっとイゼル殿にお似合いだと思うよ」 ひそひそと、耳打ちをするような小声で。驚かせてしまえ、と言葉に裏を含ませるような響きは、果たして水妖の姫に伝わるかどうか。
2015-05-26 03:18:29「──大きくなったその時には、また新しい物を送らせて貰うよ」 イゼルからそっと離れた後、フリダの方を見れば、やわく笑い。 「汚れたら洗えばいいさ。──それに、ケヴィ殿を驚かせてやりたい……とは、思わないかい?」 きらきらとした眼差しは、まるでいたずらっ子のようなそれ。
2015-05-26 03:18:31フリダからの返事を待ちながら、周囲の会話に耳を傾け、ジェラールの言葉には、嬉しそうにはにかんで。 「ありがとう。此れは、私の一張羅なんだ。何時も気合を入れる時に着て行く」 ほつれもなく、よれてもいない。まるで新品同様と違わぬそれは、余程大事にされているのだろう、というのが窺えた。
2015-05-26 03:18:32「ええ、ええ、二人でゆっくり話し合って決めて下さいな。別に好きなだけ言って貰っても構いませんし」 目を合わせ合うムロミとエッラに尻尾をゆるりと振る。 「ああ、そうですね。動く絵物語みたいなものです。じゃあ幸せそうなものも探しておきます」 花の姫には楽しみにして下さい、と告げた。
2015-05-26 11:33:53「二人とも一日目は、こう、角があったんですけど」 不思議そうな王梟へとそう言いながら指で空中に四角を描く。 「今は二人ともまぁるくなってますよ」 指の動きを円を描くように変えて微笑む。 「外から見た感想ですが。まぁ夫婦は似ていくものとも言いますから。それの最初なのかもしれません」
2015-05-26 11:34:17慌てる様子の濃紺にころころと笑い声と共に鈴が音をたてた。 「では、今日は俺は自分の部屋でお待ちしています。着替えたら見せに来て下さいませ」 それからレユアンへと向き直る。 彼女達の内緒話は聞こえてはいない。 「イゼルさんをとびっきり着飾らせてくれるのを、楽しみにしていますね」
2015-05-26 11:35:27夕暮近い部屋の中。もうすぐ終わりの時間。 全員へと芝居がかった動作で、ゆっくりと一礼する。 「それでは三日間、楽しくも有意義な時間をありがとうございました」 良く通るテノール。響く鈴。 「皆さま、近いうちにどうかまたお会いしましょう」
2015-05-26 11:36:09「ああ、暗いと思ったら、着替えてるだけでほとんど半日潰れちゃったんじゃないか。やっぱりこの格好はおかしいって言っとこう……」 装飾をじゃらじゃらと鳴らしながら、よろよろと椅子から立ち上がる。本当の真っ暗になってからじゃあ、部屋まで歩けるか不安だ。 「じゃあオレ、軽くなってくるね」
2015-05-26 11:48:55「えへへ。ふうふ……おおっと」 嬉しげに笑み綻べばぐらりと傾ぎかけて、あわてて立ち直り一息。 「なんでこんなに嬉しいのかな」 そわりと翼を動かして、一度振り返る。 「今夜も、待っててね、レユアン。これ着るのは大変だけど、脱ぐのはすぐだから」 「じゃあね、みんな、おしあわせに」
2015-05-26 11:48:59「恐れ入ります」 ジェラールがグラスを持てない事を了承し、水差しを戻す。ちらりと窺った彼の目は、やはりもう寂しい瑠璃ではない。 それに安堵した矢先、レユアンの耳打ちに意図を汲み取られたのだと知る。 「……恐れ、入ります…」 同じ言葉を二度、全く異なる調子で繰り返す。
2015-05-26 11:56:44フレーゲルに振り返り、頬を紅潮させながらも幼く笑って。 「レユアン様、それでは、よろしくお願いしますわ」 楽しみにしていてくれるのなら嬉しいと、年齢にそぐわないほど子供じみた気持ちを込めて。
2015-05-26 11:58:16